双頭樋熊
昼食をとった場所にて狩りを始めた直斗達。
その前には倒された魔物が数多く横たわっていた。
花さんが全員の食事を作り終えると、料理の匂いは無くなり魔物が襲ってくる数も減る。
「こんなもんかな?」
ハッキリと言って雑魚ばかりであった、殆どの魔物は一発、二発で仕留めたので食後の運動ができてよかったと思う程度だった。
「直斗、全部で35匹よ。ティーア、この中で美味しいものは?」
「そうだな、そこの豚と鳥は美味いしぞ」
「そう、花。豚と鳥を3体ほど解体して、終わったら冷凍するからよろしくね」
残りは処分しても良いのか?と、ティーアが聞いてきたので直斗は頷く。
ティーアは魔物の死体をポイポイと袋の中に軽々と放り込んでいった。
魔物も出てこなくなり、直斗は先に進むことする。
後片付けもすんでいるので後は花さんの解体作業が終わるのを待つだけだ。
「エリーナさん、武器は何を?」
直斗の近くにいたエリーナが目に入ったので聞いてみる。
「護身用にボーガンを使っています。ただ矢を買う費用までは手がまわらなかったので、本当に危険な時以外は使ってませんでした」
「なんでボーガン?」
「私の魔法は探索と解析のみです。ナイフや剣、それと弓なども使ってみましたが、うまく使えずに比較的に扱いやすいボーガンにしました。威力も弱く、安物の中古品ですが」
「ふ~ん、エリーナさんの今のレベルは?」
「えっと………、6になってます………」
「レベルの上がる条件は?」
自分のレベルに驚いているエリーナ。
直斗の問いかけにエリーナは伏せていた顔を上げて答える。
「そうですね、探索で反応のあった物や敵をたおすと経験値が入るようです。ただ、経験値は倒した魔物の半分以下みたいです。それとパーティーが倒したものでないと経験値は入りません」
それはまた大変だなと直斗は思った。
攻撃手段のない人はかなり苦労するのでは?と思ったが、別の可能性も考えられる。
(もし、エリーナの探索範囲の敵が多数で広域魔法攻撃や討伐があれば、経験値は少ないが総取りか)
今は苦しいかもしれないが、未来は明るいかもしれない。
それも僕たち次第かとも思う、そんな事を考えているとティーアにズボンの裾を引かれる。
「なにかな?」
にっこり笑ってティーアが口を開ける。
「直斗!チョコをおくれ」
直斗はポイッとティーアの口の中にチョコを入れてやる。
満足した顔のティーアから氷依達へ視線を移し見ると、作業が終わった氷依と花さんがこちらに来ていた。
「直斗、終わったわよ。移動しましょう」
直斗は氷依に頷き、皆に出発する事を伝える。
エリーナは直ぐに先頭で進む。
それを確認して直斗達はその後に続いた。
キョロキョロと辺りを確認して進むエリーナ、先ほどの休憩から二時間が経過していた。
時折、魔物が現れるがサクッ!と倒していく。
さすがはエリーナの探索魔法、まだレベルが低くて40メートルまでしか探索範囲が限界らしいが彼女のお陰で大森林の中でも奇襲を受けることもなく進めるのは頼もしい限りである。
エリーナは止まっては進むを繰り返しているところを見ると、薬草やキノコなどを採取しているのだろう。
最早、ピクニック感覚に近い感じになっている直斗達は夜営地について会話しながら歩く。
「テントとかはあったの?」
「ええ、あるわよ」
「お嬢様達用と直斗様用が届いていました」
「へ~、なら後は夜の見張り番をどうするかかな?さすがにエリーナさんに全てを任すわけにはいかないから」
「あ~!それなら私にいい考えがあります。見張りは不要ですから、任せてください」
直斗達の会話を聞いていた魅沙が突如、声を上げて会話に混ざる。
「魅沙、なにかいい案があるのね」
「はい、氷依さん。さっきの戦闘で私のレベルが7になってスキルが1つの増えたのが使えそうです」
「そうなの?私はレベル10だけど、スキルが1つのしか増えてないのよね。直斗は?」
「僕もレベルは氷依と同じ、スキルは自分の精霊を召喚するのと闇のカーテンっていう防御系常時発動タイプの魔法を覚えていたよ」
「はあ!直斗の癖に生意気ね!」
「うっ、そんなことを言われても………」
「マスターは天才ですから当然です」
「ちょっ!ちょっと白夜は黙っていて!」
「どうしてですか?才能のあるマスターが貶されるなんて我慢できません!」
「そう?」
白夜の言いように、満更でもない顔をする直斗。
「………………フフフ!」
ハッ!と直斗が振り向くと、花さんが笑っている。
直斗にしては貴重な花さんの笑顔が見れたので良い日だと思ったのだが。
「プッ!………アーハハハ!」
「ウフフ」
「すみません、マスター」
「えっ?」
氷依に魅沙まで笑いだしたことに困惑していると、白夜の謝罪の言葉で更に訳がわからなくなる。
「直斗様、からかわれたのてすよ」
「えっ?えっ?」
花さんがそっと教えてくれた。
直斗は悪戯が成功したような氷依の笑みを見て脱力した。
(お前ら………仲良くなりやがって………)
何か、言ってやろうかと直斗が顔を上げると。
「直斗さん!」
けして大きい声じゃないが、有無を言わさないエリーナの声が直斗の耳に聴こえてきた。
直斗は腰を低くして、先の方を見ているエリーナにならって体勢を低くして近づく。
「あれを」
直斗が隣に来たのを確認してエリーナが前方を差して囁く。
直斗が示された方向に視線をやると、大きな影がある。
こちらには気づいていないようで、ゆっくりと毛繕いをしている。
「双頭樋熊です。体長は5メートル、レベルは15。右と左では攻撃の仕方が違うみたいです。………………すみません、これ以上はわかりませんでした」
エリーナがそう言うと不思議そうな顔をしている直斗にエリーナは解析の魔法ですと教えてくれた。
そのヒグマの頭が二つあるのを直斗は確認した。
「どうします?」
エリーナが直斗を伺う。
「エリーナさんはこのまま監視、僕は後ろにいる氷依達と協議をしてくる。もしこっちに来たら教えてほしい」
エリーナは頷くとヒグマを監視する。
直斗は音をたてずに氷依達の場所まで戻ると双頭樋熊のことを伝える。
「直斗、どうするの?」
「できれば避けたいけど、今日はこの近くでテントを張ることになると思う。なら危険は排除したい」
それに頷く氷依と魅沙。
「直斗、双頭樋熊は強いぞ」
ティーアが心配そうな表情で警告をしてくれた。
「ティーア、それは違反じゃないのか?」
「ん?、なにがだ。私は独り言を呟いただけだぞ」
直斗はそうか、と呟きティーアに内心、感謝した。
「ちなみ、アレのポイントは?」
「う~ん。三万………………いや、三万七千ポイントだな」
少し悩み、ティーアは答えた。
直斗はいいことを聞いたと思った。
これからの魔物の強さの基準値は双頭樋熊のポイント ではかれると考えたのだ。
「それで、どう動くの?」氷依が目を輝かせて聞いてくる。
直斗はどうするかと考える。
「ヒグマはデカイ。攻撃は突進と爪による攻撃だと予想するんだけど」
「多分そうね」
「魔法をつかうぞ」
直斗と氷依がお互いにどう戦うかを相談していると、ティーアがまたぽつりと呟くのを耳にして直斗と氷依が顔を見合わせる。
「そうか~、どんな魔法なんだろうね氷依さん」
「そうね直斗さん」
二人がチラチラとティーアを見ると。
「左側の顔の奴が風系の魔法を使うぞ。右は噛みつくだけだ」
と、ティーアがあさっての方へと顔を向けて呟いた。
「ティーア」
「ん?なんだ」
直斗はティーアの名前を呼ぶ、呼ばれたティーアは直斗を見上げると口の中にチョコを二個、突っ込まれた。
いきなりの事で驚いた表情をしたティーアだが、口の中に入れられたのが甘いチョコだとわかるとニヘラと笑みを浮かべる。
それを見て直斗は氷依達と作戦を練った。
直斗達はエリーナの側に集まり作戦を伝える。
双頭樋熊は直斗達には気づいておらずのんびりとしていた。
「エリーナさんはここで待機して周辺の警戒。もし他の魔物が来たら教えてほしい」
直斗の言葉に頷くエリーナ。
「僕と白夜が接近戦を仕掛けるから魅沙と花さんは援護をお願いします。そして氷依は………」
「わかっているから、任せなさい!」
自信満々の氷依に頷き直斗は白夜と双頭樋熊に向かって走り出した。




