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ゾンビ王国8

蘭丸に言われた階段を下りると目の前に巨大な壁と門があった。

壁はたぶん、ダンジョン内の岩や土を使って作ったのだろう統一した色合いではなく薄汚れてはいるが、重厚な凄みがある。


そして門だが巨人が通っても余裕があるほど大きい石の門だ。

あまりの大きさに目を奪われていたがよく見ると門の脇に人がたっている。

人間の大人ほどの身長で変わった鎧を着て槍を手にしていた。


「止まれ!」


大きな声でその男がこちらに言う。

門に近づいたところで警戒されたようだ。


「男2人と女2人、蘭丸様の言っていた者だな?」


こちらをジッと見つめ確認するように問いかけるのはゾンビの男だった。

上の階層のゾンビ達とは違い腐食していないし表情が見てとれる。


「はい。そうです」


代表して僕が答える。

本当に変わった鎧を身に付けている。

黒っぽい茶色の胴鎧に肩にはヒラヒラした肩当て、腰には同じくヒラヒラしたなにかを装備している。


(確か…………昔見た日本人の戦闘装束………甲冑?だったかに似ている)


あの世界で見た映像を朧気に思い出しながら相手の出方をみる。


「よし!通れ」


門番らしきゾンビが石門をドンドン!と叩くとズズズと人が通れる程の隙間が開く。


「えっと、ここを通って何処へ行けば?」


「ん?なんだ知らんのか、ここを入ったら遠くに城が見えるそこに行け」


ものは試しに聞いてみたらゾンビの男が答えてくれた。

しっかりと僕の目を見て言葉を喋り受け答えをしたのを聞いて僕はこれがゾンビレベル5の姿かと感心した。


知能なんてないと思っていたゾンビが考えて話をする。

この階層にいるゾンビは皆このようなゾンビなのだろう。

僕はお礼を言って皆を連れて門を通る。


確かに門番のゾンビが言ったように遠くに城らしき物が見える。

そして門の中は整然と建てられた石造りの家が建ち並び、ダンジョンの高低差を利用した都市になっていた。


「うわ~、凄いですよマスター」


「本当に凄い」


「これをゾンビが造ったのか、あの下等な化け物が?」


この街並みを見て感嘆の声を上げる2人と毒づく亮さん。

4階層よりも更に明るい5階層は真上に太陽でもあるのかと思うほどだった。


これだけ明るいと街並みやそこに住む者達もよく見える。

僕達が驚き立ち止まっている前を興味深さそうに見ながら歩くゾンビ達。

ハッキリと言って大勢いる。

老人から子供まで老若男女、揃っている。


それでもこちらを襲って来ないのは門を通って来たからだろうか?

それとも蘭丸から話が全員に伝わっているからかなのか判断がつかないが、これだけの数のゾンビを相手にしなくてもいいのは正直ありがたかった。


「直斗行く?」


他の者より早く立ち直った桜が僕の腕にそっと手を添えて聞いてきた。


「そうだね。いつまでも立ち止まっていると囲まれそうだから早く行こう」


いくら襲って来ないといっても不安はある。

彼等の興味が限界に達して襲って来ないとも限らないので僕は皆を連れて遠くに見える城らしき建物に向かって歩きだした。


やはり生身の人間である僕達は目立つ。

行く先々でゾンビ達の観察対象になってしまう。

城まで続く道らしき通りの真ん中を僕達は進むために余計に目立つ。


ゾンビ達が建物の側を歩いているので自然と空いている道の真ん中を歩いてしまっていた。

不自然に空けられた通りを見世物のように見られながら歩いていく。


僕と白夜はもう馴れた。

見たいなら見ればいいと腹を括る。

後ろを着いてくる亮さんと桜は恐る恐るといった感じでまだ緊張している。


門から城まで半分くらい街の中を進んで来たからだろうか、その頃になると僕は逆にゾンビ達を観察する。

ここに住んでいるのは全員が日本人かと思っていたけどそうじゃないみたいだ。


所々で金髪や赤毛などのゾンビが歩いていた。

よく注目してそのゾンビを見ると日本人の顔とは思えない顔立ちをしていた。

また服装も違う。

日本人らしきゾンビは普通の洋服や着物など一般的な服装に対して、そのゾンビは緑の迷彩服や黒の動きやすい服を着ていてどこか一般人ではない兵士のような感じだ。


不可思議な感じがしたがゾンビの生態など知らないので、そういうゾンビも居るかで流す事にした。


「しかし不思議な所ですねマスター。あきらかにゾンビなのに襲ってこない。しかも会話までしていゾンビが居ます」


「そうだね。普通に生活をしているように見える」


軒先で会話を楽しむ女性のゾンビ達がいたり、子供同士で遊んでいるゾンビもいる。

その顔には表情があり、とてもゾンビとは思えないほどだ。


後ろの亮さんは相変わらず警戒をしているが、桜の方は幾らか緊張が解けたようだった。


「あそこに道具を使っているゾンビがいる」


桜が指を指す方を見ると何かを作っているらしいゾンビがハンマーを使って何かを作っているのが見えた。


「ゾンビの癖に道具を作るか?」


亮さんが忌まわしい者をみるように吐き捨てる。

どことなくだが、亮さんの性格が変わったような気がする。

前までの優しい雰囲気が影を潜め目が険しい気がする。

自分が取り乱したせいとはいえ蘭丸にされた仕打ちが彼を変えたのだろうか?


次第に大きくなってくる城を眺めさらに進むと城に続くらしい階段まで来た。

ダンジョンの壁際の岩を削り階段を作っている。

その階段を見上げると遥か先、ダンジョンの天井に届くぐらいの場所に城があった。

視認で500メートルはあるであろう城へ向かって伸びる階段を上がっていく。

途中で休憩をとりながらひたすら階段を上がると、城がある最上部はかなり広い平らな場所に石造りの城があった。


その入り口と思われる門の前に蘭丸が立っている。

どうやら僕達が来るの待っていたようだ。


「蘭丸、ずっと待っていたの?」


「はい。我が主様がお待ちですので案内しますよ。どうぞこちらに」


蘭丸が門をくぐり歩いていく。

僕達は慌ててその後を追った。


随分と大きい城だと思ったら中も広い。

こちらに背を向けて歩いている蘭丸は僕達が襲うとは考えていないのか隙だらけのようにも見える。


「僕達が襲うとは考えてはいないのか?」


前を歩く蘭丸に僕は心に思った疑問を聞いてみた。


「襲う?私をですか。面白いことを言いますね。いつでもどうぞ、私を襲ってくれて構いませんよ」


本当に襲えそうな雰囲気をだす蘭丸に斬りつけようかと剣に手をかける亮さんの手を桜が押さえている。

それに気づいているかのようにフッと蘭丸が微笑む。


本気でそれをやれば亮さんは死ぬだろう。

桜が止めていなければそんな未来がみえたような気がした。


(マスター、亮の様子がおかしくないですか?)


僕の横にいる白夜がそっと後ろを見て僕に心話を飛ばす。


(うん。ちょっと目が離せないほどヤバイかな)


自分の正直な気持ちを白夜に話す。

今は桜が抑えているがいつ飛び出してもおかしくない。

白夜は基本、僕に害がなければ他人が何をしようと干渉はしない。

僕にしても桜が悲しい思いをしなければいいなぐらいで積極的に止めることはしないだろう。


全ては自業自得だ。

蘭丸にしてもそれで攻撃されたとしても僕達にまで手は出さないと思える強者の余裕を感じる。

不穏な空気を発する亮さん、静かに前を進む蘭丸。


かなり奥まで通されたが人の気配というか、ゾンビの気配が感じられない。

かりにも王城だというのにそんなことがあるのだろうか、少なくとも衛兵ぐらいは居てもよさそうだが?

「あそこが主の居る謁見の間です。私が案内をするのはここまです。どうぞ中にお入りください」


羽織袴に皺ができない程度に頭を下げる蘭丸。

僕達は顔を見合わせ蘭丸の横を通り謁見の間に入る。

蘭丸の横を通る時に亮さんが不自然な動きをしようとしたが、桜が蘭丸との間に入りそれを防ぐ。


ここにきて桜の配慮というか精神がすり減っているような気がする。

無表情の顔に疲れが見えるほど。


木造の重厚な扉が自然と開くと視線の先に二人の人影が見えた。

床に敷いてある赤い絨毯が王座まで続いている。その上を歩いていくと。


「よく来た!俺がこの国の王、おだ………………第六天魔王 信長だ」


広い謁見の間に響く声、かなり若い男が僕達を見下ろし立っている。

青、赤、金色と豪勢に着飾った第六天魔王 信長と名乗る男。

直感的にこの男はゾンビではないと感じた。


またその隣には白く長い髪に白装束を着た白い肌の少女が佇んでいる。

どことなく氷依の姿を思い起こされた。

野獣のような男に清楚な女性、二人から感じる圧倒するような気に僕達が呑まれていると。


「旦那様、少し落ち着きなさい。お客様が驚いているわ」


「おっと、すまん。しろ」


隣の少女に注意を受けて信長が王座に腰を下ろすと空気が和らぐ。


「紹介が遅れたな、こいつは妻の天草 しろだ」


「しろです。宜しくね」


ペコリと頭を下げるしろさん。

信長が二十代後半ぐらいでしろさんは十代後半ぐらいに見えた。


「夫婦なのですか?」


素朴な疑問だ。

ゾンビと化け物と言っていいだろうか、子を成せるとも思えないが不思議な組合せだった。


「まぁな、そういう役割になっているな。だが気に入っているのは本当だぞ」


「フフ。私もですよ」


二人の笑顔を見て心が通じあっているのが見てとれた。


「それで、僕をここに招待してくれた理由………は、えっ?」


信長にその意味を聞こうとしたとき、上の方から重い音が響き微かに城が揺れる。

思わず上を見上げるとやはり音が聞こえる。


「ああ、奴が来たようだ」


「奴?」


「黒き竜だ。巨大な力をもつ奴だな。知っているか?あの女に連れられて来た7匹の化け物をその1匹だ」


信長の言いように覚えがある。

先生が言っていたこの地を支配している冥竜王ヴァルサス。

あれが上にいる?


「ま、まさか!」


「上の仲間が攻撃をされているのか!」


驚きの声を上げる僕と焦った声で怒鳴る亮さん。


「そうだ」


ただ一言、信長は僕達を見て言った。


「では、僕を呼んだ理由は………」


「そうです。奴が近づいているのがわかったから。これも天の采配でしょう」


「戻せ!僕の仲間が上にいる。助けにいかないと」


亮さんが信長を睨みつけながら前へと出る。


「そこまでです。無礼ですよ。死になさい」


どこから現れた蘭丸が亮さんの目の前に立ち、日本刀を無防備な亮さんの首もとめがけて刃を振り下ろす。


「待て蘭丸」


亮さんの首に刃が当たる。

首の皮1枚の所でその刃が止まっていた。

主である信長の命令を忠実に守った結果だろう。


「………………」


蘭丸の持つ日本刀の刃に亮さんの血がポタポタと流れ落ちる。


「行きたいなら行かせてやれ。武士もののふなら当然だ。死に場所はその者のもつ天命だけが知る」


「蘭丸さん。旦那様の言う通りですよ。それとえっと………」


しろさんが困った顔で僕を見た。


「あっ!済みません。僕は直斗です。こっちは白夜、この子は桜でその兄の亮さんです」


招待をされて来たのに相手より後に自己紹介をしてしまった。


「直斗さん。あなたも上に戻りたい?」


やさしく問いかけるしろさんに僕は頷く。


「そう、蘭丸。直斗さん達を上に送ってあげて」


「よろしいので………」


蘭丸はしろさんから信長へと視線を移す。


「かまわん。しろの言う通りにしろ。直斗と言ったな覚えておけ、ここは誰でも受け入れると」


僕がそれに対して頷く前に蘭丸の体が信長と僕の間に立ち視線を遮る。


「では行きますよ」


いつまにか日本刀をしまい両手を広げる蘭丸。


「さあ、飛びますよ」


僕達の足元に黒い光が現れ囲む。

蘭丸を入れて5人が謁見の間から消えた。




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