勧誘
直斗は中庭の清掃を命じられた。
まさかの依頼期間の超過のせいだ。
五堂教師に呼び出され向かうと、ニヤニヤした五堂教師がいた。
おもわず、後退りをしたが肩を掴まれ椅子に座らせられた。
「直斗、コレを見な」
五堂教師が指をさす箇所を直斗は見る。
そして気づいた。
「あっ!………すみませんでした!」
直斗は椅子から立ち上がると、床に座り土下座をした。
「うんうん。いい心がけだ。今回はリーダーの責任ということで、罰を受けてもらう。依頼ポイントはやるから安心しろ」
「はっはい!ありがとうございます!」
直斗は顔を上げて五堂教師を見る。
相変わらずニヤニヤした顔で直斗を見つめている。
何をやらされるのか怖くなるのをグッ!と直斗は堪えた。
「今回は初犯だから、中庭の清掃を一週間だ」
はい!と立ち上がり直斗は放課後に中庭の清掃をする事になった。
氷依にどう話そうかと考えていたが、氷依からメールで2週間休むから活動は中止と連絡がきた。
直斗にとっては都合が良かったが、気になったので花さんにメールをしてみた。
返事がこない事も想定していたが、ちゃんと返事がきて驚いた。
ーお嬢様はキラーラビット戦にて実力不足を痛感して修行を課せられましたー
それを見て直斗は何も言わずに自分の現状だけを花さんに伝えた。
廊下で魅沙と会って氷依の伝言を伝えると、魅沙の所にも直斗と同じメールがきており知っていた。
直斗は魅沙に罰を受けて中庭の清掃をすることを伝えると。
「直斗さん、私もてつだいます」
と言ってくれたが、リーダーとしての役割をこなせなかった罰だからと断った。
今日で三日目、この広い中庭を白夜と二人で綺麗にいていく。
一週間を区割りして中庭の清掃を始めたら。
「ごめんね、白夜」
「ん?………あ~、謝ることなんてないですよマスター。白夜はマスターの手伝いができて楽しいし」
「そうなの?」
「精霊は主の為に………です!」
ニッコリと笑う白夜に感謝して直斗は清掃の続きをする。
そろそろ終わろうかと思っていると。
「マスター、あっちに嫌な気配がする」
顔をしかめる白夜。
「嫌な気配?」
「なんと言うか、陰湿な感じがする」
直斗は白夜が言った嫌な感じのする方へと気配を消して歩いていった。
中庭をしばし歩き、直斗の耳に、誰かを怒っているような声が聞こえてきた。
「本当に役に立たねぇなあ!お前は」
大柄の男が背の低い少女に怒っているようだ。
(あれは!)
(………マスターのクラスの人ですよね?)
(ああ。背の低い少女は委員長で、大柄の男はクラス3位のパーティーリーダーだ)
直斗は白夜と木の影にかくれて様子を見る。
「委員長に選ばれるぐらいだから使えると思って仲間にしてやったのに、使えるのが探索と解析だけなんてよ………能無しが!」
(?、結構すごいんじゃ?)
直斗は委員長を貶す男の言葉を聞いて、首を傾げる。
(マスター。あの男の言っている事とマスターが思っているのとは、少し違うのですよ)
(どういうこと?)
(あの男からは卑屈なまでの金の盲従を感じます。たぶん………異世界でお金に苦労しているのでしょう)
(それにしたって、言い方が酷すぎないか?)
「………………それで………私をどうするんですか?」
委員長が下を向きか細い声で男にたずねる。
「ああ!ハッキリ言って邪魔なんだよ。お前の口からパーティーを抜けろ!人望だけは有るから厄介なんだよお前は!」
(本音が見えたな)
(はい、矮小な男です。嫉妬と金、調べればあの男のパーティーは8人です。人数が多ければ楽と考えたのでしょう。バカな男ですね可哀想に)
白夜は蔑みの目で男を見る。
「それだけですか?」
「ああ。無能は黙って抜けろ!」
「………わかりました。今日中に脱退届けを出します」
「ふん!ガキのくせに手間をかけさせやがって」
そう言うと男は委員長に背を向け、校舎の方へと帰っていった。
残された委員長は木に背を預けボー然としている。
(マスター、チャンスですよ)
(?、なにが?)
(マスターのパーティーに欠けている人材です)
ああ、確かにと直斗は思って委員長を見ると彼女は泣いていた。
声を押し殺して、ポロポロと涙を流す。
(あの~白夜、話し掛ける雰囲気じゃないんだけど………)
(なにを言っているんですかマスター!チャンスです。彼女はマスターの言葉を待っているんですよ。これは運命です!)
白夜はチャンスと言うが、見た目が中学生一年生ぐらいに見える委員長、どうやらパーティーリーダーから嫌われたらしい。
しかしだからといって、トルネードに入ってほしいと言っても信じてくれるかわからない。
涙を流してい少女に姿を見せていいのだろうかと不安もある。
僕なら絶対に泣いてる姿を見せたくはない。
白夜には悪いがまた別の機会に………………と思いその場を離れようとした時に委員長から声をかけられた。
「誰?」
(しまった!)
直斗の動きが止まる。
微妙な内心の動揺が外に漏れだしたようで、委員長に気づかれてしまったようだ。
ガサゴソと直斗は隠れている場所から出て、委員長に姿をみせた。
「光羽……君、なんで?」
まさかクスメートの直斗が現れるとは考えていなかった委員長は涙で濡れた頬を急いで拭いて、直斗に背を向ける。
「なっ!なんであなたがここに居るのですか?」
恥ずかしさを隠すように委員長の声が上ずっている。
「いや~、恥ずかしながら罰で五堂教師から中庭の清掃を命じられました」
「罰?ですか?」
「ええ、ちょっと失敗しました。委員長は何故ここに?」
直斗は何も聞いていませんよ、アピールを委員長にする。
「わっ………私は……」
小さい体が更に小さくなった感じがする。
委員長は嘘がつけないのか、次の言葉が出てこないようだった。
「そういえば、委員長には悪い事をしたね」
「えっ?………なんのことです?」
「ほら、氷依が僕が居ない時に押し掛けた時さ」
「私はなにもできませんでした………」
「そんな事はないよ、あの氷依が侮辱されて正座だけで済ますなんて考えられないよ。委員長が止めに入ってくれたんだろ?」
「………止めはしましたが、聞き入れてくれた感じはしませんでした」
「それでも、氷依は僕が来るまで相手を再起不能まではしなかったのは、委員長のおかげだと思っている」
直斗の言葉に委員長から次の言葉はなかった。
ただじっと、背を向けて何かを我慢しているみたいに見えた。
今日はこれ以上は無理かと直斗が清掃場所まで戻ろうとしたとき。
「委員長さん、マスターがあなたを欲しいと言ってます」
突然の白夜の発言に委員長が、バッ!と直斗に振り向きワナワナと震えている。
その目に怒りの感情が見えた。
「なんですか光羽君、泣いてる女性に声をかければ落ちるとでも!………馬鹿にしないで!」
「いや、そんなつもり………白夜!」
確かに白夜の言い方は無いなと直斗も思う、委員長が感情的になってもしょうがない。
直斗はどう謝ろうかと思っていると。
「?、マスター白夜は変な事を言った?」
委員長が怒っている理由が理解できない白夜が直斗に聞く。
「そんな子供を使って、女性を誘惑するなんて………」
「誘惑?………………ああ!わかりましたマスター。委員長さん、いい間違えました。マスターのパーティーに入って下さい」
「えっ?………………ええ!」
怒りの顔から、驚きの顔に変わる委員長を見て直斗はいつも澄ました感じの委員長が普通の少女に感じられた。
「なっ、なんで私を?やっぱり話を聞いていたのですか?哀れみですか?………やっぱりナンパ?」
早口に委員長が捲し立てる。
突然の直斗の勧誘に訳がわからなくなったらしい。
「話は聴いていました、ご免なさい。ですがその内容を聞いて、マスターに必要だと思いましたので白夜が勝手に口にだしました」
着物を着た幼女が丁寧に頭を下げる。
それを見て委員長も動揺していたのが落ち着いた雰囲気を出すようになった。
「どういう事ですか?」
委員長が直斗を見つめる。
白夜に直斗が言わせていると思っいるようだ。
「喧嘩をしているような声を清掃している時に聞きました。近付いてみるとあなた達が居ましたので様子を見ていたんですが、委員長は探索と分析のスキルを持っているとか?それでこの白夜がパーティーに入ってもらえればと言い出しまして………………」
「………本気………ですか?」
委員長は探る目で直斗を見る。
「ええ。是非とも入ってもらいたい逸材です」
疑いの瞳を直斗は真っ直ぐ見つめて答える。
「………………」
委員長は下を向いて沈黙。
「委員長さん。マスターはあと4日は中庭の清掃をしなければなりません。その間に答えを聞かせてもらえば良いですよ。ね、マスター」
白夜の言葉に直斗は頷く。
「ええ、委員長にはよく考る時間が必要でしょう。僕は放課後はここにあと4日います、質問があればいつでもどうぞ」
直斗は優しく語りかけるように委員長に言った。
「………………わかりました。よく検討させてもらいます。………それと私の名前は深美エリーナです」
そう言って委員長は直斗前から去っていった。
「マスター、来ますかね?」
「さあ、でも仲間になったら心強いよね」
直斗は去っていった委員長の顔が、どこかさっぱりした表情になって帰っただけでも勧誘して良かったと思った。




