メカナイズド・ハート 106話
ふんふふっふフーン(音符)
ルーカスとエミーは久しぶりに半日休暇を申請し、部隊が駐屯、展開してくれる基地付近のした。人類が地球外にその居住域を進出してからは居住惑星によって1日24時間とは限らなくなったが、利便性のため一切日光の入らないコロニーから土星のリングの中であっても常に条約で1日24時間制を採用している。そのため半日休暇といえば12時間の休暇であるように普通は感じるだろう。
だが、実際には世のほかの企業と同様になぜか6時間程度しか与えられない。
しかし、普段から命の奪い合いをしているルーカスとエミーからすれば給料をもらえながらノンビリ休めるのは非常に快適だ。
当然機嫌もよくなり、二人とも鼻歌を歌ってしまうほどだ。
「とりあえずあそこの薬局行きたいんだけど、良い?」
「おれも必要なのあったし、行こう行こう。」
そう話しながら、ドイツ人の建設スタイルらしく歩道が車道よりも一段高く作られ、レンガが敷き詰められたお洒落な道路を歩きネオン看板の輝く薬局に入る。
入ってみると店内は緑色の少し怪しい色の中で、入り口側から見て縦方向に何列も戸棚が並び商品が陳列されている。奥には会計用のカウンターがある。
その店の構造からやろうと思えば薬をポケットに忍び込ませるか手に持って走って逃げれるだろう。しかし、このような店の構造でも操業が続いているということはこの地域の治安の良さを表しているに違いない。
戸棚を一つ一つ見てみると戦時下にしては品ぞろえが良いことに驚く。保証期間切れの薬は一つもなく、おまけに全ての薬が国際保健機関や第三者機関、政府機関による認証を受けている。
「奥のものに用があるから奥行ってくるね。」
「おっけー、俺買い物終わったら店前で待ってるから。」
ルーカスは店にわずかに驚きながらも、店のおくに向けてずんずん進んでいくエミーの背中に声をかけると、ルーカスは自らの探し求めていた薬を見つけ出す。
人類がもっとも多く使用した薬、向精神薬だ。
「あった、あった、良かった。」
高度に発達した製薬技術、流通施設をもってしてもひと箱10ドルから20ドルはする市販医薬品も、向精神薬だけは20錠1箱が1ドル程度しかかからない。
それもそのはず。
西暦7234年に国際保健機関がとった130国を対象とした調査では、全年齢性別人種問わず精神の問題を抱える人の数は人口の80%を超えることがわかっている。当然精神病ビジネスは巨大であり、ルーカスのような経度の精神病持ち向けの薬は二束三文で買えてしまう。
「ベルと違って安く済んで助かる。薬代も一年で1000ドルほどで済むし。」
そうぶつぶつと気楽につぶやきつつ、数箱まとめて抱き込みレジへと持っていく。レジには20歳になったばかりくらいの、ルーカスとほとんど同年代にも見える若い女性店員が見える。女性というよりも女の子と呼ばれていても不思議ではない程度に若く見える。
「12ドルです。」
店員が流暢な英語で値段を伝えてくれる。それに合わせて財布を開き、現金で渡そうとすると背後からズドンと爆発音が響いてくる。
さんざん聞いた音であり、音量と衝撃波の程度から危険なものではないとわかる。
「うるせえな、あいつら何事だ?」
「たぶん、ポーランド人が配置した治安部隊に対する過激派プロテスタントによる攻撃ですね。」
いらいらしながらもドル札を指で数えていると、目の前の店員が親切にも答えてくれる。




