4-2 暗殺の準備
かなり久しぶりの更新となってしまいました。
これからはどんどん更新していきます
「そんな緊張しなくていいぞー。いくら有心が戦闘経験ないといっても人間とは基礎能力が違うしな。それで死ぬようならヴァンパイアの資格無しって事だな」これから人を殺すというのにアッシュは気楽そうだ。
「いきなり暗殺か、、もうちょっと優しいのないの?、、」有心はそう言いつつ、ちらっとアッシュの方を見た。
「ない!」アッシュは即答した。
「そもそも新入りは暗殺をやる決まりだから諦めろ。ヴァンパイアである以上、まずは戦力になってもらわないとだしな」
「どうせ俺に断る権利はないんだろうな、、。任務の内容は?」有心は諦めて受け入れる事にした。
アッシュは嬉しそうに任務の説明を始めた
「よーし!我が後輩よ、説明を始めるぞ。お前がいた村に戻り、そこにいる人間を殺す!以上」
有心の脳裏にテジの死体がよぎり、動揺する有心。
「なんであの、、村なんだ」
「ヴァンパイアに襲われた村には王都から調査団が派遣されるんだよ。しかもお前を処刑するために来てたヴァンパイアハンター達も皆殺しにしちゃったから、派遣されてくる調査団も多いと思うんだよね。そこを叩く!」
アッシュは剣で人を斬る素振りをしながら言った。
「なるほど、、、。暗殺のターゲットは?」せめて自分とは歳が離れた人間であってくれと祈りつつ有心は聞いた。
「一番偉そうなやつ!その時になったら、誰をヤるのかは俺が判断して指示するから。準備しに武器庫に行くぞー」そう言ってアッシュは作戦会議室を出て行った。
置いて行かれないように有心も後を追った。
相変わらず迷路のような作りになっている場所であるが、アッシュは何の迷いもなく武器庫へと向かって行った。
「よく迷子にならないね」前を歩くアッシュに有心は聞いた。
「慣れかな。行く部屋って大体決まってくるから自然と覚えられるよ。到着!」そう言って足を止めたアッシュの前には木造の扉があった。
武器庫とはいったものの施錠がされているわけでも無く、守衛もいない。
「不用心過ぎない??」有心は呆れ気味に聞いた。
「武器庫といっても、すでに使われなくなった武器が置いてあるだけだからね」アッシュは扉を開けて中へ案内してくれた。
武器庫内は確かにアッシュの言う通りだった。木の箱にボロい剣やナイフ、斧などが乱雑に入れられていて、床には刃が欠けている剣などが散乱していた。
「武器庫というより、物置だな、、。」少し引き気味に有心は言った。
「ハハハ! 確かにな。 そもそもみんな、自分の武器は自分で管理していつも腰に下げてるからなー。しかも、みんな人間から奪った武器を使ってるし、ここの武器使うのは新入りくらいだから好きなの選べ」
そう言ってアッシュは武器庫内の剣を手に取り、懐かしそうに見始めた。
そうは言われても、どの武器が自分に合っているか分からないし有心はとりあえず一番綺麗そうな武器を何個か集めてアッシュの所へと行った。
「どれがいいと思う? 武器持った事すらないから分からないんだよね」アッシュに意見を求める有心。
「それは個人の感覚だからなー。それに能力とも関係してくるから戦闘を経験していくうちに自然と自分に合ったのが見つかるよ」そう言ってアッシュは自分の剣を自慢げに見せてきた。
「ちなみにこれは、王都のエリートヴァンパイアハンターの部隊長から奪った剣なのさ」自慢できてアッシュは満足そうな表情をしている。
しかし有心の関心は剣ではなかった。
「ヴァンパイアって能力とかあるの???」衝撃の事実に驚いた有心。
「ハァァ?? そんな事人間の子どのでも知ってるぞ。ほんとに記憶が全然ないんだな」アッシュは驚きとため息混じりで言った。
「そもそも人間相手に使うことなんてあるの?? 普通にしてても余裕で勝てると思ってたんだけど」有心は自分の無知さを改めて実感しつつ、自分が元いた世界のヴァンパイアとの違いも知らなければいけないと思った。
「人間に個性があるように、ヴァンパイアにも個性があるんだよ。しかも能力は人間だった時の経験や記憶が色濃く反映されるんだよ。それに人間がみんな弱いわけじゃない。魔法や呪いを使う者は手強いから注意しろよー。まっ詳しい説明は今回の任務の後でな」
「分かった」そう言って有心は一番綺麗で新しそうな剣を手に取った。
「武器も決まったみたいだし、準備に取り掛かるぞ」アッシュの顔は真剣になっていた。
「今偵察隊が村で情報を集めてるから、そいつらが帰還後に情報を共有する。そして日暮れと共にここを出る。村に着き次第、殺し始める。大丈夫か??」
真剣な表情のアッシュに少し気圧されながらも有心は返事をした。
「了解」
「よし、任務に向けて装備品のチェックをする。」そういうとアッシュは自分の装備品を一度外し、テーブルの上に並べ確認を始めた。
「持ち物にこれといった決まりはない。あとは任務の難易度や移動距離によって人間の血が入った小瓶が支給されるから受け取るの忘れないようにな。ちなみに今回は1人1本血が支給されるぞ」
そう言って持ち物の確認が終わったアッシュは装備品を身につけた。
「分かった。血はどのタイミングで飲むの?」
「まずは出発前に必ず食堂でワイングラス一杯分飲む。支給された分は今回の任務の場合、飲む事はないと思う。もし、想定外の事態が起きたら飲むかもしれないが、そのタイミングも指示するよ」
「了解」ここにきてから動物の血しか飲んでない有心は、今人間の血を飲んだらどうなってしまうのか想像できなかった。
さらに血を求め暴走してしまうのは嫌だと思いつつ、もう1度飲みたいといった欲望があるのも実感していた。
「偵察隊が帰ってくる前に腹ごしらえしに食堂行くぞー」そう言ってアッシュの表情はいつのもニコニコした感じに戻っていた。
相変わらず食堂までの道はまだ分からず、アッシュについて行った。
「最後の晩餐になるかもしれないから、好きな物食べておけよー」アッシュの冗談に有心は笑えないでいた。
「笑えないですよ、、、。俺は血だけでいいです」
「はははっごめんごめん。子羊の肉と大きなトマト2つ! あとこれよろしく」そう言ってアッシュは食堂にいるヴァンパイアに紙を渡すと、アッシュが頼んだ料理の他に、2つのワイングラスに注がれた人間の血が出された。
「はいよ、お前の分」アッシュは有心の分の血を渡した。
有心は血の入ったグラスだけ持ち、アッシュは注文した料理と血の入ったグラスを持ち席についた。
「料理真っ赤ですね」アッシュの料理を見て、有心が言った。
「肉も赤いし、トマトも赤い!血みたいで力が出そうだろ?」そう言ってアッシュは料理を食べ始めた。
「なるほど、、」そう言って有心はグラスに入っている血を一口のんだ。
そしてその瞬間、力が満ちるのと同時に、血に対する欲求が強くなり意識を保つのがやっとだった。
そのままグラスに入っていた血を飲み干すと同時に、一瞬自制が聞かなくなり、人間では反応もできないであろう速さでアッシュの分の血を奪おうと手を伸ばしていた。
「いっっ、、、」急な痛みで意識が戻った有心は痛みの原因を理解した。
手のひらに刺さったナイフが貫通し、テーブルに固定されていた。
ナイフはさっきまでアッシュが肉を食べるのに使っていたナイフであり、有心の手に刺したナイフを抜き血の色を見た。
「まだ赤いままか、、、」ボソッとアッシュが言ったのを有心は聴き逃さなかったが、その事について聞く前にアッシュが話し始めた。
「落ち着けよ。欲求に支配されるな。任務中に暴走されたらたまったもんじゃないからな」そしてアッシュは食事に戻り、自分の分の血を飲み干した。
そしてアッシュは血を飲んでも表情ひとつ変えずいた。
「準備万端!!!」
アッシュの一声で有心に緊張が走る。
そしていよいよ有心の初任務が始まる
次回からいよいよ初任務とバトルが始まります!
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