ゴブリン
ずいぶんとカヤと話し込んだ直斗達は、空腹でお腹が鳴ったのを合図に話を切り上げて食事の支度を始める。
霞を食べている訳ではないので、カヤも直斗達と一緒の物を食べると宣言した。
「久し振りに人間の食事を頂けるとはありがたいよ。食事なんてとらなくても存在できるけど、詫びしんだよね」
魅沙が食事の準備をしているのを後ろから見て直斗に語る。
「じゃあ、普段は何も食べないの?」
「食べない事はないよ。この山で果物や肉を採って、年に1度は食い溜めしてるしね。エヘヘ」
チョコンと床に座っているカヤがはにかむ。
「何か冬眠前の熊さんみたいですね?」
「なっ、そこまで大喰らいではないぞ。慎ましいほどの量だ」
「フフフ、そうですよね。少し多目に作ったのでカヤさんもどうぞ」
「おお、それはありがたい。人間の料理は美味しいからの」
目の前に出された魅沙の料理に目を輝かせながらカヤは料理をつまむ。
直斗も魅沙にお礼をいって、同じように食べ始めた。
「うん、美味しい」
「確かに、魅沙は料理が上手いな」
「エヘヘ、ありがとう。簡単な物だけど召し上がれ」
3人で食後、後片付けをして就寝。
小屋の守りはカヤが引き受けてくれたので直斗と魅沙は奥で休む。
睡眠が必要ないと言うカヤは小屋の隅でくつろいでいた。
「カヤさん、お休みなさい」
寝付きのよい魅沙はそう言うとスーと寝息をたてる。
その横で直斗は横になりカヤを見る。
「ん、気になるか?」
「………まぁね」
「疑り深いの良いことだ。生き残る確率をあげるからね。ならサービスで白夜と話をさせてやろうか?」
「えっ?………どうやって」
ふふん、と笑顔で直斗を見つめるカヤは夢の中で話をさせてあげると直斗に言った。
「夢の中ですか?」
「直斗にも分かるように白夜と繋げるには夢の中が丁度いいんだよ。お互い無理をしなくていいしね」
「………わかりました。カヤさん、お願いします」
「ん、引き受けるよ。直斗、お休み。白夜に宜しくね」
手を振るカヤを見ていたら、眠くなってきた。
瞼が閉じていく、直斗は自然に任せて眠りに落ちていった。
「………白夜!」
パチ!と目が覚める。
「………びっくりしました。悪い夢でも見たんですか?」
「………………」
「ふふ、どうやら白夜と話せたようだね」
ボー然としている直斗にカヤが覗きこむ。
「………確かに話したけど、姿が見えなかった」
上半身を起こしカヤを見る。
「それはそうだよ。姿が確立していないんだから、白夜は進化しようとしてるんだからさ」
「………ああ。そういう事ですか」
「どういう事です?」
「白夜は強くなろうとしている。まだ形が固まっていない卵の中の雛のような存在なんだと思う。だから声だけだったんだ」
「………よくわかりませんけど、話せて良かったですか?」
魅沙の問いかけに直斗は頷いた。
「それは良かったです。朝ごはんの用意をしますので起きてくださいね」
そう言うと魅沙は離れていった。
「どうだ、私の事を少しは信じたか?」
「ああ、白夜がカヤに余計な事はするなって、それと僕に手を出したら旦那にチクるって言ってたよ」
「なあ!手なんかだすか!白夜の手垢の付いた男なんてこっちから願い下げだよ!」
神秘的な顔立ちのカヤにここまで言われるとマジで凹む直斗。
白夜の言葉を伝えただけなのだか、カヤは目の前に居る直斗に喰ってかかる。
「カヤさんは何を怒ってるんですか?」
朝食を運んで来た魅沙は顔を赤くして直斗に怒っているカヤを見て不思議そうに聞く。
「えっ?………………なんでだろ?」
魅沙の言葉で冷静になったカヤは首を傾げて直斗を見る。
「………白夜のせいだろ」
「………そだね。今度会ったらゆっくりと話をつけてやるから覚悟してね!」
ビシ!と直斗のスマホに指をさすカヤ、直斗はその時は加勢するぞと言ってカヤと握手をした。
魅沙の作った朝食を食べて次の休憩小屋を目指して山を登る。
山頂手前に休憩小屋があるとの事なので、そこを目指して出発した。
「この山って魔物が出るって聞いたんだけど、どうなの?」
「あぁ、出るよ。でも子竜の餌にしかならない連中だから気にしなくてもいいよ」
「因みにどんな魔物が出るのカヤさん」
「そうだね、定番の熊や狼は当然いるよ。でも一番多いのはゴブリンかな」
「へ?………いるのゴブリン」
「いるよ魅沙、魔物じゃなくて亜人だけどね。この山で立派に生活をしてるよ」
「なんでゴブリンが?」
「?、変な事を聞くね直斗は。子竜の戦闘経験を積ますのに丁度いいじゃないか。奴らはそこそこの攻撃力とジャンジャン増える繁殖力で子竜の餌になってもらっているんだよ」
「………なぁカヤ」
「なんだい直斗」
「そのゴブリン達は子竜に追われて町に下りて行かないのか?」
「ああ、行くね」
「ええ!それはちょっと酷いんじゃあ」
さらりと言ったカヤの一言に魅沙が驚きの声をあげた。
「それも昔の話だよ。今は冒険者達がいるから上に行っても、下に行っても殺られるだけさ」
「それはそれで………………」
カラカラと笑うカヤにちょっと引く魅沙。
「なら奴らは今はどの辺りに居るの?」
そんな二人を見ていた直斗は疑問に思った事をカヤに聞いた。
「泊まった小屋と上の小屋の間ぐらいかな。昨日も偵察に来ていたしね」
「「!!」」
新事実に直斗と魅沙はビク!として辺りを警戒する。
「そんなに警戒しなくても大丈夫よ。私が居るから守ってあげる」
パチとウィンクをするカヤを見て魅沙の頬が赤くなる。
直斗は胡散臭い顔でカヤを見ていると前方に黒い一団が見えた。
「!、あれって………まさか」
「ん………………ああ、ゴブリンじゃん。6匹かぁ、私一人でも大丈夫だけど直斗も殺る?」
挑発的な笑みを見せるカヤに直斗は頷いた。
「そう!やっぱり白夜のご主人様だね。魅沙は後ろで見ていて、パッと片付けてくるから」
ゴブリン達を見据えながら、いつの間にかカヤの手には氷の鞭が握られていた。
「それがカヤの武器?」
「そうだよ。調教するにはコレが一番いい!」
フフフと楽しそうに笑うカヤの姿は、子供の姿ながら確かに白夜より大人ぽく見えた。
「魅沙さんは周りを警戒して、僕とカヤさんで相手をする」
「はい。直斗さんお気をつけて」
直斗達を見つけ、奇声をあげながら突進してくるゴブリン達に直斗とカヤは迎え撃つべく前に出る。
「直斗、先制は任せなさい。奴等が止まったら飛び込みなさい」
「わかった」
6匹が一団となって向かってくる。
その先頭のゴブリンにカヤが鞭を振るう。
バシン!バシン!パシ!
ゴブリンの先頭の2匹が後ろに飛ばされ、もう1匹が顔を押さえてその場に立ち止まると後ろにいたゴブリンを巻き込んで動きが止まった。
「行きなさい直斗!」
カヤが叫ぶより早く、直斗は前に出た。
いつもの黒いガントレットを装備した直斗はゴブリンの一団の中に入ると片っ端しから殴りつける。
ギャ!グッギヤワ!
魔物の皮の鎧と木の棒しか持っていないゴブリン達は、直斗に殴られると次々と意識を無くしていく。
「なんだ、ヤッパリ強いじゃない。最後の1匹は私が貰うからね」
ヒュ!と空気が鳴る音がしたと思ったら、棒立ちに立っているゴブリンの首にカヤの氷の鞭が巻き付いた。
グガ!
首を締め付けられているゴブリンは必死に鞭を取ろうともがくが、首に食い込んだ鞭は取れるはずもなくゴブリンの息の根を止めた。
「ほい!コレで終わり」
直斗が倒したゴブリンをカヤは鞭を巻き付け、山道から投げ捨てていく。
その際にキッチリと止めを刺しているのを見て直斗は感心した。
「逆に手間をかけさせたかな?」
「アハハ、こんなの手間でも何でもないよ。巻いて投げるだけの簡単な仕事さ」
見かけは可愛い子供だが、やることはエグいカヤのギャップに直斗は改めてこわさを感じた。
辺りを見渡し、隠れているゴブリンがいないかを確かめてから先に進む。
魅沙がカヤの戦い方に興奮して、話しかけているのを 聞きながら奇襲されないよに用心をして歩きだした。




