アーミル山へ
冒険者ギルドから話がきていたのか、すんなりと宿に泊まることができた。
各部屋にお風呂が付いていていて、女性陣にはたいへん好評だった。
「いいじゃない。気に入ったわ」
「暖炉ですね。火の番はお任せください」
「料理は別料金で注文するみたいですよ」
「………このサツマイモは何でしょう?」
「自由に食べていいみたいね」
「………焼き芋ですね!」
「いいです。それ!」
もはや旅なれた氷依達はてきぱきと部屋を物色して、自分達が使いやすい用にしていく。
「じゃあ、食事後に集まろか?」
「わかったわ、食べ終わったら呼びに行くから」
全員分の食事を注文して直斗は部屋に戻る。
違う種類の一人用の鍋を氷依達は頼み、直斗は魚三昧定食を注文する。
ここにも日本の文化が入っている事に多少は驚いたが、逆に安心感も得る。
注文した料理が運ばれてきたのを見て直斗はそれが正しかったと知る。
(うまい。癖もなく美味しく仕上がっている。刺身なんてよく受け入れられたな?)
幾つかの国を巡りわかったことたが、どの国にも日本料理に近い工夫がそれていた。
その国独自の味を残しながら工夫されていた料理を思いだし感激する。
聖日本帝国から失われつつある日本料理がここにあった。
上位の階級を持つ者しか食べられない日本料理をここで味わう事が出来て直斗は改めて日本料理の素晴らしさを確認した。
やはり食は重要だなと、しみじみ思っているとドアをノックする音が部屋に響く。
「はい」
「直斗様、花です。20分後に部屋に来てください」
ドアの向こうで花さんが直斗に話す。
それに了承して残っている食事を片付けた。
時間になり氷依達の部屋に向かった。
食事に満足したのか皆、機嫌がよさそうだ。
氷依達の部屋でこれからの事を話し合う。
「皆揃ったわね。じゃあこれからの事を決めましょうか」
「緊急依頼と氷薔薇の事ですよね?」
「そうよ。直斗には氷薔薇を取りに行ってもらうわ」
「はぁ!何で?依頼を終わらせてからでもいいよ?」
「それなんだけど。今回は期限とかないし、取っただけ送ればいいから全員で動く必要もないのよ」
「それでも、個人的な理由で離れるのは………………」
理由はわかったが、納得がいかない顔で氷依を見る直斗。
他の皆も二人のやり取りを静かに見守る。
「いいんじゃない、白夜が居れば私達も安心して背中を任せられるわ。その為の別行動よ、だから直斗はそれを優先してほしいのよ」
「………………」
「そうですよ、こっちは任せてください!」
「………えっとね、魅沙も直斗に着いていってほしいのだけど?」
「はあ?」
「だから直斗と共に山に登ってほしいのよ」
「………私が着いていっていいんですか?」
「ええ、私からもお願いします魅沙様」
「花さん」
「魅沙様なら直斗様の身を守れるでしょう。ですからこの中で一番適任者なのです」
いつの間にか魅沙の同行が決まっていく。
彼女等の中でどんどんと事が進んでいき、直斗が口を挟む隙もない。
「じゃあ、それでいいわね?」
魅沙が頷くのを見て満足そうに氷依も頷く。
「直斗もいいわね?」
いまさら反対をする気もないので直斗も頷いた。
全ては明日からの事となり今日は解散、どのような感じで船に乗り漁をするのかは冒険者ギルドからの連絡を待って決める事になった。
部屋に戻り薪をくべる。
後は寝るだけなので、スマホでアーミル山の情報を調べる。
基本自由に山に入る事が出来る、もちろん魔物が棲んでいるので一人では登らないようにと記載があった。
山頂まで2日~3日、間に休憩小屋が2ヶ所もあるらしい。
人はいないが、寝泊まりも出来るので重宝しそうだ。
目的の氷薔薇だが、山頂の手前で取れるらしい。
自然と出来る氷の花、何故か花の形で効果が変わるという不思議な特性があった。
そこまで調べていると睡魔がきた。
そこで打ち切ってベッドに入ると眠りについた。
翌朝、自然と目が覚める。
部屋に朝食を運んでもらい食べていると、昨日のギルドの職員さんから連絡が入り船の手配が出来たのでギルドに寄ってくださいとのことだった。
「はい、後で寄ります。ありがとうございます」
通話を切って人心地つく。
氷依達が来たらこの事を伝えてギルドに行かなければならない。
今回は氷依に任す事になるので、その打ち合わせは氷依がやらなくてはならない。
花さんも居るので心配はしていないが、短気な分だけ不安は無いとはいえない。
ギルドに行ったらそこで氷依達と別れてアーミル山に登る為の準備に時間をとられるだろう。
出発は明日になるかな?と思い予定を立てていく。
すると部屋のドアがノックされ、氷依達が部屋にやってきた。
挨拶を済まし、ギルドから連絡がきたことを氷依に伝える。
「そう、なら行かなきゃね」
と笑みを見せる氷依に着いてギルドに向かう。
昨日、買った防寒具を装備して外に出る。
朝早い時間だが、外に出ている人が結構いる。
よく見ると雪かきをしていた。
「大変ですね、これが毎日だと」
魅沙の呟きに頷く一同、それを横目に冒険者ギルドに着いた。
「おや、おはようございます」
ギルド前で雪かきをしているおっさんが挨拶をしてきたので、直斗達は挨拶をして中に入る。
「じゃあ氷依、行こうか」
昨日の職員さんがいたので直斗は氷依を連れて向かった。
「あっ、昨日の。早速来てくれたのですね」
「はい。連絡を頂いて有り難うございます」
「いえいえ、仕事ですから」
「で、船は?」
痺れを切らした氷依が職員さんに聞く。
「はい。フラール号という名前の船です。この島から隣の島に向かいながら漁をしてください」
「?、ここに戻ってくるんじゃないの?」
「はい。場所的に戻るより隣の島に行った方が効率的なのです」
「そうなの。わかったわ、準備は出来てるの?」
「ええ、いつでも行けますよ。港でコレを見せてくれれば話が通るはずです」
そう言って職員さんが氷依に紙を渡す。
それを見ている氷依の横から直斗がアーミル山について職員さんに聞いてみた。
「氷薔薇ですか。確かにアーミル山では氷の花が作りますけど自然任せなので、行ってみないとわかりませんよ?」
「ええ、それはわかっています。その氷薔薇が精霊に効果があるのは確かですか?」
「ええ、そう言われてます。実際に目にした訳では無いのですが、山に登った冒険者が山にいる精霊がそれを食べて力が上がったのを見たらしいですよ」
「………………精霊がいるのですか?」
「はい。アーミル山にはまだ精霊がいますよ」
「敵対しますか?」
「フフフ、大丈夫ですよ。人の前には姿を現す事は殆どないですから」
それを聞いて安心した直斗は、職員さんに必要な物を聞いてその場を後にした。
「じゃあ、ここで別行動ね」
職員さんにもらった紙を花さんに渡し、直斗と魅沙に振り返ると 「頑張るのよ」 と言って港へと花さんとエリーナを引き連れて歩いていった。
「僕達も行こうか」
「そうですね。必要な物を購入してアーミル山に行きましょう!」
職員さんに聞いた所、最初の休憩小屋は割りと近い場所にあるらしく、昼前に出れば陽が落ちる前には着くとのことだった。
直斗と魅沙は必要な道具と大量の食料と水を買いギフトにしまうとアーミル山に向けて出発した。




