メカナイズド・ハート 123話
ねむねむにゃんこ(n回目)
五月が近づいてきました。精神病にお気をつけください。
「ルーカス、うるさいから騒がないで。それ以上騒いだらこのまま殺すよ。」
ベルは指を口元に当てて、シーッと指で黙るように合図する。
そう頭上から言われてしまえば、どうしようもない。
口を閉じて彼女の次の言葉を待つ。その様子を見てベルもルーカスを話が通じる落ち着いた状態だと判断したのか口に噛ませていたボロ雑巾を外す。
「君は命令違反を犯した、それだけじゃなく上官に対する反抗ともとられない行動、交戦規定を超えた独自行動、市民への二次被害を考慮しない行動も起こしている。どれも重罪だよ。」
「でも、それは全て軍とうちの会社がやってきたことじゃないか。」
「そうだよ。でも別に軍も会社も君を人道や人権、戦争条約ジェノサイド禁止条約の違反で罪に問いたいわけではないんだよ。単に軍と会社の言うことを素直に聞かずに文句ばかり言い続けるのがいけないの。」
ベルは低学年の子供たちに諭すように教える教師のような声色と態度、落ち着きを保った言い方でゆっくりと、しかし変えられない事実としてルーカスに罪状を伝える。
「だとしたら俺は、軍法会議にかけられるべきだろう?以前レストランで暴徒を撃った時にかけられたような。なのになんで俺はこんなところに放り込まれているんだ?」
「あれは政治的な必要性があってやったことだよ。今回は政治的な必要性がないからもう罪が決まってる。そして刑も決まってる。」
「なんだよ、死刑か?」
ルーカスは彼女の口ぶりから刑を想像しながらも、皮肉気な微笑みと落ち着きを持ち続ける。
「ああ、死刑だよ。」
「そうか・・・。」
ルーカスはその言葉を聞いて、力なく微笑む。
唯一の血縁で生まれた時から一緒だった妹すらも徴兵されて独りぼっちで残されたルーカスが、怪しい傭兵会社にはったのも、死にたかったからだ。しかし、自分を殺すだけの勇気もなく可愛い勧誘兼同期のエミーと高給につられて入った。
ずっと強い意志もなく、思想もなく、理想を貫くことも、現実を受け入れ冷酷になることもできない軟弱な男としては高級な死に方かと自分を一歩引いて他者の視点から見たルーカスは思う。
自らが出した自分自身に対する正確でありながら、悲しい評価に泣きそうになりながらも落ち着きを絶やすことなくベルに自らがどのような方法で死刑にされるのか聞く。
できれば一番楽な方法で殺してほしい、自らを殺す覚悟も勇気もないのに苦痛が多い死刑方法だと、下を漏らし涙を洪水のように流してしまうだろう。そのような見苦しい方法では死にたくないとルーカスは思う。
「おれは何で死刑にされるんだ?できれば銃殺刑にされたいんだが。」
「残念だけど、ポーランドでの上官への反逆罪はピアノ線による絞首刑だよ。」
「ピアノ線での絞首刑か、気分が良くなりそうだね。」
ルーカスはピアノ線による絞首刑を見たことがある。テレビで王室に対する反逆で絞首刑にされた高級軍人の映像が公開されていたのだ。
通常の絞首刑で使用される縄とは異なり金属のように固く細いピアノ線は絞首刑にされる対象者の自重により首の皮膚を食い破りながら、わずかな空気の隙間もなく容赦のない窒息死へと追い込む。
苦しみなら死を迎える方法でありルーカスは一番避けたかった方法の一つだ。
ピアノ線による絞首刑の元ネタはナチ党武装親衛隊で行われていたのもが元ネタです。
実際には死ぬ前にピアノ線が切れそうだけどどうだろ。




