メカナイズド。ハート 103話
真夜中投稿こんにちは。
ルーカスが120mm砲の照準器にベル機をとらえた瞬間、ベル機は機敏にロール回避をしてくる。ベル機の【アースフィション】は、ルーカスの機体の倍近いロール性能によりロールを主体にしながら逆噴射と旋回を組み合わせて120mm砲の照準から数秒以上逃れ続ける。
「まずっ。」
ルーカスが気づいた時にはただでさえ失速直前から回復したばかりで低速だったベル機は、度重なる回避でエネルギーを使い切り速度を失い、高速で突入したルーカス機の側は逆にベル機と比較して高くないロール性能によりエネルギーを殺しきれず、前に押し出される。
結果としてスピードを殺しきれなかったルーカス機が、ベル機の横を通り過ぎて無防備な背中をベルの銃口の前にさらす結果となる。
ベルはその隙を見逃すほどやさしくない。
一瞬の間ベルが、120mm砲の引き金を引いたかと思うと直後にはルーカスの機体は胴体部と右脚部を背後から撃ち抜かれ火だるまとなりながら墜落していく。
数分後にはシミュレーションモードが完全に終了し、直後にルーカスとエミー、ベルはそれぞれのコックピットから転がり落ちるように出て、ドック壁面通路と機体たちを結ぶタラップの上で話す。
「何か学べることはあったかな?」
ベルは微笑みながら涼しい顔で、二人に対して話しかける。
「いろいろと学べてよかった。」
「ね、まさか全く歯が立たないとは思わなかったよ。」
ルーカスとエミーがかわるがわるルーカスに対して感想を伝える。
「いやいや、あともう少しで負けるところだったよ。」
ベルはふたりの評価に対して普段はしないような謙遜をして、ルーカスとベルの二人の努力を賞賛し上機嫌に鼻歌までしている。今にでも小鳥のようにふわふわと飛んでいきそうなぐらいだ。
「にしても、どうしてあんなに低速域での格闘戦がうまいんだい?」
「人生長く生きればいろいろ学べるんだよ。」
ベルはルーカスの質問に対して、人生と自らの死を達観した老人のような言葉を吐く。そしてその言葉は精神崩壊し、貞操観念がぶち壊れた顔とスタイルだけは良い女にはあまりにも似合わない。
その言葉に思わず、ルーカスは吹き出しそうになる。
「でも、ベルも20くらいだろ?」
ルーカスの質問に対して、ベルは今度はわずかに微笑みながら「ふふ、ありがと。」と妖艶に答える。その言葉や立ち振る舞いは30か40に入ったバーのママが使うようなもので、これまた肌にはりがあり元気溌剌にも見えるベルにはあまりにも歪だ。
そのうちルーカスはベルの瞳が、やはり彼女の恋人であるセルゲイのものに近い砕けた生気を失った死んだ目になっていることに気が付く。いったいどれほど激烈な人生を送ればああいう目ができるのだろうか?自分も将来はああなってしまうのだろうか?
その恐ろしさからベルと穏やかに会話を続けながらも、腕を後ろから回して片腕で決して手放さないぞとエミーの肩から抱きしめる。
おやすみなさい




