合流
午前中に一戦したがそれから敵の動きが止まった。
直斗以外は食事と休息を兼ねて休んでいる。
このまま終わるとは思えないので、直斗はどうしたものかと考える。
(攻めるには人手が足りないよな、さすがにこの人数で攻撃を仕掛ける訳にはいかないし。………………やはり氷依達を待つしかないか、でもそうなると24時間の戦闘に突入か………)
そんな事を考えていると白夜が食事をもって上がって来た。
「マスター、ご飯ですよ。食べやすいオニギリにしました」
「お!有り難う白夜、お米なんて持ってきていたんだ?」
「はい。氷依さんが持っていた物を分けてもらいましたから、2週間は持ちますよ」
直斗は白夜から貰ったオニギリを食べながら聞いていた。
「中のおかずは?」
「シャケと梅干しです」
「へえ、定番だね」
「はい、それ以外は氷依さんに取られました。と言ってもタラコと明太子でしたが」
それを聞いて直斗は納得した。
(氷依は相変わらず魚卵好きか)
一緒に過ごした過去を思い出して直斗は微笑む。
「それで、敵さんは動かないみたいですね?」
直斗のそんな表情に気づかずに白夜は敵ゴーレムがいる場所を見つめる。
「うん、静かなもんだよ。やっぱりアレのせいかな?」
直斗は首を横に向けて巨大石矢が乗っている発射台を見た。
「その可能性は高いと思います。あの水晶もこちらがあんな物を作っていたとは考えていなかったでしょうから」
「そうだね。だとしたらどう動くかな?」
「距離の優位はこちらにあります。敵はこの門からしか入れないのですから、間を空けるか小数に分けて突っ込ん来るかではないかなと考えます」
その白夜の考えを聞いて、直斗も頷く。
「白夜の言う通りだと僕も思う。ならこちらはどう動くかだね」
遠くの敵を見据えながら直斗は白夜に言った。
「こちらのやるべき事はそう多くありません。来る敵を門の前で迎え撃つだけです。………この人数ですから」
そうだねと直斗が言った時、敵ゴーレム部隊に動きがあるのを見た。
どう動くかと見ていると、直斗達の正面に横一例に並び進軍を開始した。
横に30体が一例に進む。
その後ろを間を空けて30体が進んでくるのを見て直斗はティーアと白雪を呼んだ。
「どうした直斗、敵に動きがあったのか?」
呼ばれて来たティーアと白雪は直斗に促されて前を見る。
「お!………やはり少人数で多数を相手にするのは辛いのだな」
「そうだね。ティーア、行ける?」
「全部は無理だぞ。魔力が持たない。半分だろうな、それで今日はもう魔法を使えなくなるのだ」
「そうか、なら僕と白夜で行こうか。ティーアは僕達がうち漏らした敵を叩いて、白雪はあの予備隊らしい動かない敵を回り込んで凪ぎ払え!」
直斗は向かってくる敵ゴーレムを見据えながら指示をだす。
こちらに向かうゴーレムは30×4列で120体、後ろで動きが無いのが100体ほどいる。
欠損しているゴーレムもいるので戦える数はもうすこし少いないかもしれない。
「じゃあちょっと運動してくる」
直斗はそう言うと白夜と一緒に壁を飛び降りて前に突っ込んでいった。
直斗と白夜は進んでくるゴーレムのほぼ中央に向かう。
直斗達が前に来てもゴーレムから反応が無い。
(狙いは町の中に入るだけ?僕を狙っている訳でもないのか?)
それを不思議に思いながら向かっていくと、進んでくるゴーレム隊が槍を構える。
(前に来た敵には反応するのか)
前に見えるゴーレム隊は盾は装備して無く武器として槍を持っていた。
近くで見て初めて直斗はゴーレムの顔が人間らしい顔つきである事を知る。
一向に隊列を変えないゴーレムを前に直斗は右腕を振り上げて目の前の地面に押し付ける。
(まずは3つ)
あらかじめ白夜が改良した土結晶をガントレットの中に装着していた直斗は3個の土結晶の魔法を集めると地面にその力を流し込んだ。
ゴゴゴゴゴ!!!!!
直斗が打ち込んだ土結晶の魔法がゴーレム隊の前面1列に土槍を作り出した。
本来なら地面を隆起するぐらいの土槍を作りたかったが、そこまでの改良ができずに人が扱える程の槍の大きさになったが、狙った通りの箇所に槍を突き立てる事ができた。
「行きます!」
白夜は直斗が使った魔法を見て、まだ動いているゴーレムに向かっていった。
前面一列に並ぶゴーレムの頭に土槍が突き刺さっている。
これで全滅なら簡単だったのたが、5割ほどが頭ではなく体に槍が刺さっていた。
白夜はそれを見てゴーレムに止めをさしにいった。
土槍が刺さっても構わずに前へと進もうとするゴーレムに白夜は馴れた感じで止めをさしていく。
「やはり動けないゴーレムは楽ですね。この調子でいきましょう!マスター」
白夜の声に頷いて直斗は二列目のゴーレムの前に出ると、先程と同じように目の前の地面に拳を打ち付けると二列目のゴーレムも土槍で動けなくなった。
これは楽でいいなと思っていたら、三列目のゴーレム達から動きが変わった。
直斗の攻撃を見て対応を変えたらしい、前進していた残り60体のゴーレムが直斗と白夜を目掛けて駆けてくる。
「ティーア!」
それを見て直斗が叫ぶ。
直斗達の眼前まで迫ったゴーレム達の頭が切り飛ばされていく、上空からの風の刃が直斗の頭上からゴーレムに届き抜けていった。
中央のゴーレム達が崩れ去っていく。
それを見て直斗と白夜は空いたスペースに飛び込みゴーレム達を殴り倒していく。
まだ左腕の土結晶が6個が残っていたが、直斗はそれを温存した。
後方にいるまだゴーレムが多数残っている、白雪がそれにあたるが全部を倒せるとも限らない事から不足の事態に備えての考えからだった。
直斗は味方もお構いなしに攻撃をしてくるゴーレムの間を縫って絶えず動き回り、ゴーレムの頭を破壊していく。
「マスター、ちょっと厄介ですねこのゴーレム達は」
味方のゴーレムの腹や足など、見えない場所から強引に直斗や白夜に持っている槍を突き立てる。
密集していると更に同士討ちしても攻撃をするゴーレムに辟易しながらも直斗達は攻撃をしていった。
「直斗、後方にいるゴーレム部隊に白雪が攻撃を仕掛けたのだ」
直斗の耳元にティーアの声が聞こえた、風魔法に自分の声を乗せて届ける事がティーアにできる事を知って、直斗が動きがあったら伝えて欲しいと頼んでいた。
「白夜!引くよ!」
ティーアの声で状況が変わった事を知って、直斗は町まで引く事を白夜に伝える。
もはや動けるゴーレムも10体ほどになっている、残りをティーアに任せても問題が無い。
「わかりましたマスター!」
直斗は後ろに下がりながら、残りのゴーレムを誘導していく。
白夜と合流して町の門の方へ顔を向けたとき、町を囲む壁の左右から新たなゴーレム達が向かって来るのが見えた。
「なっ、マスター!」
「うん、不味いね。………いつの間に?」
直斗は表情を厳しくして、こちらに来るゴーレム達を見つめた。
「ティーアは眼前のゴーレムを倒して!」
「あっ、はい!任せるのだ!」
「白夜。土木用の土結晶を、両脇を壁で塞いで前に作ってある壁と繋げて時間を稼ぐ!」
「はい!お任せを!」
直斗は白夜と門の前まで急いで戻ると、白夜が改良した土結晶を受け取り迫り来るゴーレムを遮る壁を作った。
「一先ずこれで」
「ですが、いつまでもつか解りません?」
「わかっている。先ずはティーアの元へ戻ろう」
敵ゴーレムが壁を殴り付けている音を聞きながら、直斗はティーアのいる場所まで戻った。
「直斗。こちらは終わったぞ。それと白雪もこちらに向かっている」
ティーアは足下にワラワラと蠢くゴーレムを見ながら直斗に告げる。
直斗はそれを聞いて遠くで別部隊と戦っていた白雪がこちらに向かっているのを確認した。
「白雪の戦果は?」
「ここで見ていたが、半数は壊していたと思うぞ。向こうは予想外だったのか動きが鈍かった」
「そう。水晶くんも戦場全体を動かす事に慣れていないんだな。それで助かっているけどね」
直斗は腰をおろして辺りを見渡す。
下にいるゴーレムは壁を壊そうと手に持っている武器で、壁を破壊しようとしている。
全部で80体ほどだろうか?、これを少いと感じてしまうのは状況に馴れてきたせいだろうかと直斗は思って苦笑いを浮かべる。
「マスター、白雪が戻ってきました。多少、怪我をしてますので回復します」
「ああ、白夜に任せる。食事と休息もさせてあげて」
「はい、マスター」
白雪と白夜が下に行ったのを見て、直斗とティーアは目の前の状況をどうしようかと頭を悩ませる。
「どうするつもりなのだ?」
「そうだね、時間の問題かな?」
「だと思うぞ。私でも全部は無理なのだ。10…………20はいけるだろうがそれで、今日はおしまいなのだ」
「そうだよね。僕も流石に残りの片付けるのは厳しい」
直斗はスマホを取り出して、自身のステータスを確認すると魔力残量が半分をきっていた。
アレだけやってまだ半分も魔力が残っている事に直斗は驚いたが、全部を使うわけにもいかない。
白夜をこちら側に残して置かなくてはならないし、まだ門が閉まるまで時間がある。
ここで全力をだせばゴーレム達を全滅までもっていけるが、その後が手詰まりとなる。
もし後続の部隊があれば、誰かを犠牲にしなければならない。
直斗が王として試練を受けているので、ティーアか白夜、白雪の誰かになる。
ここで誰が欠けてもこの試練はクリアー出来ない事を考えると八方塞がりになってしまった。
どうしようかと頭を悩ませている事、一時間。
遂に直斗が作った壁に小さい穴があき始めた。
「覚悟を決めるか」
直斗はそれを見て、立ち上がる。
「そうだな、やる事をやるのだ」
「マスター、お供します」
「ガウ!!」
いつの間にか、直斗の背後に白夜と白雪がいた。
直斗の言葉に呼応するように、仲間達が応える。
直斗はそんな皆を見て頷く。
「じゃあ、行こうか!」
「「はい!!「ガウ!」」」
直斗が壁を壊しているゴーレム達の中に飛び込もうとしたとき。
そのゴーレムの背後から攻撃魔法が放たれ、ゴーレム達を凪ぎはらっていった。
「えっ?」
直斗は動きを止めて、白夜達と魔法が放たれた方へと顔を向ける。
そこには見知った顔が笑顔で直斗達に手を振っていた。
「直斗!今いくわ、そこで待っていなさい!」氷依の力強い声が直斗に届く。
ゴーレムの後方から現れた4人はこちらに駆けよると、先頭の氷依と花さんが門の前にいるゴーレム達を魔法で攻撃を始めた。
それに全く反応を示さないゴーレム達は、瞬く間に全滅をした。
直斗が壁の一部を壊して氷依達を町の中に迎え入れた。
「待たせたわね直斗!」
「良かったです直斗さんが無事で!」
「心配しました、直斗さん」
「ご無事でなによりです」
直斗との再会に喜ぶ4人を見つめ直斗も笑顔で再会を喜んだ。
「みんなも無事で良かった。………ありがとう助けてくれて」
「そんなの当然だ!です!でしょう!……!」
4人が直斗に当たり前のように揃って答えた。
それに直斗は素直に頭を下げた。




