表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/178

ゾンビ王国9

「ウッ?ここは?」


「見えない」


明るい謁見の間から暗い場所に出た。

周りには仲間達がいるのが感じられるが急な事で暗闇に対応する準備ができていない。

更に上から聞こえる破壊音に揺れる地面。


「慌てずに。ここはあなた達が降りてきた縦穴の下ですよ」


前方から蘭丸の声がする。

僕からは暗闇で見えないが蘭丸には見えているらしい。


「マスター暗視をかけます」


パアと目の前の闇が薄れて蘭丸の顔が見えた。

白夜はそれを全員にかけて回る。


「見えますか?この上があなた達が来た縦穴ですよ」


蘭丸が上を指を差す。

その方向には確かに僕達が来た縦穴あった。

まだ崩れ落ちているは様子はない。


「私が連れていけるのはここまでです。ご武運を」


そう言い残して蘭丸の姿が闇に溶け込んで消えた。


「………………行こう!」


僕の言葉に全員が頷く。

我先にと亮さんが縦穴の縄に飛びつき上に登っていく。

その下に桜、今回は白夜の暗視の効果が効いているので白夜に僕と続いて登っていく。


最初に比べて縄を楽に登れる。

五郎を倒してレベルが8に上がり僕の身体もだいぶ強化されたのだろう。

白夜はあの戦闘では活躍がなくレベルはあがらなかったがそれでもレベル7になっているから最初に比べるとだいぶ強くなっているはず。


「おい!上に着いたぞ」


亮さんの声が縦穴に響き上を見ると明かりが見える。

僕らも続いて縦穴から出ると亮さんが部屋を走り去る姿が見えた。


「あっ、兄さん」


慌てて桜も亮さんを追って部屋を飛び出していった。

僕と白夜は慌てずに部屋を出る。

緊急とはいえ帰ってきたので彼等のサポートは終了となり別れても問題ない。

それにしても相変わらず上から攻撃音が聞こえる。


部屋を出ると避難してきたのであろう人人人で溢れていた。

僕の目の前には怯えている人達が大勢いる。

その中で必死に誘導をしている男の人がいたので先生や隼人さんの事を聞く。


「あの………すみません」


「ん?なんだ。おとなしく順番に並んで待っていろ。まだ時間はある、奴の攻撃もここまで届かないだろよ」


「いえ、そうじゃなく隼人さん達はどうしたのですか?」


煩わしそうに僕を追い払おうとしていた男はそれを聞いて態度を和らげる。


「リーダーの知り合いか………………あっ!直斗君か、亮の奴もさっき来たから戻ってきていたのか」


この男の人は僕を知っているみたいだ。

きっと歓迎会の時にいた人の一人だろう。

僕の方はあまりに人数が多かったのであの場だけで顔を覚えるのは諦めたが。


「リーダーなら上で敵を迎え撃っている。ヴァルサスの尖兵がここに突入してきてな」


「ここがバレたんですか?では隼人さん達は天然洞窟の2階層辺りですか?」


確か敵の潜入を迎え撃つため罠を張り巡らしていたと言っていた。

なら隼人さん達はそこで迎え撃っているとおもっていたが。


「いや………すでに3階層まで入りこまれたそうだ。今、リーダーは少数で3階層階で敵と交戦中なはずだ」


「もうそこまで来ているんですか!」


「他の場所から敵は?」


敵の侵略スピードに驚く僕とは違い、白夜は冷静に他の場所からの危険がないかを聞く。


「ああ、エレベーターは敵からの攻撃直後に止めてある。亜弥音様にも自身の防御を優先するようにお願いしたと聞いた」


僕はここ内部の構造を思い浮かべる。

エレベーターが使えないとなると各階の移動手段は階段だけだ。

さすがにエレベーターの扉を破ってまで来ないと思いたい。


「これからどうするんです?」


「生き残った者を守る。リーダーからこの施設で一番頑丈な食料庫に立て籠るよう言われている。各武器庫も開放されていて仲間達が食料庫にそれらを運んでいる所だ」


「生き残りって………これだけですか?」


気になる事を聞いた。

今、周りには居るのは40~50人ほどだ。

奥で作業している人と上で防衛している人、だけどその数は少数だと言ったから合わせても80人にも満たない気がする。


「すまん不明だ。上で五堂様が逃げ遅れている人を探しているのでまだ居るかもしれんが人の流れが止まってずいぶんと時間がたったもしかすると………」


最後まで言葉にできずにその男は辛そうに顔を歪めた。


「そうですか………僕も隼人さんに合流します。あの階段を使えばいいですか?」


僕の視線の先には階段をバリケードで塞いでいる人達がいる。


「もちろん行けるが階段は各階の反対側にあるぞ」


それに頷き僕と白夜は階段の方へと向かった。

どうやら先生も上で無事らしいと聞いてホッとする。


「すまない。ここを抜けたいのだが」


バリケードを作っているリーダーらしき男性に話しかける。


「子供が正気か?上は戦場だぞ」


僕の言葉に男は訝しげに声を荒げる。

それに負けじと僕はその男を睨み付ける。


「いいじゃない、行かせてやりなよ。君、直斗君でしょ?」

無言の睨みあいの応酬に横から女性の助け船が入った。


「はい。僕を知っているんですか?」


「アハハ、覚えてないか?歓迎会の時に会ったんだけどね」


「すみません。大勢いたので覚えられなくて………」


「謝ることはないよ。それより急ぐんでしょ?」


「おい」


その女性が人一人分ほど通れる隙間を作ってくれる。

それに抗議するような男の声を無視して。


「ありがとうございます」


僕はその女性にお礼を言ってその隙間を通って階段を上がっていった。


「あまり勝手な事をするなよ唯。俺達だって上に行きたいのを我慢してるんだ」


「私達は隼人様より厳命されてここを任されている。だけど彼は違う。それに彼、隼人様を失神させたそうよ」


「ハア!嘘だろそれ」


「本当よ、隼人様が笑いながら話してくれたわ。だから直斗君に賭けたのよ。私達の変わりに隼人様を助けてくれると信じてね」


その視線の先に直斗の姿はもう見えないが、唯は彼が期待通りの事をしてくれるようにと願った。


階段を上がり4階層に着く。

天井が所々崩れている。それが通路に落下しているのが目に入った。

まだここは安全だと思っていたが、この階まで被害がでていることに驚いた。


「マスター、隼人がいるのはこの上でしょう。近くに人の気配はありません急ぎましょう」


確か先生がこの階の何処かにいるはずだが白夜の言う通り気配がない。

ヴァルサスの攻撃でここも無事ではすまないかもしれない。先生を探したいが僕達は急いで隼人さんの元へ向かう事にした。


向かう途中で声を上げて人が居るかを確かめる。

残念ながら階段に向かう途中で人を発見することができなかった。

この辺りのいないとなる離れている農業区画にでもいるのだろうか?

被害が少ないとはいえ無事だといいが。


気になることが1つ、あれほど響いていた攻撃音がここにきて間があいてきたように思う。

通路を走りながら周りに目をやると壁や天井に亀裂が目立つ結構ヤバイことになってきている。

直線300メートルを駆け抜け3階層に上がる階段が見えてきた。白夜と視線があうとさらに走るスピードをあげた。


階段を上がり3階層に到着するとそこは酷い有り様だ。

あちらこちらで崩落した天井の岩が落下している。

そして聞こえる戦闘をしている音。

この先は亜弥音がいる広い場所に出るはずだ。


その音に向かって走ると見覚えがある背中が見えた。

この通路に背を向けて10人程で2列の隊列を作り隼人がさんが大声で叫んでいる。


「隼人さん!」


その背中に向かい僕は叫んだ。


「!」


僕の声を聞き振り返る隼人さん。


「直斗!戻ったのか!」


緊迫したなかで隼人さんが笑顔を見せる。

黒い重武装の装備に大剣を背中に装備している。

その笑顔を見てまだ大丈夫だとその時は思った。


「これは………」


隼人さんの隣に行き戦闘をしている場所を見る。

そこには目を疑う光景が広がっていた。

真っ赤に光る目、剣と盾を構える骨の化け物。

頭は人間の頭蓋骨だが、首から下はとても人の骨とはおもえない骨格をしていた。

それが亜弥音に大量に群がっている。


「もうここはダメだ。冥骨兵が多すぎる。亜弥音が切り倒されるのも時間の問題だろう」


笑顔から一転、厳しい表情を見せる隼人さんは亜弥音に群がる冥骨兵とは別にこちらに向かってくる数体の冥骨兵を相手に戦っている味方の指揮をとる。


「隼人、引き際を誤ると全滅するぞ」


白夜に言葉に僕も頷く。

今はまだいい、ここに入り込んだ冥骨兵のほとんどは亜弥音に向かっている。

こちらに来るのはせいぜい5~7体、亜弥音に群がる冥骨兵は数えるのは面倒だが500体はいる。

それに対してこちらは13人だ。


「わかっている。だが最後の抵抗はさせてもらう」


「最後?」


その言葉に僕は首を傾げる。


「おいそこ!突っ込みすぎだ!そっち疲れが見えるから交代しろ。見ての通りだ直斗、もうここはダメだ。亜弥音が倒されたらもうここでの生活は不可能に近い。だが、ただではやられたりはしない!」


「何をするつもりですか?」


「亮と桜が戻ってきたのでここの天井を爆破するのを頼んだ。最悪のケースを考えて用意していたのだが使う事になるとはな………」


「二人は何処に?」


あそこだと隼人さんが天井を指をさすと小さく動く影が2つ見えた。

どうやって天井に張り付いているのか不思議だが器用に天井を移動している。


「………時間はどれだけあるんですか?」


「マスター?」


「下の階で茜が逃げ遅れている人を探している。その時間を考えてあと40分はもたせたい」


「戦える人はこれだけなんですか?」


「ああ。まさかヴァルサスが囮を使うとは考えなくてな、冥骨兵が洞窟に進入してきたと聞いてここの精鋭60人を連れて2階層に行ったのだが、奴は冥骨兵もろとも潰す気だったのだろ。洞窟の真上からブレスを吐きやがった。それに巻き込まれて半数が死に残りも怪我人が多くでた。その後は地獄絵図だった。連続で放たれるブレスに洞窟全体が揺れた。内部では天井や壁の崩落で死傷者がでて俺がここまで戻った時には予備隊を纏めて指示をだすのが精一杯だったよ」


その事を思い出してか隼人さんの顔が歪む。

それを見て僕は思っていた事を口にした。


「僕も時間を稼ぎます」


「………」


「やってくれるか?」


「はい。ここの人達より少しは動けると思います」


僕の前で戦っている人の動きがだいぶ鈍いまるで素人みたいだ。

恐怖を抱きながら戦っているのがまるわかりで見ていられない。

だから予備隊との言葉を耳にしてその謎も解けた。

ここで戦っている全員が戦闘経験の乏しい者達なのだろう。

基本だけは隼人さんから教えてもらった人達だ。


「すまん助かる」


「はい。僕が前に出ます。時間になったら僕に構わず爆破してください」


「?、何を言っている直斗」


「マスター!お供します」


僕の言った言葉の意味をはかりかねる隼人さんに僕は近くで戦っている冥骨兵のさらに先を見つめた。

その視線に気づいた隼人さんもそれを見る。


「なっ、流れが変わってるだと………」


隼人さんと話をしているときに気づいた。

亜弥音に向かっていた冥骨兵の内、こちらに来る冥骨兵が増えているのに。

数体から数十体に列が伸びてきている。

さすがにあの数の冥骨兵を新人では相手にはできないだろう。


ならば誰かが囮をにならなくては………。


「行くよ白夜」


「はい!」


「ちょっと待て直………斗」


僕と白夜は隼人さんの言葉を最後まで聞かずに冥骨兵に目掛けて走り出す。

後ろの方で隼人さんの声が聞こえる気がするが無視する。


「白夜、前の3体を速攻で倒す」


「左は任せて下さい」


「わかった。残りは僕が」


7体の内、4体は倒せたみたいだがそこで力尽きたように劣勢になっている味方がいる。


「そこの人!邪魔!」


「え?」


僕の大声に釣られて振り返る人がいた。


(戦闘中に振り返るなんて………)


僕達は動きの止まっている味方の間を抜けて冥骨兵に迫る。


「後退しろ。ここは僕達がやる」


「誰?」


「力を合わせた方が」


「俺もやるぞ!」


後ろ姿からはよくわからなかったが、ここに集まっているのは僕とあまり年の違わない子達だった。

何か色々と言っているがそれはすべて無視だ。

両腕に装備したガントレットの手に力をこめる。


「砕けろ!」


目の前にいる冥骨兵の顔を力一杯殴る。

ボキ!と簡単に砕ける顔の骨。

そのすぐ後ろにいる冥骨兵に首が無くなって動かなくなった冥骨兵の体を蹴り飛ばしぶち当ててやった。


重なるように倒れた2体目の顔の骨を足で踏み潰す。

すると2体の冥骨兵が霧状に消えていく。

ゾンビ達にやったように顔を狙ったが上手くいった。


「やりました!」


白夜の声がした方を見ると同じく消え去る冥骨兵。

冥骨兵が消えた床には魔石が落ちていた。


「ゾンビよりはましな魔石だな」


それを拾いポケットにしまう。

ギフトにいれたいが時間がもったいない。

あっという間に3体の冥骨兵を片付けた僕達に何も言えずにいる新人達。


「マスター、もうそこまで来ています」


新人達に何か声をかけようとしたが、白夜の警告を聞いて前を見る。

そこにはゾロゾロと歩いてくる冥骨兵がいた。


「白夜、死なない程度に暴れていいよ」


「マスターこそ死なないで下さいね。未亡人は嫌です」


ふと笑みがこぼれる。


「じゃあお互い死なない程度に頑張ろうか」


「はい!」


僕と白夜は向かってくる冥骨兵の団体に駆け出した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ