再開
直斗が白夜を抱き抱えて控え室に戻ってくると、氷依の意識が戻っていた。
花さんがパーティーの中で一番良い回復薬を預けてあるので、それを貰い白夜を癒す。
両手をワキワキ動かし具合を確かめる白夜を椅子に座らせて氷依に声をかけた。
「気がついたんだね、調子はどう?」
「………負けたわ………」
氷依に似合わない落ち込んだ表情している。
花さんや魅沙に視線をやると氷依と同じに悲痛な顔をしている。
(氷依がこんななら仕方がないか)
二人とも意識が回復した氷依が負けた事を凄く気にしている為に声がかけずらいみたいだった。
「そう、なら負けたままでいるのかい?」
キッ!と直斗を睨みつける氷依。
「白夜も負けたよ、でも氷依みたいな顔はしていないよ」
直斗は白夜に振り返り笑顔を見せた。
「当然です!マスター。次は勝ちますよ白夜は!」
氷依はジーと白夜を見つめていたが、思いっきりため息吐いた。
「ハア!………もう大丈夫よ直斗。私らしくなく次を考えられなかった。私も………次は勝つわ!」
室内の沈んだ空気が変わり、花さんと魅沙に安堵の表情が見える。
直斗は宿に帰ろと言って白夜をオンブして担ぐと控え室のテントを出る。
その時、運営スタッフの一人が早足でやってきた。
「お待ちください。これを受け取ってください」
スタッフが封筒を白夜と氷依に渡す。
「これは?」
「準優勝の賞金と3位の賞金です。いきなりの変更にも関わらず出場していただいてありがとうございました」
頭を下げたスタッフの人は会場の片付けに戻っていった。
「へぇ、10万円がはいっているわ」
氷依は封筒の中身を確認して、それを花に渡す。
「花、それで高回復薬を買い足ししなさい。それと魔力回復系のアイテムもね」
「………はい。お嬢様」
恭しく花さんは封筒を受け取りギフトの中にしまう。
白夜は封筒の中身を見ずに直斗に渡す。
「マスター、どうぞ」
「え?………うん。僕が預かろう。後で白夜用の財布を買いに行こうか?」
白夜は嬉しそうに頷き、直斗の背中に顔を埋める。
ちなみに封筒には50万円が入っていた。
今回に限っては皆に分配と言うわけにはいかない。
氷依も白夜も自分の力で勝ち取った物だからと魅沙も花さん遠慮したからだ。
直斗も白夜のお金に手をつけるなど考えてもいない。
ただ白夜のお金を預かるだけと心得ている。
直斗達は宿に戻りそれぞれの部屋で休む。
三時間程、休憩してから氷依の部屋に集まり明日の事について話し合う。
夕飯はその時に外で買ってきて食べる事になった。
買い出し係は魅沙と花さん、直斗は白夜の側に残る事となった。
(白夜のレベルが3になってるな)
白夜をベッドに寝かせて、その側に椅子を寄せて直斗は座っている。
(攻撃力と敏捷性が上がっている。僕のは攻撃力と魔力ばかり上がっている。何か法則でもあるのか?)
魔法が使えない直斗には魔力ばかり上がっている事に首を傾げる。
魔法結晶なら、なんとか使えるが近接戦闘に特化している直斗には中々使い所が難しかった。
(やっぱり、あの時みたいにガントレットの中に入れる事を考えて使うしかないかな?)
そんな事を考えながら時間が過ぎていった。
魅沙が直斗達を呼びに来た。
すっかり回復した白夜は歩いて直斗と共に氷依達の部屋に向かう。
部屋中にいい匂いが充満していた。花さんと魅沙が買ってきた夕飯をありがたく頂く。
味の方は花さんがしっかりと確認していて美味しかった。
夕飯を食べ終わり、花さんからお茶を貰う。
「明日の事だけど、午前9時に宿を出て今回の依頼で船を出してくれるカナさんの所に行く」
「そのカナさんは信用できるんですか?」
「うん、ギルドからの紹介だから大丈夫だと思うよ魅沙さん」
「そうですか、ならこちらで用意するものは?」
「必要な道具はカナさんに頼んである。一応、二日間付き合ってもらうから、初日になにかあったらその時に考えよう」
「そんなに問題はないと思うわよ、Dランクの依頼だもの」
「それでも一応ね」
楽観派の氷依と慎重派の直斗。
魅沙は直斗よりで花は氷依に付き従うのみ。
結局、直斗は氷依の言が正しいと判断して解散した。
午後9時を過ぎて直斗は外に出ようか悩む。
出歩いてもいいのだが面倒くさい。
直斗は白夜と部屋に戻ろうとした時にスマホが鳴る。
(ん、………奏からだ。そういえば今日の夜に着くんだった)
直斗は電話にでる。
「はい、直斗です」
「お!直斗、久しぶり。今、駅に着いたんだけど会える?」
「いいよ。僕が駅に行くから待ってて」
「は~い、早く来ないとナンパされちゃうから~」
明るい奏での声を聞いて直斗は微笑む、白夜はジーと直斗を見て少しムッとした。
「マスター、出掛けるのですか?」
「ああ。知り合いの子が何かを持ってきてくれたらしい」
「氷依さん達には?」
「いいんじゃないかな、遅くなるならメールをしておくよ」
直斗と白夜は奏を向かえに駅へと向かった。
その背後に後を追うように魅沙がコソコソと直斗に着いていったのを知らずに。
ソルトの駅まで20分ほど、直斗は駅に着き奏を探す。
「さて、どこに居るかな?」
直斗は駅前をキョロキョロと見渡す。
「あっ!直斗!」
自分を呼ぶ声に直斗は振り向く。
「奏、久しぶり。元気にしてた?」
「うん、バッチリ!………ん?その子は………精霊?」
「そうだよ、僕の精霊。白夜だ」
「白夜と申します。奏様ですね、以後お見知りおきを」
「ひぇ、人型の精霊なんて………久しぶりだよ」
驚いたように奏が声をあげる。
それから奏がお腹が減ったというので、近くのお店に行き話をすることになった。
「それで、あの方は?」
奏が店の前で振り返りコソコソしている魅沙を指差す。
「魅沙さん?」
「ハハハ、どうもです直斗さん」
「なんでここに?」
「えっと………………宿から出るのを見まして………後を着けて着ました」
ペロッと舌を出して魅沙が恥ずかしそうに直斗達にの前に来た。
「そう………………、えっと奏に紹介するね。仲間の魅沙さん」
「そうなんだ、奏です。よろしく魅沙さん。その犬耳、素敵ですね」
「はう。ありがとう、よろしくお願いしますね奏さん」
着いてきた事はしょうがないので、直斗は魅沙も誘ってお店に入った。
「さあ!飲むよ!直斗も魅沙もいける口?」
「いやいや、未成年だから遠慮します」
「ブー。まあいいや、お姉さん生一つ!」
奏で以外はアルコール無しの飲み物を頼む。
お腹が減った奏の為に幾つか料理を注文しておいた。
「で、月夜さんの言っていた良い物って?」
奏が美味しそうにビールを飲み干し、追加注文している。
直斗は奏が落ち着くのを待って聞いた。
「へっ。あー!そうそう、姉さんが直斗の話を聞いてね、これをどうかって持ってきたんだ」
奏の荷物はリュック一つ、ごそごそと中を探り奏が銀色の指輪を取り出す。
「?、それは」
しげしげと直斗達は指輪を見る。
「今回、海に潜るんでしょ?それなら月夜姉さんがコレが役にたつはずって、持たせたの」
何か模様が入っている訳でもなく、ツルツルの銀の指輪だった。
直斗の指には小さいと思ったが、大きさが自由に変えられるらしく便利な魔法具だ。
「どう使うんです?」
「えっとね、身に付けると水中で自由に動けるの」
「えっ!………本当に?」
「うん!姉さんがそう言ってたよ。エアキャンディの最上位版だって。しかも水中でも動きが陸と変わらない優れ物!………どう?一個8万円」
う~んと唸る直斗。
それが本当なら確かに買いだ。
しかし………安すぎるのではと直斗は思った。
「マスター、それ使用回数がありますよ」
「え?」
白夜がストローで飲み物を飲みながら直斗に注意をした。
「奏。どういうこと?」
「えっ?………………姉さん!謀ったな!」
奏が白夜の指摘に顔がひきつり、慌てて指輪を確認する。
お店のテーブルに額をつけんばかりに頭を下げる奏。
「ごめんなさい。姉さんから聞いていなくて私の確認不足でした!」
「うん、頭をあげて奏。それで何回くらい使えるの?」
見た目、少女の奏に頭を下げさている図はかなりアレで、直斗は内心動揺をしていた。
「はい!探ってみたところ、あと10年は使えます。………………いかがですか?」
上目づかいに直斗を見る奏、それを聞いて直斗は即決する。
「買います!効果範囲は?」
「このタイプは一人専用です」
「なら、5個ください」
「うっ!全部ですか?」
「?、何か問題でも?」
言葉を詰まらせた奏に直斗は疑問を口にする。
「いえ………………はい。どうぞ」
あきらかに肩を落とした奏は指輪を直斗に差し出す。
それを魅沙に氷依達の分の3個を渡し直斗と白夜は早速、身に付ける。
「じゃ、コレで」
と直斗はギフトを奏の前に出し支払いをする。
「はい。お買い上げありがとうございます」
奏は何故か気落ちした感じの声で直斗に頭を下げた。
内心、首を捻っているとスマホに月夜からメールが届いた。
ー指輪を~買ってくれてありがとう~、奏は大丈夫~?ー
何が大丈夫?なのかわからなかったので、直斗は月夜に返信する。
ーどういう事ですか?ー
ーあら~、奏ちゃん~海で遊び気まんまんだったから~。持っていった指輪~全部、売れちゃったでしょ~ー
なるほど、そういうことか。と直斗は合点がいった。
月夜に助かりましたと最後にメールで送り、ビールを煽る奏を見る。
直斗は氷依にメールを送り、帰りが遅くなると伝えた。
指輪を返す訳にはいかないので、今日は奏に遅くまで付き合ってやろうと思ったのだ。
「すいません!もう一杯!」




