メカナイズド・ハート 146話
「本日の昼食は、他の訓練生たちと一緒に食堂で食べられては?」
執務を危なげなくこなしていると、副官のミリアム少尉がやってきてそんなことを言う。
一瞬何を言うのかとあっけにとられながらも、そんな時間はないだろうと返す。
「時間ならありますよ、そのためにいくつかお電話のスケジュールを調整しておきました。」
「まてまて、それは向こうにも迷惑がかかるだろ。」
「いえ、向こうも送らせたかったようなのでこちらで調整しました。」
どうやらミリアム少尉は随分とお膳立てしてくれたらしい。
ここまでしてもらって断る方がまずいだろう。
「わかった。ただ、他の訓練生たちよりも少し早く食べても良いか?ただでさえ混んでいる時間に邪魔をしたくはないんだよ。」
「コックたちが文句を言わなければ問題がないかと。」
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コックたちは文句を言わなかった。
ルーカスはあたりをきょろきょろと見回しながら、もぐもぐと無心で食べ始める。
トレーの中に入っていた食べ物が7割ほど胃の中に納まってから、初めて自分が訓練生たちの到着を待ち一緒に食事をとるべきだったということに気が付く。
しかし、今更食べていた物をトレーに戻すことはできないので、残りの3割の食べ物をゆっくりと食べる。普段費やす時間の3倍近くを一つのグリーンピースに費やしていると、次第に自分の食べ物が人間の食べ物というよりも豚の食べ物に見えてくる。
ボーっとプラスチックトレーを見ていると、ふわふわとエミーの顔が見えてくる。はやくこんな下らない任務を終わらせて、エミーと一緒に平和でおだやかなコロニーでアパートを一室かりてノンビリと暮らしたいなと夢想する。
バシンっ
絶対にかなうことがないであろう穏やかな夢の世界を思い描きながら、体中の力を抜いているところにいきなり背後から強い衝撃を受けてむせ返る。
なかば涙目にながら後ろを向くと犯人はおらず、訓練生たちが長蛇の列を作りトレーの上に食べ物を乗せてもらっているだけだ。しかし、背中を強くたたかれた感覚だけは本物だ。
わざわざ自分の部隊長にあたるのは、日ごろの訓練でいらだちが溜まっているからだろうか?
たしかにこの基地にはまともな娯楽施設がなく外出は許されず、厳しい試験と軍隊以上の過酷な体罰、そして自発的に訓練生がみずから脱隊することも許さないシステムが機能している。
おまけに歩兵部隊と異なり身近なところに武器がないゆえに、小隊長は小隊員に、中隊長は小隊長に、大隊長は中隊長にと遠慮なく強く当たっている。
「よくあることだな。」
ルーカスも自らがスペイン王国軍で訓練生をやっていた時に経験したことだと納得し、テーブルの上に残された人の食べ物とは思えない食事に腹立ちながらも食事を終わらせ、訓練生たちと一緒に一言も言葉を交わすことなくコックに礼だけして食堂を後にした。




