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ゾンビ王国3

「うわ、下が全く見えないけど平気か白夜?」


「はい、今の体勢では下まで光を照らすのは無理ですマスター。もうすぐ下に到着するはずですから我慢してください」


「君達、もう少し静かに降りられないのか?」


「下で待ち構えている場合もある」


灯りを持っているのは白夜のみ、下は暗くまわりは狭い中で僕と肩車をしてやりご満悦の白夜、亮さんに桜さんの声が縦穴に静かに響く。


僕達はいま、秘密の部屋からロープを伝い縦穴を通って下に降りているさいちゅうだ。

なぜこんなことになっているのかというと、ゾンビが上がってこられないように縦穴を利用してゾンビのいるダンジョンに行くしかないからだ。


隼人さんの話では15メートルほどロープを伝い降りれば着くらしいが、運が悪いと真下にゾンビがいることもあるらしい。

だから下に到着前に確認を忘れるなと注意をうけている。


そろそろ腕が辛いのだがまだ到着しないのかと焦りがでる。

いい加減、下に着きたいなと思っていると両足にロープの感触が無くなったのに気づいた。


「お、ロープの感触が無くなった。下を確認するのでその場で待機してください」


僕の言葉に上の二人から了承の返事がかえってきた。


「白夜、頼むよ」


シーンと静まりかえる縦穴に白夜が持つ灯りが僕の体を伝い下に移動する。

白夜は器用に僕の背中を伝い下に移動、縦穴の広さは大人二人分ぐらいなので狭く、白夜が密着するとその柔らかい体が防具越しでも感じられる気がする。


「マスター、大丈夫のようです。敵はいません」


ドキドキと高鳴る心臓の音、白夜は自身の体重を感じさせない身軽さで僕の片足を手で掴み下を照らしていた。


「ありがとう白夜。そのまま降りて警戒を宜しく」


白夜の手の感触が足から消える。

その数秒後、僕はロープから手を放し下に降りる。

高さにして2メートルというところか、普通の人はジャンプしても無理な高さだが亜弥音の加護で身体能力が上がっている僕らなら余裕だ。


ダンジョンの中に灯りは無く、白夜の持つ灯りだけが頼りだ。


「亮さん、いいですよ」


いつまても下にいられないので亮さん達が降りる場所をあける。

白夜に照らされた穴の下に亮さんと桜さんが続いて降りてきた。


「じゃあ、予定通りに」


僕はギフトの収納BOXから灯りを桜さんに渡す。

この灯りは洞窟を照す亜弥音の光る芽を分けてもらい隼人さんがランプとして作ってくれた物だ。


「これを持っていけ直斗、ダンジョンの中は暗いから役に立つだろう。亜弥音の光る芽を利用した物だ、予備を入れて4個ほど持っていくといい。持ち手から魔力をちょっと流せば12時間はもつ優れものだぞ」


そのうち1つを僕達、もう1つを亮さん達が持つことに決めていた。

サポート役の亮さん達は基本戦闘はしないが後ろの警戒は引く受けてくれた。


「じゃあ、行きましょう。白夜、先頭をお願い」


斥候を兼ねて白夜が僕達の先頭を行く。

闇の精霊だけあって動く姿に迷いがない。

ダンジョンの中は冷たく寒い、防寒着が必要だと骨身にしみる。

しかし、白夜の格好は僕らとは違った。


「白夜、寒くないの?」


白い息が出るほど寒くはないが白夜の服は上にいたときと同じ、黒の洋服にスカートと見ている方が寒くなる感じがする。


「はい!まったく寒くはないですよ。精霊に暑さ寒さは関係ありませんから。それに人の作った防具も装備できませんし、自らのレベルが上がった時に出現するのを待つしかないです」


そう言うと白夜はいま装備している僕と同じようなガントレットを見せる。

白夜のレベルは精霊進化2のレベル1になっている。

どうやら進化するとレベルが1からになるみたいだ。

それでも前に着ていた着物が残っていことから何かしらの恩恵はあるようだが。


「ならいいけど、とりあえず一本道のようだし進もうか」


ゴツゴツした岩肌が剥き出しのダンジョンだ。

高さが2メートルほど、幅が3メートル位で二人並んで戦うのが精一杯だろう。

僕も白夜も素手で戦うのが基本だからまだ余裕があるが、剣や槍を使う人は苦しいと思う。


斥候の役目も担っている白夜が先に進むためにいま灯りは桜さんが照らしてくれていた。


「桜さん達はここに来たことがあるんですか?」


「うん。それに敬語禁止、さんはいらない。桜でいい」


「ふふ、桜は君が気に入ったようだ。僕達は去年ここに来たよ。隼人さんに連れられてね」


「へえ、どこまで潜ったんですか?」


「どこまでというか、一週間ほどで戻ったよ。訓練期間が終わり初戦闘だったからね桜が、だから無理はしない程度だった。それ以来だから約一年ぶりかな」


「因みに兄は3年前にここに入り2階層までいった………と聞いた」


「へえ、やっぱり何階層かあるんですね」


道はいまだに一本道だ。

白夜の持つ灯りが遠くに見える。

僕達はゆっくりとだが、桜の持つ灯りを頼りに整備されていない道を進む。

話を聞いていると2階層まではたいして強いゾンビはいないらしい。

初心者の桜でも数をこなしていくうちに楽に倒せたとのこと。


そうそう、隼人さんにも言われたがゾンビの額には魔石が埋まっているらしく、もし見つけたら回収してほしいと頼まれた。


この日本は卑弥呼のせいで魔力が満ちる世界になってしまった。

ほとんど消費しない魔力がゾンビになんらかの影響をあらわしたのではないかと言っていた。


その魔石をなに使うかと問えば疑似魔法結晶として使うらしい。

ようするに起爆剤として魔法の力が乏しい人が利用する。

透明で大きいほど利用価値があり、最大で人間の瞳ほどの大きさになると説明してくれた。


魔法を籠めることができないのかと聞いたけど無理だと言われた。

その魔法を魔石の中にとどめる技術を誰も持っていないので不可能らしい。


「マスターいました。近いです」


いつの間にか白夜が戻ってきていた。

白夜が見つめる先に神経を向ける。


ジャリ、ジャリ


耳を澄ますと一定のリズムでこちらに来る音がする。

その位置ならばこちらの灯りが見えていてもいいのだが襲ってはこない。


「亮さん達は下がって、灯りに反応しない所をみるとゾンビレベル1でしょう。呼ぶまで待機していて下さい」


小声で亮さん達に指示をだし前を向く。

音にしか反応しないのを最低レベルとして最大が思考力を持つものとした。

そこまでのゾンビはいないだろうと皆が口々に言ったが、ゾンビキングなんて存在がいる可能性があるならと押し通した。


僕と白夜はその場で待機、だんだんとゾンビが近づく音がハッキリと聞こえてきた。

白夜が灯りを前に照すと大人の男性だろうか大きめな輪郭が見えた。


(僕が殺る。白夜はゾンビの後方を警戒して)


(はい、マスター)


白夜とは魔力で繋がっているので声をだす必要もなく意志の疎通ができる、僕の指示に頷いて側を離れる白夜。

すでに目の前に黒髪の大人の男性のゾンビがいる。


白夜は端により僕がゾンビを倒しやすいように灯りだけを照らしてくれる。


(いま!)


僕は音もなく立ち上がり右拳に力を籠める。

もうすぐ手を伸ばせば届く位の距離だ。

目の前のゾンビは人間の姿をとどめていた。

腐っている箇所も少なく臭いもしない。

これはこのダンジョンの寒さのせいだろう、瞳の色はなく口をだらしなく開けてただ歩いてくる。


僕は隼人さんの助言を思いだしゾンビの眉間の辺りに狙いを定め右拳を振り抜いた。

狙いは頭の中だ。


バシュ!


狙い通りに僕の拳はゾンビの眉間に当たった。

その瞬間、ゾンビの目や耳それに鼻からと黒っぽい血が噴き出した。


ドサ!


足から崩れ落ちたゾンビが動かなくなった。


(うん。これでいいのか)


僕は右拳を見つめ手応えをえる。


「マスター、後続はありません」


「わかった。そのまま警戒を宜しく」


白夜に警戒を頼み亮さん達を呼ぶ。


「これの頭の中に魔石があるんですよね?」


「そうだよ、見てて」


そう言うと亮さんは剣を抜いてゾンビの頭を割った。


(うわ!結構グロい)


桜が灯りを照らしゾンビの頭から流れ出るものを掻き出しながら亮さんが小さくて黒く濁った石を僕に見せてくれた。


「これが魔石だ。小さいし濁りが酷いから役にはたたないけどね」


小指の爪の半分に満たないぐらいの魔石を僕の手に乗せる。


「魔石を集めるのは任せてゾンビを狩って」


ジーと見ていた僕の下から桜が話しかける。


「そうだね、それがこっちの仕事だから気にせずに倒していってくれ」


桜の言葉に頷く亮さんは僕の肩を叩き気軽に言った。

その言葉に頷いて僕は魔石をギフトに入れて白夜のいる方へと進む。


「白夜、行って」


僕の声に反応した白夜が灯りを大きく動かし了承の意を伝えると前へと進んでいった。

その姿を見送り僕達のゾンビダンジョンの探索が始まった。

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