ゾンビ王国2
「直斗の装備か………面倒だな。防具は皮系にするしかないか、まだレベルが低いから最低ランクしか着れないしな。問題は武器だな、ゾンビに素手で立ち向かうのだろ?なんかあったかな?」
最下層の武器庫にいた隼人さんの元に向かうとそんな事を言われた。
確かにレベルが低いし剣とか使えないし………………確かに面倒くさい存在だな僕は。
ここにある装備品は異世界で見たどこにでもあるような安物の武器が多い。
最高級の武器や防具は別の場所に補完してあり、長年集められた成果らしく誰にでも装備できる訳ではないので別にしてあるらしい。
ここは初心者用の装備品が集まっていて他にもレベルが上がれば中級、上級者用の武器庫に連れていってやるよと笑いながら隼人さんは言った。
それにしても笑顔で迎えてくれた隼人さんに大人の余裕を感じた。
両者ダブルノックダウンだったとはいえ、最低レベルの僕に倒されたことで変なわだかまりがあると思っていたけどそんな事はなく普通に接してくれている。
「マスター、どれを取り込みますか?」
僕のスマホを持った白夜が隼人さんの選んだ防具を装備品に登録しようとしていた。
ここに来て最初に渡されたのが僕のギフトだった。
「おう直斗、お前のギフトを預かっていたんだ。流石に中身は弄れないが亜弥音の力をわけて貰ったから暇があれば確かめるといい」
そう言ってギフトを返す隼人さんに緊張した面持ちで受け取ったが、隼人さんの含みのない笑顔を見て肩の力が抜けた。
「はい、ありがとうございます。それでゾンビのダンジョンにはなにが必要ですか?」
「そうだな、ダンジョンの中は寒いから厚着をした方がいい。それと亜弥音の力は届かないから灯りが必要だ。あと回復系のアイテムと食料だな。後は奴等は基本的に頭を潰さないと倒せない。理由は知らんが頭の中になにかがあるらしい。だから力で潰すか魔法を使うか浄化するかだな」
指折り数えて説明をしてくれる隼人さんの言葉を聞き逃さないようする。
そんな僕達を余所に白夜はひとり武器を漁っていた。
「アッ、やっぱり噛まれるとゾンビになるんですか?」
「いやいや、生きている内はゾンビにならんが噛まれた場所から肉が腐りはじめる。噛まれた場所の肉を削ぎおとしてから治療することが必要だ。だから体を守る為に丈夫な長袖服に鉄板入り靴はいるな」
「鉄板入り靴ですか?」
「そうだ、以外に役にたつぞ。剣で突くより踏み潰した方が早いので次の体勢に移りやすい」
「なるほど」
結構重要な事を教えてもらっているので、スマホのメモ帳を使い記入しておく。
「そうだ!安全地帯はあるんですか?」
ここが一番重要だ。
休みなく動けるはずもなく、休息場所がなければ奥まで進めない。
「おお!そうだった。流石にお前達だけでは無理だからこちらで二人サポートに付けるぞ」
「えっ?」
「おい!部屋に入ってこい、直斗に紹介する」
後ろのドアに大声で呼び掛ける隼人さん。
するとドアから二人の男女が現れる。
「遅いですよ隼人さん。待ちくたびれました」
「ほんと、最低」
「すまんすまん。直斗、こいつらがお前をサポートする二人だ」
「金田 亮です。よろしく」
「妹の桜」
「あっ、はい。光羽 直斗です。あっちにいるのが守護精霊の白夜です。よろしくお願いします」
隼人さんに紹介された兄妹、亮さんに桜さん。
亮さんは18歳で身長が高くやせ型で黒髪、長めの髪で昔見たホストという職業の人みたいにイケメンだ。
妹さんの桜さんは15歳で身長は低く白夜よりやや高いくらい。
白夜が150㎝ぐらいだから156㎝ぐらいだろう。
ちなみに亮さんは180㎝はありそうだ。
桜さんは話をするのが苦手なのかほとんど喋らない。必要な事だけを話す感じで仲良くなれるか不安があるが可愛らしい顔立ちに眠そうな目、肩より少し長い黒髪。
流石は兄妹だけあってよく似ている。
だが、それよりも気になるのは二人共に病的に見える白い肌だ。
マジマジと見ていた僕の視線に気づき亮さんが僕の視線から桜さんを隠した。
「妹に手をだしたからダメだよ」
顔は笑っているが目が笑っていない、もしかしてと先生が言った事が脳裏に過る。
近親婚か………この二人もそうなのだろうか、ここではもうそれが普通か…………、気持ち悪いとは思わないのはあの世界で育ったせいだろうか、一般的道徳など習っていない、力こそが全ての卑弥呼の世界で生きてきたと思うと僕もかなり歪んだ性格になっているのだろうと初めて意識した。
「すみません、初対面の人に不躾な視線を向けました」
「私は気にしていない」
亮さんの後ろから桜さんの声だけが聞こえた。
「光羽君、僕達が君をサポートするよ。戦闘は任せるから安心して休息するといい」
「安心しろ、この二人なら大丈夫だ。若いが腕は良いからな」
隼人さんのお墨付きもあるので二人に任せることにした。
僕と白夜だけでは手が足りたいのも事実だからだ。
「こちらこそ宜しくお願いします。僕の事は直斗と呼んでください」
「そうかい、直斗くん宜しくな。俺達のことも名前で呼んでくれていいよ」
「直斗、任せる」
ここで二人とはいったん別れた。
彼等もダンジョンに潜るための準備をしてもらうためだ。
まずは顔合わせをして確めたらしい。
相性とかあるからなと隼人さんは言った。
結構、気を使われていた。
確かに嫌な相手とダンジョンには潜りたくはないので素直に隼人さんにお礼を言う。
亮さん達の会話が終わるまで近くで待っていた白夜が持ってきた防具を選ぶ前に今は着る服から選ぶことにしよう。
厚手のズボンに鉄板入りの靴、防刃シャツに耐久力と寒さに強い服を選ぶ。
その上から着れる皮の防具を選びギフトに登録。
着替えように数枚同じ服やズボンに下着をギフトに入れる。
枚数が少ないがどこかで洗濯とかできるのだろうか?
返してもらったギフトは亜弥音の恩恵なのか、ギフトの中にしまえる容量が格段に上がっていた。
僕の他にも先生に隼人さんにミナホは同じ恩恵を受けているらしい。
異世界に行ける人にはその恩恵が与えられるとのことだった。
これにより食料も大量に持っていけるようになった。
以前なら纏めて1つにしないと複数を持っていけなかったがそれが解消している。
とっ言ってもここの食料事情から余っている作物に限られるが。
食物系は亜弥音の恩恵で大豊作のため、持っていくものの多くは米に小麦粉、野菜に調味料と少量の肉をギフトに保存する。
ギフトの中に入っている限り時間が経過しないので腐らせる心配がないのがありがたい。
その他、キャンプ道具と寝袋、各回復薬をわけてもらいギフトにしまう。
もちろんあの二人の分も一緒だ。
「さて、問題は直斗の武器だな」
一通り準備が終わったのをみて隼人さんが残りの問題を口にした。
「マスター、あのガントレットは出せますか?」
あの、というと向こうで使っていたリボルバーガントレットのことだろう。
黒色のガントレット、手首と肘の真ん中ぐらいに回転式拳銃のシリンダの用な物がついていた不思議なガントレット、そこに弾丸ではなく魔法結晶を入れて僕は魔法を使っていた。
使うときはハンマー式で打ち出すのではなく、僕の意思で選んで使えたように思う。
はたしてアレは存在すのかなと僕はギフトのステータス画面を見る。
「あるね」
そこにはガントレットと先ほど選んだ防具が装備されている状態になっていた。
だが向こうで持っていた金も魔法結晶も無くなっている。
それでもガントレットがあって良かったと思う。
久しぶりにガントレットを装備してみると、全く変わっていない姿と一体感があって安心する。
「それだけだと不安だな、他に武器は使えないのか?」
確かに大体の人はこれを防具だと認識するだろう。
だが、僕は知っているこれが普通じゃないことを。
あの世界であれだけ酷使したのにこの黒色のガントレットには傷ひとつついていない。
「大丈夫ですよ、これで戦えます」
「………そうか」
いまいち納得できない表情をする隼人さん。
それでも本人が大丈夫だと言っているので納得してもらうしかない。
「そんなに不安なら魔法結晶がほしいのですが?」
「魔法結晶だと?」
「ええ」
「マスター、ここに魔法結晶は置いてないようですよ」
持ってきた防具を片付けていた白夜が側にきて部屋を見渡して言った。
「じゃあ他の場所に在るのかな?」
確かに白夜が言う通り、この部屋には無さそうだ。
初級装備が置いてあるこの部屋での管理が難しいのだろう。
武器や防具の部屋が幾つかあるのなら魔法道具が置いてある部屋もどこかにあるはずだと思い期待を込めて隼人さんを見ると。
「済まない、魔法結晶は渡せない」
見つめる僕の視線に耐えきれなくなってのか隼人さんが顔をそらす。
「?」
「渡せないとはどう言う意味ですか!」
理由がわからず黙っている僕に白夜が隼人さんにかみつく。
「ああ、アレはここの防衛のために必要なんだ。直斗も知っているとおもうがここにいる人間は俺達ほど強くない、いくら鍛えているといっても限界があるんだ。だから僅かな魔力しかないここの人間にアレは絶対に必要なんだ」
渋い顔で言う隼人さんの顔を見て納得した。
「そうですか………ならしょうがないですね。それならあの二人を僕のサポートに付けて良かったんでんすか?」
敵意まるだしの白夜の頭を撫でて落ち着かせてやりつつ僕は隼人さんにたずねた。
「ああ、それなら問題ない。彼等はあの歳でそれなりの腕をもっているが替えがきく」
「替えがきく?」
ピクリと自分の表情が強張るの感じた。
「そうだ。お前達にもしものことがあっても大丈夫なようにな」
僕と隼人さんの視線が真っ向からまじわる。
どれだけの時間が経過したかわからないが隼人さんは目をそらさずにいた。
「わかりました。それだけ本気なんですね」
隼人さんの本気を感じとり僕は視線を外す。
替えがきくと言うがここの戦力を二人も割いてくれる、防御も担当の隼人さんがそれを知らないはずがない。
僕にそれだけの価値があるかわからないが、できるだけの事をしようと思った。
とりあえず、装備が揃ったのでこの部屋を出た。
あの兄妹もすでに準備を終えていて部屋の外で待っていた。
兄の亮さんは前衛らしく剣を腰に差している。
桜さんは腰に何本も投擲ナイフを下げていた。
「亮さんは剣で桜さんは投擲ナイフですか?」
「ああ、心配はいらなよ。自分の身は自分で守れるから直斗くんは気にせずに進んでくれ」
「ん、平気」
少し顔にでてたかな?
それでも二人は気にした様子もない。
まあ初心者が心配する事が失礼だったかと反省した。
これで必要な道具や食料も揃いギフトに入れてある。
3ヶ月は平気で潜れるほどの量だ。
もちろん節約をしてが前提にあるけどね。
「じゃあ、行きますか」
隼人さんを先頭に僕達はゾンビが大量にいるダンジョンの入り口へと向かった。




