メカナイズド・ハート 120話
いつもどうりの鬱回です。(この小説のほとんどが鬱回定期)
「違います、見ていただきたいものがあって来ました。」
そうルーカスが言うと、目の前の老師団長は少しおどろいたような様子で眉毛を持ち上げながらも一歩足を踏み出してルーカスに質問し返す。
「何かね?」
「あれです。」
ルーカスはコックピットハッチを開けて上半身をさらけ出しながら、指で燃え上がる炎の影がチロチロと見え粉塵と黒い煙がモクモクと上がる市街地を指す。いまだカオスがあふれる市街地は現地警察車両、救急車や消防車のサイレンで明るく彩られる。
「あの明かりと煙、炎の下で人々は死んでいます。1人2人ではなく、数千人数万人単位で死んでいます。これだけの大量殺戮をしてもゲリラたちが活動を停めるとは思えません。むしろ反発させるだけなのではないかと思います。」
ルーカスは、以前から自国や他国がメディアでさんざん喧伝してきた軍事作戦に対するうすぼんやりとした疑問の感情を持って来た。ナショナリズムや義務感、責任感、恐怖、周囲の目、体罰によって抑え込まれていた疑問が口からあふれる。
「中尉、君に任されているのは君のポッド中隊を率いることであって私に意見をすることではない。君はすでにピアノ線での絞首刑もののことをしているのだよ?」
「わかっております。その上で、士官として犠牲が無駄にならないためにもより穏やかなアプローチでのゲリラ制圧作戦を行ってほしいのです。」
ルーカスの言葉に対して目の前の老師団長は目元を細める。
彼の目元には目の前の若者に対する、いぶかしげな感情しか込められてはいない。老師団長はルーカスに対して冷たい言葉を投げかける。
「将校として・・・、か。私の目には君の臆病で繊細な女々しい精神が戦闘の中で崩壊して、助けを求め弱音を吐いているようにしかみえん。」
「そのようなことはございません、私は士官として自らの隊がやったことが本当に意味のあることにつながるのか知りたいのです。そうなって欲しいのです。」
その言葉を聞いて一瞬老師団長の動きが止まり、その後壊れた機械が再びゆっくりと動き出すかのような不自然さを見せながらも手指をわずかに動かす。その様子を見て、自らが必死に訴える言葉が少しでも老師団長の琴線に触れ考えを改めてもらえたのかと甘い期待を向けながらもルーカスは、まっすぐな目を老師団長へと向けながらも、畳みかける。
しかし、その期待はすぐに裏切られたことをルーカスは理解する。
「私の隊は、赤子を母親ごと吹き飛ばしました。」
「よくあることだな。」
「私の隊は、おびえる老夫婦を車ごと踏みつぶしました。」
「弾を使わずに済んで楽だな。」
「私の隊は、子供たちが生きたまま炎で焼き殺しました。」
「彼らの声は心地よかったか?」
ルーカスは必死に目の前の老師団長にの感情に語り掛けるも、一切うまくいかない。最後には自らが悩み続けて突き動かされてきた感情と思考の支えが目の前の老人の一突きによって突き倒されるように感じる。そして何もしゃべれなくなり押し黙る。
「・・・・。」
「なんだ、君の武勇伝はそこで終わりかね?」
ルーカスは、病院で警官と揉めた時にも感じた感覚を再び感じる。
もうちょっとだけ対ゲリラ戦は続くんじゃ。




