ゾンビ王国5
亮さんから聞いていた通り、復活するゾンビはいなく安全に休息をとれた。
寝ているときに外していた装備をまた装着してテントを出る。
ダンジョンに入って15時間経過している。
まだ最初に倒したゾンビが復活するのには間があるが、早めに階下に下りることを昨日話してあるので皆、準備ができていた。
「これをおりると次は鼻がきくゾンビが出てくるよ。僕が知っているのはこの下までだから注意してね」
「わかりました。ゾンビレベル2ですね」
次は匂いと音に注意が必要かと気を引き締める。
「マスター、暗闇でも見えるように魔法をかけます」
「うん。お願い白夜」
白夜もついに魔法が使えるようなになった。
昨日、スマホが震えていたのはレベルが5に上がり白夜に暗視の魔法が使えるようになっていた。
この効果は暗闇でも周りが見えるようになる。
白夜自身が持っていたスキルが他者にも使用可能になった感じだ。
これでもしもの時でも灯りを気にせずに戦えるようになった。
これを全員にかけて階下に下りる。
僕もレベルが5に上がり使える技が出ていた。
できれば魔法が良かったが無いよりもありがたい。
階段を下りると上と同じで自然の洞窟だった。
足場が悪く狭い道を歩く、先頭を行く白夜の後ろ姿がハッキリと見えるのが暗視の効果なのだろう。
(マスター、1体います)
先頭を行く白夜からの報告。
(遠慮なく殺っちゃって)
複数ゾンビがいなければ白夜の判断で戦ってもいいと言ってある。
この階まで進んだ事のある亮さんから話を聞いた範囲では問題ないだろう。
亮さんの話ではこの先が三ツ又に道が別れているらしく亮さん達は右側の道を奥まで進みそこで帰ってきたと話してくれた。
この階のゾンビレベル2の感想を亮さんは上の階層と比べて戦闘回数が多くなるぐらいでさほど上と変わらない強さだったと教えてくれた。
(マスター、三ツ又に別れる道に出ました)
先頭を行く白夜から連絡がはいる。
ここまで僕は1度もゾンビと戦闘をしていない。
先頭を行く白夜が全部倒しているからだ。
点々と転がっているゾンビを避けて三ツ又の道の前で待っている白夜に感想を聞くと。
「上の奴等と変わらないですよ。私に気づかずに殺られてましたから」
まあ白夜みたいに精霊は匂いを発しないから上と変わらず戦いやすいのだろう。
それに相変わらずここまで一本道だったし、これから先は多少は道に変化があると思うから気をつけて進まないと。
少し広い空間のある三ツ又に別れている道の前でどの道を行くかを決める。
真ん中か左側かだ。
右側は何もない事は亮さんに聞いているので外す。
「真ん中でいいのでは?」
「白夜は真ん中の道か、亮さん達は?」
「僕達はついていくだけだから任せるよ」
「うん。任せる」
単純な道だったので疲れが見えることもなく全員がまだまだ元気だ。
「二手に別れる手もありますが?」
「それはないよ白夜、ここを攻略しにきた訳ではないからね。単純にレベル上げが目的だからシンプルに行動しよう。真ん中の道に次の階段が無ければ全員で戻ればいい、まだ苦戦するほどの相手ではないみたいだしさっさと次の階へ向かおう」
「どのぐらいを目安にしてますかマスター?」
「そうだね、二桁はいきたいよね」
この階がどのくらいの広さかわらないがレベル上げには向かないみたいだ。
ここに来るまでに倒したゾンビで白夜のレベルが上がっていないところをみるとゾンビレベル2では労力の無駄のようだ。
「それでは行きますマスター」
「うん、気を付けてね」
結果的に言えばこの道が正解だった。
この階での出番を全て白夜に奪われ階段の前に着いた。
「簡単に着いたね」
「そうですね」
経験値的には外れだった、ゾンビも殆どいなく階下に降りる階段に着いた。
休憩できるほどの場所もなかったのでこのまま進むことにした。
「ここがダンジョン地下3階か」
「広いですね」
「綺麗」
「こんな場所があるなんてね。ゾンビには勿体ない」
階下に下りて目にはいったのがこの光景だった。
暗く広い空間に点々と青い光が淡く光る。
どこからか水が流れているのか所々に水が地面にたまっていてより幻想的な雰囲気をだしていた。
さて、次はどっちに進もうかと周りを見渡しても道らしい道が無い。
「マスター、どうします?」
困った顔で白夜が僕を見る。
「とりあえず比較的暗い場所を進もう。この階のゾンビがどの段階なのか見極めないといけないし。もし目が見えるならここにいるだけで危険が増す」
辺りを見渡してもゾンビがいる気配は感じないが、四方八方から襲われるのは避けたい。
「了解ですマスター。あちらに移動しましょう」
下の状態を見極めながら足場の良い所を探して移動しようとした時だった。
「済みません。お待ちを下さい子供達よ」
「誰だ!」
声のした方へと視線をやるが誰もいない?
ここにいる全員が緊張した面持ちで辺りを警戒する。
「おっと失礼しました。今姿をみせますので攻撃はなしですよ?」
敵にしては軽い口調でこちらに話しかけてくる謎の人物。
それでも正体がわからない者に警戒を解くなどできるはずがない。
「改めまして蘭丸と申します。以後、お見知りおきを」
誰もいないはずの空間から突如姿を見せた蘭丸と名乗る人物を見て、僕の足や体が震えそうになる。
白と青を基調とした昔風の羽織袴に身を包み、一見すると女性のように見える顔立ち。
長い黒髪をポニーテールみたいに束ねている。
声で男性だと判断したが、見た目だけだと男性だとは判断できない。それにゾンビにも見えなかった。
それほど綺麗な人で恐ろしい人だと感じた。
「蘭丸さん?どんな用ですか?」
できるだけ平静を保ちつつ僕は皆より一歩前に出る。
「おや?思ったより大人ですね、外見ではなく中身ですよ。それに勇気もある。貴方がリーダーですね?」
問いかけというより確認作業のようだ。
蘭丸さんの中で答えは出ているだのだろう。
見た限りでは武器を持っていないが、僕の本能が逃げろと言っているように全身に鳥肌が………。
「はい」
「うん、いい返事です。では我が主よりの言葉を伝えます」
えっ????
まさかこんな場所に人が住んでいたとはおもわなかった。
こちらの戸惑いに構わずに蘭丸さんは続ける。
「お前に興味がある。歓迎するから5階層にある我が城まで来い!………以上です」
シーンと静まりかえる。
誰も何も言えない。
蘭丸さんもこちらの言葉を待っているのか黙している。
「………………それは強制ですか?」
「はい」
恐る恐るたずねるとニッコリと笑顔で返された。
とても拒否できる雰囲気ではない。
蘭丸さんからの見えない圧力が上がった気がする。
どう答えようかと迷っていると。
「………………ウオ~!!!」
「え?」
突然叫びだした亮さんが僕の背後から前へと飛び出した。
錯乱したような奇声をあげて、腰に差していた剣を振り上げ蘭丸さんに斬りつける。
「見苦しいですね」
そう蘭丸さんが呟くと亮さんが振り下ろした剣が体に触れる寸前にその姿が消えた。
「これは愚か者の報いです。返して欲しければ我が主の元へと来なさい」
そう僕の耳元で蘭丸さんの声が聞こえた。
「あ、あ~!!!」
悲痛の声をあげ右腕を押さえて崩れ落ちる亮さんを見る。
最初はわからなかったが、よく見ると右肘から先が無い。「え?」
それは不思議な光景だった。
亮さんの無くなった右肘から流血がなかった。
「血は止めてあります。私の元まで来たら繋げてあげますよ。痛みがあるのは向かってきた罰です、私に攻撃をしたことを後悔しなさい。それでは主の元でお待ちしております………」
僕の横にいた蘭丸の気配が消えた。
「兄さん!」
痛みに叫ぶ亮さんの元へ駆け寄る桜。
「マスター」
消え去るような声で僕の左手を握りしめる白夜の手が小刻みに震えている。
僕は蘭丸が去ったことに安堵したがあの恐怖がまだ体に残っている。
だが心の隅に戦いたい衝動もあったが、恐怖心に包まれている白夜を安心させるため僕は白夜をそっと抱きしめる。体に感じた恐怖と心の隅にある戦闘衝動を払うようにお互い抱きしめあい白夜は胸に、僕は彼女の髪に顔を埋めた。




