メカナイズド・ハート 137話
ルーカスの初講義が終わった。
ルーカスにとって感触は上々、良い仕事ができただろうと自認している。しかし、訓練生の考えは違っていた。
数日もしないうちにルーカスは、恐れられるようになった。訓練生達の服装は貴族の舞踏会にでも行くかのような、小綺麗でしわ一つシミ一つないほど清潔に保たれている。
ルーカスが通路を歩くたびに訓練生達はルーカスの行く先を避けるように移動して、もしバッタリ会ってしまうとトイレの中であったとしても式典でしか見れないような綺麗な敬礼を披露してくれる。
「一体全体みんなどうしたんだ?」
そんな中でもルーカスは1人置いてけぼりだった。
「どうやら訓練生達から恐れられているようですよ?何かしましたか?」
「いや、授業を一つ教えてみただけだが?」
問いかけた相手である副官のミリアム少尉に、心当たりがあるものがないのかとジト目で聞かれる。しかし、ルーカスには一切心当たりがない。
「ああ、どうせ怖がらせたのでは?ずっと思ってましたけど隊長の笑顔怖いですよ、目が笑ってなくて。」
「え・・・。」
「本当ですよ?スウェーデンで初めて会った時から危なげな雰囲気はありましたけどね、最近磨きがかかっているように見えます。」
ルーカスは、副官に怖いと言われる。
しかしルーカスにとっては寝耳に水の新情報であった。慌てて自分の顔をペタペタと触り、自分の顔がおかしくなっていないか再確認する。
「おいおいおいおい、そんなの知らなかったぞ?」
「毎日鏡で自分の顔確認されてますか?」
「いや。」
「では、毎日鏡で顔を確認されることをオススメしますよ。たまにすごく怖く見える時もありますよ、まるで死人です。」
普段穏やかで、落ち着いていて丁寧な文学少年(実際は少年ですらなく少女)にしか見えない副官は、今回はまるで父親の醜態を責める年頃の娘のような態度だ。
その彼女が言う言葉に、今までピンと来ていなかったルーカスも気がつく。
「ああそうか、確かに死人だもんな。でも少し怖がるくらいが良いんじゃないかな、ただでさえ粗末な訓練で放り出すんだから敵を舐めるくらいなら怯えていた方が良さそう。」
「まあ確かに・・・、ロクな訓練抜きで放り出されるわけですしほぼ確実に死ぬでしょうね。」
「間違いないな。」
ルーカスもミリアム少尉も軍人としての経歴は相当短い。しかし相当な量のしごきと訓練、そして実戦を通してデスクワークの中にあっても冷酷さが残されている。
「半年程度も隊にいたことないのに、古参兵ごっこかい?」
「うるさいですね!!自分だって1年ない程度はないですか!!」
同時に、自らよりも歴の短いミリアム少尉を揶揄うような茶目っ気も残されている。
そういえば目の前にいるミリアム少尉も訓練期間は相当短かったはずだ。にも関わらず、ルーカスの部下としてはかなり上位に入る能力を示して副官についている。
ひょっとして天才なのではないだろうか?ルーカスはそう思った。
明日は少し早めに投稿されると思います。




