雪の降る町
到着した島はとても寒かった。
周りには雪が降り積もり、辺り一面真っ白だった。
「………………なによこれ!」
マリキュスに存在する島の1つ、ブルネ島の冒険者ギルドの窓から氷依が叫ぶ。
直斗はギルドの職員から情報を聞く。
「すみません、ここは?」
「ようこそ。極寒の地、ブルネ島へ」
明らかにからかっているだろう女性職員に直斗は乾いた笑いを浮かべる。
なにせ到着一番、魅沙が水着売り場を聞いたからだ。
困った顔をした女性職員がギルドの窓を指差して、それを見た氷依が叫んだのがその始まりだ。
魂の抜けた表情をする魅沙と花さん。
エリーナはオロオロと魅沙と花さんを見ているが、どうにも出来ないでいる。氷依は外を見たまま固まり、自然と残る直斗が動くしかなかった。
「どのような用件で?」
「えっと、緊急依頼で魚とりです」
「ああ、豊漁の話を聞いたのですね。では船と宿の手配をしておきますか?」
「………はい。それと防寒具が欲しいのですが?」
外の様子を見ればそれが必要なことは一目瞭然だった。
「それならココにもありますけど。冒険者にも好評ですよ?」
チラリと防寒具を販売している場所を見た女性職員に直斗はそうなんですかと愛想笑いを浮かべ、念のために場所をお願いしますと言うと女性職員はではギフトに情報を転送しますと言って直斗のギフトにこの島の情報を送る。
それを受け取り直斗は頭を下げて、まだ固まっている魅沙達の所に戻る。
「魅沙さん?」
「ふぇ。………直斗さん?」
焦点の合っていない目で直斗を見る魅沙。
「とりあえず防寒具を揃えに行きましょう」
「防寒具………そうですね、可愛いのを探しましょうか………」
一同を引き連れて冒険者ギルドの売店に向かう。
思った通り、無難な品揃えにガッカリとする
「ダメだわここ!」
「でも無ければ外を歩けませんよ」
「お嬢様、私が先に行って店を見てきましょうか?」
それがいいかもねと花さんの意見を採用すると直斗も手をあげる。
「僕も行くよ、一人で行かせられないからね」
花さんに頷き、直斗は適当に売店の防寒具を買って二人で外に出た。
初体験の雪道に足をとられる。
店の場所は確認済み、除雪されている道を進みながら町の様子を伺う。
「ハア、ハア」
二人は白い息を吐きながら店の前に着いた。
早速、店にある防寒具を物色する花。
それを眺めながら直斗も店の中を見て回る。
武器に防具に魔法道具と品揃えがいいようだが、直斗の目にはそれだけだと映った。
(この程度か?この島がこの国の中心だと思っていたのに)
冒険者ギルドの売店よりマシなぐらいな品揃え。
花さんの機嫌がだんだんと悪くなる。
「直斗様!他に店は無いのですか?」
「やはり、気に入りませんか?」
「当然です!私達はコレでいいですが、お嬢様達にはもっと他に可愛いいのが必要なのです!」
そう力説されると探せねばなるまい。
直斗は他に店が無いかを検索する。
店の主人に嫌な顔をされながらも探していると、この先に小さいながらもお店があるのを発見した。
「花さん。この先にお店があるみたいですよ」
「………行きますよ」
こんな所には用が無いとばかりにさっさと店を後にする花さんに遅れないようにと直斗も店を出る。
思いの外、店の数が少ないと感じる。
何故?と首を傾げながらも目的の場所に到着。
「ここですか?」
二人の目の前にピンクの可愛い店があった。
扉を開けて店の中に入る。
「うわ!」
思わず声をあげる直斗。
「素晴らしいですね」
店の中の商品を見てキラキラと目を輝かせる花。
確かに妙に可愛いらしい商品が並んでいる。
これが防具なのか?と疑いたくなる。
更に奥に進んで行くと、かっぷくのいいおばさんが椅子に座っている。
「いらっしゃい、気に入ったようだね」
キラリと目を光らせるおばさん。
花さんはおばさんに近寄るとその手を握る。
「素晴らしいです。これは貴女の見立てですか?」
「そうよ。久し振りに話のわかる子が来たみたいね」
外の寒さに似合わないフリフリのドレスを着たおばさんが、花さんと熱心に話し込みはじめた。
色々と身振り手振りを交えて花さんがおばさんと話をしている。
直斗はそそくさと距離をとる。
この場は花さんに任せておけば良いだろうと思い直斗は店の中をうろつく。
(猫に犬に兎、一般的な物は押さえてあるだな)
ずらりと並ぶ外套を見て直斗はそう感じた。
日頃から魅沙の獣耳を見慣れているからか、あまり新鮮さを感じない。
外套にシッポが生えているのはやり過ぎではなかろかと思うが、魅沙は逆に喜ぶかもしれない。
ここの店なら満足のいく物が揃うだろう、直斗は他に厚手の服や靴などを見て回る。
(フワフワの毛皮付の靴やモコモコの服、値札がついていないのが怖い)
女性専用の防寒具の店と判断して直斗は商品を見るのを止めた。
店の窓から外の景色を眺めていると後ろから花さんが声をかけてきた。
「直斗様、少し時間がかかりそうですのでお嬢様達を呼んできてもらえますか?」
さすがに退屈をしていた直斗は二つ返事で頷くと冒険者ギルドに向かった。
「少し遅くありませか?」
ギルドの中で依頼表を見ていた魅沙が呟く。
「そうですね。ちょっと心配になります」
魅沙の後で同じように見ていたエリーナが同意する。
「心配ないわ、花と直斗に任せておけば大丈夫よ。遅いぶん、気に入った物があったのよ。楽しみだわ」
フフフ、と笑みを浮かべた氷依はギルドの扉が開いて入ってくる直斗を見つけた。
「直斗!遅いじゃない」
さっきと言っている事が違うと二人は思ったのだが、声にだしては言えなかった。
「ごめん。最初の店に良い品物がなくて二件目に行ったんだ。その店を花さんが気に入ったから氷依達を呼びに来た」
「そう、どんな店よ」
「外観がピンクの派手な店。この雪でもわかるぐらい。多分、魅沙さんは気に入ると思うよ」
「ほえ、私が気に入るですか?………行きましょう!」
とりあえず買った厚手の外套を羽織、冒険者ギルドを出ていく魅沙を先頭に氷依達が続く。
直斗は最後尾に着き再びピンクの店に戻っていった。
そこからは女性陣が盛り上がり、好みの防寒具を買っていく。
特に魅沙がホクホク顔で白猫になった姿を直斗に見せてくる。
氷依と花さんは無難に熊と犬。
エリーナは何故か梟をチョイスしていた。
上から下まで買い揃えた女性陣はとてもやりきった顔をしている。
直斗としても似合っていると思っているので余計な事は言わない。
「もういい?」
女性陣は顔を見合わせて、直斗に頷く。
「じゃあ、宿に行こうか。船の手配はギルドでしてくれるから連絡まちだし、これからの事についても話し合わないとね」
「そうね。まさか雪が降っているなんて思わなかったわ」
「はい。今日は温かい物が食べたいです」
「賛成です」
「そうですね。こんなに寒いと鍋なんていいですよね」
「鍋。やっぱり海鮮鍋ですか?」
「鍋焼きうどん」
「ああ、氷依さん!いいチョイスです」
鍋談義に花を咲かせている 女性陣に直斗が声をかける。
「あの~、とりあえず宿に行かない?」
「………コホン。そうですね。お嬢様、宿にいきましょうか」
代表で花さんが直斗に答える。
それを見て直斗はホッと息を吐いてギルドの手配した宿に向かった。




