メカナイズド・ハート 110話
本日は文字数多めとなっております。
傷だらけのメトロから飛び出し、駅構内へと足元に気を付けながら脱出すると途端にガス臭さを感じるようになる。血なまぐさい匂いを拾わないように自動的に脳がシャットダウンしていたのだろう。
どこからこのガス漏れは発生しているのだろうか?
どこから洩れてるにしても、この場に居座るのは危険だろう。
ルーカスはベルに視線を一瞬だけ送ると、素早く彼女はうなずきながらルーカスと共に来た道を素早く駆け出す。幸いにも目が暗闇に慣れ始め、足元の安全も確認しやすくなった。
タタタタタタタッ
二人の階段を駆け上がる音だけが、薄暗く圧迫感の強い構内に響き渡り他には一切の音が聞こえなくなってくる。数百人以上が利用していたであろう構内はもはやネズミ一匹おらず、ルーカスは自らが悪夢の中でエミーと一緒に閉じこまれているのではないかと勘繰ってしまうほど異質な空間となっている。
しかし、その悲惨な光景は悪夢ではなくすべて現実のものだった。
メトロ構内から地上へとつながる数ある出口の一つから這う這うの体で、傷だらけの体のまま出てきた二人は地上入り口付近でわずかな数の警察と消防に出会う。警官と消防員ごとに制服と装備がやや異なり、それぞれが緊迫した様子で相談している。
「あ!!生存者の方ですか!?」
「ああ、一体何がどうなってるんだ!?」
警官の一人が息を上げながら命からがら逃げだしてきたルーカスとエミーに対して近寄り、無事か否か確認する。その質問に自分は無事だと答えながらも、何が起こったのかと状況を把握しようと質問を返すが、警官や消防たちも首を振る。
「それが我々にも全く分からなくて・・・、ただ同時多発的に各地区で爆発が起きていることは確実かと・・・。」
「なるほど、それでなんでお前たちは下に行って助けに行かないんだ!?」
ルーカスの羽織っていたジャケットがポーランド軍の士官用ジャケットであることに気が付き途端に口調を変える警官の一人に思わず問い詰めてしまう。
「それが、われわれには十分な装備がありません。それにガス漏れの危険もあります。現に他の爆破テロを受けたメトロではガス漏れから引火して二次災害が起きてます。」
「わかった、確かに下ではガスの匂いがした、ここは任せる。とりあえずツレを病院に送りたいんだが、緊急車両で回せるものはあるか?」
思ったよりもひっ迫した状況を警官や消防官の口から聞き、自分には何もできないと理解してこの場をその道のプロである彼らに任せることにした。その上でダメもとでエミーを病院に安全に回すために送れる緊急車両がないかと質問する。
「ないです。あったら彼らのためにもう回してますよ。」
警官のうちの1人が、すみに寄りかかるようにして体をグッタリと伸ばす民間人数人を指差す。その民間人たちは老若男女問わず破片や打撲などで怪我をした者の他、部位の欠損が見られるものもいて救急隊員数人がボロ切れやペットボトルの水、新聞紙などで応急の手当てをしている。
彼らの傷の程度を見て納得したルーカスは頷いた上で、直接病院へと向かうことにする。
「あの路駐された車を使ってください。」
「勝手に民間人の車を使ったら逮捕されるのでは?」
「どうせポーランド軍人は罪になりませんよ。」
そう言いながら警官の1人がエミーとルーカスを近くの赤色の軽トラックの近くまで案内し、革ベルトを拳に巻き一撃で窓ガラスを割って車の電源を入れる。
「さあ行ってください。荷台に負傷者乗せるんで頼みます。」
警官と消防員、救急隊員たちがルーカスとエミーを2席に押し込み、荷台に負傷者十数人を山盛りにして送り出す。
眠いって。




