白夜の姉 カヤ
アーミル山に入り、道なき道を魅沙と共に進むと思っていたのだが………………。
「道が整備されてますよ?」
「うん………そうだね」
団体でも通れる程の広さ、壁のよう両脇に積んである雪。
アーミル山に登ると告げ買ったのだが、そこ店の主人が笑いながら道具を積めていた理由がこれか!と今さらながらに思った。
「………行こうか」
それに頷いた魅沙が直斗の後に続く。
道は蛇行しながら上へと続いている。
「結構高い山ですよね、3日で山頂までいけるんですか?」
「案内だと行けるらしいよ」
昨日、調べた事を思い出しながら魅沙に答える。
山道が整備されているとはいえ、積雪を踏みしめながら歩く。
魔物がいるなら雪壁の上から襲ってくるだろうと思い、頭上を注意しながら進んでいくと左右に道が別れている。
「どっちですかね?」
魅沙が直斗を覗きこむ様に聞いてくるが、流石に直斗にもわからなかった。
「分かれ道なんて言ってなかったけど?」
そう魅沙に答えながら直斗は分かれ道をじっくりと観察する。
右は今までと同じで広い山道で、左は二人が通れるぐらいの道だ。
「とりあえず右の広い山道を行こう」
「そうですよね、行くなら広い方ですよね」
二人は頷き広い山道を進んでいく。
進んでいくと、さっきより一人分だけ広い道とに分かれた場所に出る。
「何なんですかね?」
「さぁ?変な道に入らずこの道を行こう」
「そうですね」
怪しい道には行かずにこれまでと同じ様な道を行く。
ズンズンと進んでいくと最初の休憩小屋の屋根が木々の間から見えてきた。
「おっ!あれだね。あと一時間ぐらいかな?」
「そうですね。もうすぐです。頑張りましょう」
慣れない雪の山道をあるき、少し息が上がっているが目標物が見えると気力がわいてくる。
昼前に山に入り四時間、職員さんが言ったように暗くなる前に小屋に着きそうだった。
しばらく進むと休憩小屋全体の姿が見えてきた。
「今日はあそこで一夜を明かそう」
「ええ、流石に疲れました。………………ん?」
「どうしたの魅沙さん?」休憩小屋の前を目を細めて見つめている魅沙に直斗は声をかける。
「子供?………直斗さん。休憩小屋の前に子供がいますよ?」
「へ?」
そう言われて直斗も休憩小屋の前を見る。
確かに魅沙が言うように小さい子供のような姿が見える。
直斗達を待っているようにたたずんている姿に直斗達は足を早めて休憩小屋に向かった。
雪は降っていないので、近づくとその姿がはっきりとわかる。
白い毛皮の帽子に白く長い髪。
白の外套を羽織、赤い長靴をはいている女の子。
「何処の子ですかね?」
「可愛いらしい子だけど………人ではないかも?」
「え?………………そんなんですか?」
ビックリとした顔をする魅沙に直斗は自信が無さそうに頷く。
「待ってたよー!」
こちらに手を振る少女が直斗に向かい叫んでいる。
「待ってたそうですよ?」
「………そうみたいだね。………行こうか」
手を振る少女に近づいていく直斗達、ニコニコと笑顔でいる少女の前に来て直斗はとりあえず名前を聞く。
「私か?私はカヤ。歓迎するぞ直斗」
「………僕の名前を知っているの?」
出会った覚えは無いはずなのにと首を捻る直斗。
「もちろんだ、白夜から話は聞いているよ」
「え!………白夜と知り合い?」
突然のことに驚きを隠せない直斗と魅沙。
「知り合いというか、姉だ」
「はあ!………姉ですか?」
「………カヤさんって、精霊さんですか?」
「そんなものかな。半精霊だよ、白夜とは直斗のギフトに憑くまで一緒に生活をしていた」
「………生活?ですか」
「そうだよ。16年前になるかな、白夜は突然、思い付いたように召喚に応じた。この世界に力のある精霊は少なくなった。皆、君たちの持つギフトに召喚されてね」
「では、白夜はここが故郷なんですか?」
「いいや、私と白夜はこの世界とは違う場所にいたよ」
「ええ!そうなんですか?じゃあ、カヤさんはどうしてここに?」
魅沙は当然の疑問を口にする。
「私か、私はこの山に呼ばれたんだよ。この山を守る為にね」
「守る………ここは霊山なんですか?」
直斗の言葉にニッコリとカヤは頷いた。
いつまでも外では寒かろうとカヤは休憩小屋に直斗達を案内する。
小屋の中は温かく、前もってカヤが準備をしていてくれたようだ。
冷えた体を小屋の暖炉で温めている間に続きを話す。
「だから、直斗達がこの山に入ったのは直ぐにわかったよ。白夜とは今も通じているからね」
「通じてる?」
「そう、この世界に何度か来たよね。その時にここから白夜と話をしたんだよ。白夜とは姉妹の契りを結んでいるから出来た事だけどね」
「その姉妹の契りって何ですか?」
暖炉の炎に手をかざしながら魅沙が聞く。
「この世界に上位の精霊や神に近い存在がだいぶ居なくなったんだよね。だから少しでも力を増すように他精霊と力を共有するんだよ、そうしないと存在が消えちゃうからさ」
そう言うと「ハハ」と力なく笑うカヤ。
カヤの説明で白夜と関係があるのはわかったが何故、直斗を待っていたかが謎だ。
「それで、カヤさんは何故ここに?」
「ハハハ、カヤでいいよ直斗。白夜の主人なんだろ遠慮はなしだ」
「はぁ、それで?」
「ん、ああ!ここにいる理由だね。それは勿論、直斗の力になるためだよ」
「………力ですか?」
「そうだよ。あの子、目覚めないんだろ?」
知ってるんだよ、という目で直斗を見るカヤ。
「………はい」
「カヤさんは白夜ちゃんが目覚める方法を知っているの?」
「カヤでいいよ、魅沙。白夜は今、目覚めたくても目覚められないんだよ」
「?、どういう事ですか?」
「いま、目覚めちゃったら今までと同じだからさ。もつ一段階、強くなるには力を貯めないとね」
「………じゃあ白夜はその為に目覚めないと?」
「そういう事だよ。白夜の最後は知らないけど、直斗を守るために全てを捧げたはずだ………違うかい?」
カヤの言葉に直斗は素直に頷いた。
「フッ、白夜らしいね。だからお姉ちゃんが力を貸すのさ。直斗は氷薔薇を取りに行くんだろ?」
「ええ。なんでも精霊の力が増すとか?」
「そうだけど氷薔薇だけではダメだよ」
「カヤさん、どういう事ですか?」
「氷薔薇は力を回復するだけだ。さらに進化させるには山頂にいる子竜の涙が要るんだよ」
「えっ?………子竜がいるんですか?」
そんな話は聞いていないと驚く直斗と魅沙。
「うん。要るよ!だって私が呼ばれた訳はその子竜のお守りだもの」
「「えっ!!」」
「そんな驚かなくてもいいだろ?精霊付の山なんてそんなもんだよ」
そんなもんと言われると納得してしまいそうになってしまう直斗。
げんにその精霊のカヤが言っているのだから嘘ではないだろう。
だとするとその子竜はと聞きたくなる。
「ん、その顔は子竜の事を聞きたい顔だね。あの子は闇竜だよ。でなければ、白夜を進化させられないだろ」
それぐらい分かれと不満顔のカヤに済みませんと頭を下げる直斗。
魅沙はお守りをしているなら、私達が泣かせもいいんですかとカヤに問う。
「構わないよ。あいつ、最近生意気になってきてるから丁度いいよ。ガツンとやっちゃって」
と言って笑うカヤを微妙な表情で見つめる直斗。
「と、言うわけで私も直斗に着いていってあげるから宜しくね」
この強引さは白夜に通じるものがあると、改めて思い知った直斗は魅沙と共にため息を吐いた。




