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カナと船

翌朝、直斗は集合時間のギリギリに起こされた。

昨日の夜は奏に付き合い帰ってきたのが午前近くになってしまったためだ。


さすがに魅沙を付き合わせる訳にはいかないので、早々魅沙は宿に帰ってもらった。


酔い潰れた奏を背負って宿に連れていく事になり、

宿のおっちゃんに部屋が空いてるかと聞いたら、空いていないとのこと。

仕方なく奏の分のお金を払い自分の部屋に連れていった。


ベットは部屋に二つある。

白夜は直斗と一緒に寝るのでベットが一つ余っていた、だから直斗は奏をそのベットに放り込んで、それを見届けて直斗はベットに潜り込んで寝た。


「マスター!朝ですよ」


グイグイと体を押される感覚で直斗の目は覚めた。

グッと覗きこむ白夜に、おはようと言ってベットから起き上がる。


あくびを噛み殺し、背を伸ばすと奏の寝ているベットを見るとまだ寝ていたので直斗は(まぁ、いいか)と奏を置いて白夜と部屋を出て行った。


下では氷依達が集まっていて直斗を待っていた。

宿のおっちゃんに奏の事を頼み、チップとして幾らか渡し面倒をたのんだ。


これから朝食を食べて、カナさんの待つ港に向かう。

無難に近くの店で朝食を済まし、直斗達は朝の涼しい時間帯を海沿いに歩いてむかう。


視界に入る大小の船。

あそこでカナさんが待っていることだろう。

海岸線の舗装された道を氷依達と軽く雑談をしながら目的の場所まで向かう。


「お待ちしてました、直斗さん」


約束通りにカナさんが出迎えてくれた。

足元に荷物が置いてあった。


「おはようございます、カナさん。今日はよろしくお願いします」


「「「お願いします!!!」」」


声を揃えて氷依達がカナさんに頭を下げる。

はい、よろしくお願いしますとカナさんも氷依達に軽く頭をさげた。

では、着いてきてくださいと言うカナさんの後を着いて歩き出す。


直斗はカナさんの荷物を見て、持ちますよと言葉をかけてみたが、やんわりと断られた。


「これは仕事ですので」


そう言ったカナさんを見て、直斗は余計な事だったと反省した。


カナさんの後を着いて船着き場の奥へと進むと、一風変わった船が見える。


「なにあれ?………アヒル」


「違いますよ氷依さん、あれは白鳥さんです」


「………………………」


氷依達の前にカナさんの船がある。

白い鳥の形をした船だ。

氷依は呆れを含んだ表情で、魅沙は楽しそうに、花さんジーと無表情で見つめている。


「フフ、どうですか家族の自慢の船。スワン号です」


「………ご家族でこれを」


「ええ、父も大喜びで涙を流していました」


「へぇ、ちなみに買ったのはカナさん?」


「はい!父と一緒に船を買いに出掛けた時に、一目惚れして即決で決めました。父は他の船を見ていたのですが私の熱意に涙を流して感激してくれました」


力説するカナさんには悪いが父親が折れたなと直斗は思った。

どうもカナさんは思い込みというか、直情的というか引かない印象を受ける。


他家の家庭の事にとやかく言うつもりはないので、依頼に差し支えがなければ良いかと直斗は開き直る。


「結構、大きい船ですね、何人乗りですか?」


「10人は余裕よ。漁船だから家族以外の人はあまり乗せないんだけどね」


「ふ~ん。なら今回はどうして?」


「父がこの間、ぎっくり腰をやっちゃってね。漁にでれないんだ。私は学校があるからあまり手伝えないから」


「それで大丈夫なの?」


「はい!父からシルク海老の捕れる場所とその為の道具を聞いて揃えましたから大丈夫です」


ポンと胸を叩くカナさん。

不安が過る一同だが自信の満ちた表情の彼女に、何も言えずに船に乗った。


カナさんの運転でスワン号は沖にでた。

鼻歌混じりにご機嫌のカナさんは目的の場所に到着すると、直斗達にシルク海老の事を説明する。


「直斗さん達は海に潜るのは初めてですか?」


「ええ、そうです」


「なら命綱をつけた方がいいでしょ。海流は緩やかなので流される心配はないです。ただ潜った後に船を見失う恐れがありますから」


漁師の娘らしくカナさんが注意する点をあげていく。


「それで、シルク海老だけど、どうやって捕まえるの?」


すでに白の水着に着替えた氷依が聞く。


「はい。これを使います」


そう言ってカナさんが虫取網の網がない道具をみせる。


「網がないですよ?」


魅沙が不思議そうにその道具を見つめる。


「マスター、シルク海老はとても柔らかいのです。手で触っても痛みますし、空気に触れると表面の白い甲羅が固まって身が不味くなって食えなくなってしまうのです」


「そうです!勉強してますね白夜さん。そこでコレを使います」


カナさんは船の上で実演してみせる。


「この輪の中をシルク海老に触れないように通します。そうしたら、このボタンを押すと周りの海水と一緒にシルク海老を包み込みます。これで船にあげても問題ありません。シルク海老の大きさで固定された海水を整えたら積むだけです!」


「………………あの、それはすごい重さになるんじゃ?」


「ええ、頑張ってくださいね」


笑顔で言われ直斗はガックリと肩を落とす。

依頼をクリアーするのにどのくらい捕まえればいいのか聞いてみると。


「シルク海老は軽いので、40センチぐらいのを300ほど捕まえれば良いかと」


それを聞いて直斗達は表情を無くした。

かるく流すつもりで受けた依頼が思いの外、重労働になりそうだと感じたからだ。


「あ~もう!とっと終わらせるわよ。直斗!」


氷依は気合いを入れて海の中に飛び込む。

その後を追うように花さんが緑色の水着で続いた。


直斗は魅沙と顔を合わせて、思わずため息を吐く。

だが、二人が顔を上げた時にはその顔には笑顔が見えた。


直斗は熊耳を付け水着に着替えた魅沙の後を追って海に入る。


魅沙の水着姿はなかなか魅力的で直斗は思わず見とれてしまった。

その直斗の足を白夜が踏みつけ正気にもどる。

怒る白夜に謝り、なんとか許しを得て白夜と一緒にシルク海老を探す。


海の中に入って直斗は驚いた。

奏から身に付けるだけで効果があると聞いてはいたが、これ程とは思わなかったのだ。


海の中を飛ぶように動ける。

海水の抵抗を感じない。

直斗は頭で思うだけで海の中を自由に移動できた。


周りを見ると、氷依達も楽しそうに海の中を飛んでいる。

これだけの性能をみせる、この指輪をあの値段で買えたことに直斗は月夜に感謝した。



宿に戻った直斗が奏に聞いたところ、本来なら400万はするのだと言う。

しかし水中に潜る依頼事態が無い為、買い手がつかず当時の値段では誰も買わなかった。

月夜達に代替わりして値段を下げても買い手がつかない。

更に客足もほとんど無いことから直斗の話を聞いた月夜がこれからもご贔屓にということで、あの値段になったらしい。


まあそれはこの漁が終わってから、直斗が聞いた話である。




直斗達は目的のシルク海老を直ぐに発見した。

海底にウジャウジャと蠢いている。

直斗達は慎重にシルク海老を輪に通すと、カナに言われた通りに固める。


それを一匹づつ、船に積み上げる。

一回。昼飯がてら休憩をとったが、あとはノンストップでシルク海老を捕獲した。

陽が沈む夕方にはスワン号の両サイドにシルク海老が吊るされた。

さすがにスワン号の上にあげると沈むとカナさんに注意をされたからだ。


カナさんもまさか、1日で終わるとは思ってなかったらしく目を丸くしていた。

慎重にスワン号を操縦してカナさんは港に戻る。


港に戻った直斗達は手分けして、シルク海老を梱包して四人で分けてギフトにしまい依頼は完了した。

直斗は約束どおりに2日分のお金をカナに支払う。


カナは遠慮したが直斗が強引に言って押し通した。

2日の所を1日で終わったとしても、カナさんには2日間も船を押さえてしまった事に直斗は責任を感じたからだ。


そんな事は気にしなくてもいいとカナさんは言ったが結局、直斗の誠意に負けて受け取った。

カナは次があったら安くするからまた宜しくねと握手をして別れた。


宿に戻り氷依にどうしようかと相談する。


「フッ!決まってるじゃない!明日も海で遊ぶのよ!」


その一言に全員が賛成して、翌日は奏もいれて海で遊びたおした。


海の夕日を見ながら直斗達は奏と別れ日本に帰った。

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