メカナイズド・ハート 111話
キレの悪いところでこの回は途切れます(予告)
ルーカスとエミーは疲れ切った体に鞭を打ちながら、必死に車のハンドルを握りコーナーを責めながら壊滅状態に近い市街地を疾走する。
「あぶねえ!!早くどけやオラぁ!!」
幅広の道路は、数十台の路上駐車された車両たちと人々がパニックになり逃げるために出した車があたりを占拠し、車と車の隙間を人が我先にと逃げ出していく。そんななかで背後にいる車から追突されたルーカスは怒りで激怒しながらも、前が素早くあくことを願うことしかできない。
「くっそ、どうする?歩いたほうが早いか?」
「いや、私以外にも後ろに負傷者乗せてるから一人でも連れて行った方が良いよ。」
ルーカスの中で持ち上がってきた、エミーだけでも助けられれば良いのではという考えはエミー本人が否定する。思わず顔を向けて目を見て聞き返したくなるが、エミーの表情を見てその意図を察して正面を向きなおる。
そこから数十分かけてかろうじて最も近い病院へと五体満足でたどりつくことに成功したルーカスとエミーは、近くで押し寄せてパンク状態になった人間の渦の整理をしていた警官や救急隊員に話しかけられる。彼らは病院の周りを鉄製のフェンスと警察車両で囲い簡易的なバリケードを築き負傷者であふれかえる群衆を病院から遠ざけている。
「ポーランド軍の方ですか?負傷してますね!?」
「ああ、負傷してるそれがどうした!?それよりも後ろの山積みの負傷者を連れていくのを助けてくれ!!」
ルーカスは、目の前の警官がルーカスとエミーが傷つき疲れ切った体を使って負傷者を持ち上げて病院内に連れて行こうとしているのにも関わらず、ボケっと突っ立っていることに怒りをにじませながらも手伝うように言う。
「それはできません!!この病院は軍、占領地政府および公共機関以外の人員は使用が許可されていません!!」
「なんだと!?ふざけやがってこの負傷者の数だぞ!?それにそんな命令は聞いていない!!」
ルーカスは、目の前で負傷差が大勢いるにもかかわらず受け入れることが命令で許可されていないという警官に対して怒る。しかし、目の前の警官はかたくなに受け入れることも、負傷者たちに肩を貸してやることもないと拒否する。
「お前はドイツ人だろう?同じ民族の人間を見捨てるつもりか!?」
「彼らは俺の人間ではない!!全て薄汚い背教者たちだ!!全て平等に価値のない奴らだ、そしてこれは報いだ!!」
『薄汚い背教者』その言葉の意味をルーカスは理解している。カトリック、プロテスタント各派が相互に非難を繰り返すときに使う言葉だ。ルーカスが物心がついた時から常に誰かが繰り返し使ってきた言葉であり、宣戦布告の理由として使われたこともある。
「そうか・・・、家でも焼かれたか?」
「?」
「そうまでして嫌う理由だよ。」
「奴らを嫌うのに理由は不要だ!!あの薄汚い連中と一緒にされるのは不快でしかない!!」
ルーカスは何とか相手をなだめる方法を見つけて負傷者たちを病院に押しこもうとする。しかし、目の前にいる警官は肩からベルトで下げた短機関銃を片手に、いかにプロテスタント勢力が邪悪で存在価値がなく気色の悪い存在であるかと力説する。
その言葉一つがどこかの極右民族主義者、あるいは極端な宗教活動家の言葉だろうと考えると民族と宗教の間に眠る対立関係の根深さにルーカスは頭を抱えたくなる。特に損失を受けたことがなくてもなんとなくの理由で他者を嫌う。
「なら負傷者をどうしようっていうんだ?」
「訳の分からない背教者などは、そこら辺の排水溝にでも放り込んでおけばいいんですよ。彼らは生かしてもらえていた分だけでも我々に感謝するべきだ。」
目の前の警官はそうだろう?とばかりに両腕を広げ、自らが人類史に残る最高の発明をしたかのような誇らしげな顔つきと口調で誰かの受け売りのDNAタイプがどうのこうの、プロテスタント勢力は赤子を犯して食べるだの訳の分からないことをしゃべり続ける。
ねむねむ胸太郎。




