メカナイズド・ハート 135話
本日はやや早めの投稿になります。
亀の甲羅のようなくすんだ緑色の屋根を被り、横に平べったく伸びた1階建ての建物。その角の部屋に数十人が集まり机と椅子を構えて黙々とペンを走らせている。
彼らの先には軍服を着崩し東欧伝統の白チョークで指先を汚しながら、片手に中型電子端末を持っている青年がいる。目鼻立ちがくっきりとした整った顔立ちの青年は軍人らしいガッチリとした体をリラックスさせながらゆったりと話している。
「ええ〜、であるからしてポッドの不意遭遇戦においては高度優位が勝利のためには必要不可欠であり旋回などでエネルギーを失いやすい速度優位よりも優先して確保するべきものです。」
穏やかであるだけでなく確固たる話し振りは、よく聞いてみればただの教本の丸読みでしかないことは明らかである。その姿はまさしく、東欧の片田舎でいまだ残る白亜紀から続く伝統的な「欠落した教育インフラ」とも呼ばれる教育現場だ。
教本を読み上げる青年、ルーカスはとうとうと読み上げている途中で顔をわずかに上げて訓練生の様子を確認しようとすると、訓練生の一人が手を挙げているのが見える。
よく見てみればその恰幅からマチェイ訓練生であることがわかる。
無視して話を続けようかとも思ったが、周囲の訓練生も訓練隊長という権威に対するチャレンジャーを興味深げに見ている。とても無視できそうではない。
諦めて訓練生に声をかける。
「なんだい?」
「できれば教本の内容ではなく、実戦経験を教えていただけないでしょうか?」
「教本のなかみは重要だぞ?実戦で何度もう一度読み直したいと思ったことか。」
「教本は我々も何度も読んでおります、訓練隊長殿に直接教えていただける時間は限られていますので他教官が教えられないようなことを教えてほしいのです。」
目の前のマチェイ訓練生は勇敢にも訓練隊長に授業の内容を変えてほしいと言う。本来であれば即刻訓練場から放り出されるか、金属バットで殴られまくるのを覚悟しなければならなかっただろう。
しかし、ルーカスにはそんな暇などはないのでそのようなことはしない。また目の前の訓練生の言うことがまともに聞こえるため、むしろ教本をたたんでそばに置くことにした。
「マチェイ訓練生は席に座れ。それとみんなもっと全体的によってこい。」
その言葉を聞くと訓練生たちは嬉々として教本を片付け始め、喜び勇んで机とイスを前へと持ってくる。だれもが今までにない展開に顔を喜ばせると同時に、今から始まる話を決して聞き漏らさまいとメモ用紙の用意も始める。
その様子を見て、訓練生たちのやる気を感じ少し感動しながらも喉の調子を変えながら話をし始める。
新年度が始まってまだ数週間ですが、すでにゴールデンウィークが恋しいです。
追記、教皇フランシスコがなくなったことを先ほど知りました。
教皇猊下のご冥福をお祈りいたします。




