表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/178

ゾンビ王国7

お互い睨みあい対峙する。

あの格好だからどこから攻めたらいいのか迷う。


「来ないならこっちから行くぞ小僧!」


攻めてこないので痺れをきらしたのか五郎が吠える。

ググッと膝を折り力をためているように見えた。


「何を?」


ドン!


「マスター!」


五郎の足元から重い音が鳴り、もの凄いスピードで僕の横をドラム缶が掠めていった。

そのせいで僕の頬が浅く抉れて血が流れる。

白夜の焦ったような声を聞き即座に意識を五郎に向けた。


「大丈夫。かすっただけだ。それより五郎から目をはなさないで!」


「は、はい!」


五郎を見れば壁際で立っている。

あのスピードで突撃すれば壁に激突してもおかしくないのに平然としている。


壁に当たる瞬間を見ていないのでわからないが、何をしたのかは想像できるが厄介なことにはかわりがない。

そして戦術も想像できる。


「ふむ、狙いが甘かったか。次行くぞ」


五郎がニヤリと笑い膝をまげる。


「白夜!来るぞ」


ドン!


「クッ」


今度はかわせた。

五郎の足元から音が聞こえた瞬間に体を伏せた。

僕の頭上を猛スピードで通過した五郎は器用にドラム缶を縦に回転させて床に滑りおりる。

五郎がおり立った床は二本の線が伸びていた。


「ほう、もう対処してきたか。王が興味を持つに値するだけはあるか?」


楽しそうに笑みを浮かべる五郎を見てその余裕の顔を消してやりたいと心底思った。


僕と白夜は一定の距離を離れて五郎の攻撃を避ける。

固まっていても五郎を止められる術がないからだ。

6回、7回と飛んでくる五郎。

ほぼ僕に向かってくる、白夜を軽視しているのか彼女には殆ど攻撃をしない。


(マスター、五郎の攻撃は溜めに1~3秒かけてます。短い時間ほど距離が短く威力もない感じがします)


僕に攻撃が集中していたので白夜に五郎の観察を頼んだ。

あのデカイ体が入ったドラム缶ごと来る攻撃をかわしながら観察をするのは難しく白夜に頼んだ。


ブンブンと唸りを上げて迫り来る五郎。

単純だけに打つ手がない。

五郎ほどの質量を受け止めらるほどの力もなければ迎撃する魔法もない。


あるとすれば膝を曲げる瞬間だがそれも近くにいないと難しい。

その隙があればいいのだが………。

不恰好ながらも色々と場所を移して五郎の挙動を見る。


その結果、一番ヤバイのは壁際だとわかった。

五郎の攻撃は頭、胴、足のどれかを狙ってくる。

大体は五郎の頭の位置で狙いを把握できるが、壁際だとそのバリエーションが多くなる。


五郎は壁を利用した。

そのせいで攻撃のバリエーションが広がる、壁を蹴って真上からの攻撃もあったり短時間で2回攻撃をする時もあった。

真上からの攻撃の時、こちらが攻撃をするチャンスがあったが避けるだけで精一杯だった。いつまでも続くかと思われた五郎の攻撃に陰りがでてきた。

急に攻撃に移る秒数が長くなったのだ。


(マスター、変です。五郎の攻撃の溜めが長くなっています?)


(え?)


白夜に言われて五郎を見ると確かにいままでよりも膝の溜めが長い。

五郎の顔色をうかがっても平気そうな顔をしているので何かの作戦かと思った。


(マスター!五郎の右足首が変な方向に曲がってます)


驚きの声で白夜が伝えてくる。

それが本当なら五郎はもう前ほどスピードをだして攻撃をしてこないはず。


五郎は自分の足の状態がわかっていないのか、思い通りに攻撃を繰り出せないことに怒りの表情を浮かべていた。


(チャンス)


(はい、マスター)


棒立ち状態の五郎に向けて駆け寄る。

膝をつかせれば勝ちなので弱っている右足を狙う。


「ふん!」


ガン!


「クッ」


こちらの狙いを察したのか五郎がドラム缶で下半身を隠した。

僕が放ったローキックがそのドラム缶に当たり思わずその痛みに顔をしかめる。


「ようわからんが、残念だったな」


僕の顔を見て余裕を取り戻した五郎は笑みを浮かべる。


「そっちももう動けないだろ?なら今度は僕の番だ」


「へ~、本当にそう思うのか小僧」


相変わらず余裕の表情をしている五郎だが動けるようには見えない。


「ヤ!」


五郎が僕に気を向けている隙に白夜が背後から攻撃を仕掛ける。

狙いは五郎の後頭部、細い白夜の足でもまともに当たれば骨を砕く。


「甘いぞ、ちっこいの」


そう言うと五郎はその場で小さくジャンプした。


ガン!


再び鳴るドラム缶の音。

五郎がジャンプをしたため、白夜の蹴りは五郎の後頭部からドラム缶に当たった。


「う~ん……………なんじゃ、足が逝かれよったか?」


たぶん、予想と現実との間に差があったのだろう。

その違和感で五郎は自分の足の状態を知ったようだ。


「まあ良い。あれだけワシの攻撃をかわした褒美じゃ。それにどんな状態であれ戦いに待ったはないわ!」


ガハハハ!と声を上げて笑う五郎。

これで有利に戦いをできると思ったらハンデをくれてやると言って余裕の顔をする。

ならそれを有効に使わないとね。


攻撃魔法を使えない白夜にドラム缶で防御を固めた五郎にダメージを通すことはできないだろう。

だが僕ならドラム缶を通してダメージを与えることができる。


拳から放たれる衝撃波は僕の望む位置に攻撃を当てられる。

技がギフトに出てわかったことだが、レベル1上がるごとに10㎝衝撃波を当てる距離が伸びると説明文にあった。

いま僕はレベル6だから60㎝の射程なら打撃の力を相手の内部に攻撃をすることだって可能となった。


前から感覚としてはあったが、拳を当てた先を吹き飛ばすイメージだったのでこれで狙い通りに攻撃をすることができるようになった。


魔弾衝撃波。

それが新しく出た技名だ。

拳が当たった時の延長線上にその打撃力と同等の攻撃力を射程内の敵のどこでも攻撃することができる。


例えば敵の持つ盾に拳を当てれば、当たった盾の先に敵の体があれば、今なら拳から60㎝以内なら敵の体や体内にその力で攻撃することができる。


かなり強力な力だとおもうが欠点もある。

自身の打撃力により攻撃力が変わるのと、無意識にこの力が発動してしまうので制御が難しい点だ。

あの訓練場で剣の柄を折れまくったのもこのせいだと思う。


余裕の笑みを浮かべている五郎に向かい駆けるあとは試すだけだ。


「こい小僧!どれだけの力か見てやる」


ドラム缶から両腕を広げ無防備な体勢をする五郎。

あきらかに舐めきっている。

そのドラム缶に絶対の自信があるのだろう。

僕が近付くと亀のように頭と両腕を引っ込めてただのドラム缶になった。


「ガハハハ。どっからでもこい!」


ドラム缶の中から聞こえる五郎の声。

僕は駆け寄る勢いを落とさずに右腕を叩きつけるように五郎の頭が有るであろう位置に渾身の一撃をドラム缶に叩きつけるよう。


「魔弾衝撃波!」


ガン!


一瞬傾くドラム缶。

骨よ砕けよとばかりに叩きつけた。

ビキ!と右拳から嫌な音がしたが、それぐらいしないと倒せないと思ったからそうした。

打撃力で攻撃力が変わるこの技は相手が無防備なほどいい。

渾身の力で叩けばそれだけ固い体や皮膚でも体内に力をやればそれだけで倒すことが可能だから。


「グフフ、そ、れだ………」


五郎の声が途中で途絶えるとドラム缶の中からどす黒い液体が噴出する。

僕は痛む右手をおさえドラム缶から離れるとゴロンとドラム缶が倒れた。


「マスター!やりましたね」


動かなくなった五郎を確認して白夜が興奮して僕に飛びこんできた。

それを左腕だけで受け止める。


「痛っ………やったね白夜」


「マスター?」


白夜を受け止めた時の反動で負傷した右手が痛み、その顔を白夜に見られた。


「やっぱり怪我したんですね?」


「アハハは………」


笑って誤魔化そうとしたが白夜が凄い顔で睨んできた。


「………うん」


仕方なく僕は痛む右手を白夜に見せる。


「あ~!折れてますよ。なにやってるんですか!」


右腕のガントレットを外し白夜に見せたら右手が凄く腫れている。

白夜がそれを見つめオロオロとするがどうすることもできない。

回復薬はの残りはもう殆ど無い。

回復魔法も使えない僕達にはお手上げだ。


「ごめん………なさい」


後ろから声がしたので振り向くと桜が泣きそうな顔でそこにいた。


「いいさ。まだ左手がある。痛みにはなれてるから気にするなよ?」


まあ無理だろう。

無表情そうな顔をしている桜だが、こういう時は表情がわかりやすい。

笑顔はあまりみせないが心配そうな表情や悲しそうな表情はわかりやすいぐらいわかる。

心の優しい少女だと思う。


「マスター、一先ずガントレットを装備してください。アレは密着するので骨折箇所を固定できます。痛みは引きませんが無いよりましかと………」


「………はあ。それしかないか」


「いいえ。私が治しますよ」


「え?」


亮さんではない男の声が部屋に響く。

この声に聞き覚えがあった。


「乱丸?」


「はい。主の元で待つつもりだったのですが、五郎が話せなくなりましたので私が派遣されました」


相変わらず綺麗な人だな、話し方や動作が様になっている。


「治せるのですか?」


「はい」


「なら早く治しなさい!」


今にも飛びかかりそうな白夜をおさえる。

なにか企んでいるのかと疑ってみるがそれで彼に得があるわけではないので本当なのだろう。


「亮さんの腕は?」


「ふむ。まあ、いいでしょう。その代わり我が主の元へは来ていただきますよ」


僕はそれに頷いた。


「では、ちちんぷいぷい~………はい、治りました」


「「は?」」


こんな綺麗な人が変な呪文を唱えたと思ったら妙な事を言う。


「治ったて………………あっ!」


まさかと思い右手を動かすと痛みもなく動く。


「兄さん!」


驚きの声を上げた桜の方を見ると右腕を動かしている亮さんがいた。


「これでいいですか?」


笑顔を見せる乱丸に背筋が寒くなる感じがした。

あんな馬鹿そうな呪文ではなく、呪文の効果をこちらに解らせない腕前にだ。

魔法のようにわかりやすい見た目なら対処のしようがあるが、何をしたのかわからないのは驚異だ。


「それではあの階段から下に下りて来てください。門番には私から話を通しておきますので何か聞かれたら私の名前を言って下さい。では………お待ちしております」


「アッ!」


スーと消える乱丸。

あきらかにゾンビとは違う。

あの階段の下に彼が主と慕う者の国があるのかと思うと身震いがする。


「マスター」


僕の心の内を感じて心配そうに見上げる白夜。

無事に右腕が戻り喜んでいる桜と亮さん。

僕は1度、目をつむり短く深呼吸をして前を見る。


「みんな行こうか」


下の階層がどうなっているのかわからないが招待をされたのなら行くしかない。

僕達は覚悟を決めて歩きだした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ