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第四話 : 暴食

お久しぶりです。

なんとか頑張って物語の最後まで書こうと思います。



青年改め、トリイとプラムは街道を抜けながらギルド酒場を目指していた。


それまでプラムはトリイへの尽きぬ興味から様々な質問や自分の身の上話をしたりしていたがトリイは「あぁ」とか「そうだな」とか簡単な言葉を返すだけだった。


プラムが凍結について熱く語っていた時、トリイの容態が変わる。


全身をガクガクと震えさせ、トリイの両眼は何処か遠いところを見始めていた。


禁断症状である。


街までの魔法を使った飛行、思考加速魔法等で魔力を大量に消費してしまっていた。

そして、だいたいのヒガシオ◯サカの住人はアルコールが切れてくると全身を震わせ、喉を掻き毟りやがて死に至る。


その為、トリイは体内のアルコール成分が薄まっていくことによる肉体の酒の渇望に苦しんでいた。


「酒、スト◯ロ…酒…スト…ゼロ…酒…」


「いやぁ、あの時の衝撃といったら…おい!どうしたんだ、トリーサン!しっかりしろトリーサン!酒!?大丈夫!もうすぐ!もうすぐだ!もうすぐギルド酒場に着く!」


プラムは息も絶え絶えといったさまで生まれたての子鹿のように体を震わせるトリイを肩に担ぎギルド酒場を開ける。


「なんだ?行き倒れか?」

「よー、門の妖精!門から離れて大丈夫か?」


酔った常連達からの小言も無視してプラムはトリイをどうにかバーカウンターに座らせた。


「オコウさん!酒!

なんでもいい!彼に飲ませてやってくれ!」


プラムがバーカウンターに立つ、髭面の巨漢に向かって酒を頼む…


「いや、どう見ても、彼に必要なのは気つけの薬か、ポーションだろ…」


「スト◯ロ…酒…酒…」


「俺もそう思うよ!でも、こういう時もあるだろ!?ほら、本人も酒って言った!今、トリーサンに必要なものは酒なんだ!頼む!酒を出してやってくれ!」


「気は進まんが…うちの名産の酒

“ホローイ”だ…」

プラムの強い嘆願とプラムの連れてきた得たいの知れない行き倒れの尋常でない雰囲気に気圧され店主のオコウは酒を出した。


プラムの介護のような手つきで酒を口に注ぎ込まれてるうちに

仄かにトリイの眼に光が戻る。


優しさすら感じるほのかな果実の風味と甘みが口の中を癒しで満たす。

そして後味にほのかなアルコールの気配。


女子供が好みそうな酒だった。

トリイはかろうじて口が聞ける程度に回復し、開口一番に


「…頼む…そこにある酒、端から端までありったけ頼む…」


と告げた。


ーどれだけの時間が経っただろうか、とても長い時間だったようにも僅かな時間だったようにも感じる。


そこにはただただ空になったコップと皿だけが並んでいた。


ゴキュゴキュと喉を鳴らす音は絶えず鳴り止まず、時々聞こえる咀嚼音も到底人間が出すソレというよりは野生の魔物が出すソレに近いものだった。


活気溢れる酒場では誰も最初気づかなかったが一人、また一人とその戦争のような食事音に釣られ、その様相を見に行く。


トリイとプラムの周りにはいつの間にかギャラリーが出来ていた。


後に店主のオコウ(48歳:男性)はこう語る。


「あれは宴会とも一人飲みでもなかった…


ただ、ひょろ長な青年が一人で酒を飲んでいただけのはずなのに、遠征明けの兵士団が飲んでいるのかと錯覚するほどの忙しさと量、

見たとこ、行き倒れって感じだったから空きっ腹に酒はよくねぇって思ってちょっとしたツマミも出してやったらそっけなく「ありがたくいただく」とか「かたじけない」とかボソッと言って皿の上に一滴の汁も肉の欠片も残らねぇくらい綺麗に食いやがる!

アレで嬉しくなって俺も次々飯を出しちまってヨォ!

終いにはなぜだか、これまでこんな田舎街でも酒場をやり続けていてよかったなぁ…

なんて思うほど気持ちいい食いっぷりと飲みっぷりだったぜ…」


鯨飲馬食という言葉があるがまさにこの時のトリイの食事を表現する為に生まれた言葉だろう。

鯨がオキアミを飲み込む時に大量の海水を飲み込むように一息に飲み干されていく酒。

オコウの厚意から次々と出される料理は飢えた獣のように、

然して、高級なコース料理を食べる貴族のような品性を感じるほど綺麗に平らげ、

食べ終えられた皿は洗われたかのように

その純白の肌を衆人の前に露わにしていた。


トリイは酒を飲む時多少味わおうとも考えなくもなかったがどれも彼のアルコールへの飢えを満たすためには度数が余りにも低かった。


店主が出してくれたものは酒精が4度(こちらの世界に合わせて表記するならばアルコール度数4%)ほどの酒だった。


ホロー周辺や近隣の村から採れる果実を天然発酵させ、それらを水冷魔法で冷やしたもの。

それがホローの名産である果実の風味の甘い微発砲酒、”ホローイ”(330ml /4%)だった。


そこそこに廉価でありながら、成人し、酒を飲み始める者や酒が苦手な者からもその飲みやすさと甘みにより親しまれているホローの街の誇る酒だった。


だがしかし、トリイには甘く、

そして何よりも”度数が低すぎた。”


前にも一度書いたがトリイのような信仰者にとってはアルコール度数9%以下はジュースに過ぎず、量を飲めど満たされることはなかった。

他にも前の世界に比べ、麦の風味が強く、ろ過の技術が低いのだろう、薄茶色のような濁ったエール。


どちらも幸い、凍結ほどではないが水冷魔法による冷却で冷たくはあったので飲めないことはなかった。

だがこれを飲んでいるのは重度のス〇ゼロ信仰者である、満たされようはずもない。

飲めば飲むほどに


(度数が…度数が足りない…)


となるのだった。


「ス〇ゼロ…」

ふいにトリイは故郷の母を思うように、然して、異国に住む恋人を想うかのようにポツリとその言葉をこぼしていた。

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