小鹿の直斗
怪我から復帰し、久しぶりの豊穣学園に直斗は登校した。
横にちっこい白夜を引き連れて。
周りから奇異の目を向けられながらも直斗は気にせずに自分のクラスに入る。
クラス中の視線を集めるなか、直斗をクラスの女子がクスクス笑う。
(?)
初めは白夜の事で笑われているのかと思ったが、明らかに直斗を見て微笑んでいる。
軽蔑や侮蔑などではなく、なにか微笑ましい感じの笑いかたに内心、直斗は首を傾げる。
じゃあ、男子はというとあからさまに目をそらされる。
(マスター、人気者ですね)
直斗の膝の上に座り前を見ている白夜からのテレパス。
他人には聞こえない白夜と直斗の繋がりを示す証拠でもある。
(でも?なんか変だよね。クラスの反応が微妙にチグハグだ)
その理由は放課後にパーティーメンバーが集まった氷依の部屋で判明した。
チャイムが鳴り、五堂教師が授業を始める。
チラリと直斗と白夜を五堂教師が見たがなにも言わずに普通に授業を開始した。
何事もなく授業が進み、お昼休みとなったときに五堂教師から呼び出しがかかった。
「直斗。それがお前の精霊か、なかなかの力を感じる」
「えっ、そうなんですか?」
「ああ。大事にしてやるといい」
五堂教師は白夜の頭を撫でながら直斗に言う。
「それが用事でしょうか?」
「ん。いや話しはこれからだ、直ぐに済む。お前のパーティーが帰還して報告は白亜から聞いたが、リーダーとしての依頼完了の手続きがあるんでな」
「と言いますと?」
「先ずは戦利品は水牙大蛇の牙でいいな?」
「はい。それしか残らなかったので」
「よし。次は達成ポイントたが4等分でいいか?」
「なぜそんな事を聞くんですか?」
「あぁ、中には隠れているだけで貢献しない奴もいる。リーダーがそれを判断してポイントを割り振る事もできる。ただし不正、つまり自分が有利になるように配分をした場合は死をもって償わせる。それが今の日本のやり方だからな」
「罪を犯した者には死の制裁?ですか」
「そうだ。この聖日本帝国のただ1つの法だ。だからよく考えて申告しろ」
「考えるまでもないです。4等分でお願いします」
「フフ。即答か、わかった。今は仮ポイントだったがこれで正式にポイントが登録された。もう良いぞご苦労だったな」
「はい。失礼しました」
直斗は教員室から出ると馴染みの中庭にと移動する。
終始黙って2人の話を聞いていた白夜は直斗と手を繋いで緑の多い中庭に満足気に微笑む。
直斗のお気に入りのベンチで、白夜特性弁当を食べる。
精霊には物を食べる習慣などないのだけど、直斗が箸で白夜に食べさせてやる分には食べてくれる。
自分で食べると力にならないが、直斗を介してだと力になるらしい。
だから直斗は極力、白夜に物を食べさせる事にしている。
いくら駄々漏れといっても、それがいつ止まるかわからないから。
今ではすっかり定位置となった直斗の膝の上で笑顔で直斗から食べさせてもらっている白夜。
「それにしても白夜のような子は他にもいるのかい?」
「はい、いますよ。人型までなれるのは珍しい方ですが」
「へぇ。白夜はレアか?」
「アハハハ、違いますよ。マスターがレアなのです。精霊はしょせんマスター次第で強さが異なります。精霊召喚も、普通はもっと高レベルじゃないとできません。低レベルの召喚はリスクも高いので普通はギフトに選択すらでません」
「リスク?」
「はい!。一般的に言う暴走のリスクです」
「暴走ねぇ?」
「恐いですよ。最大でこの学園ごと消滅で、最小で召喚者が喰われるだけですみます。ですから8割以上の成功率がないとギフトに選択が表示されないのです」
「僕は8割以上になったから選択がでた?」
「マスターは10割ですよ。私に名を付けてくれましたので!」
「名?、あれだけで………」
「マスター、名は精霊に力を与えます。世界に干渉できる程の力を、ですから………マスターと白夜は相思相愛なんですよ!」
最後ははぐらかされた気もするが、白夜の言いたいことも大体わかった。
要は互いに必要と感じたから白夜と繋がった。
僕は力を白夜は繋がりを求めて。
のんびりと学園の中庭で過ごした直斗達は午後の授業をそれなりにこなし、放課後に氷依の待つ部屋へと向かう。
メールにて部屋に行く事と白夜の事を伝えてある。
氷依からは楽しみにしているわと返信があった。
学園に確保された氷依の部屋に行くまでの間に主に女子から微笑ましい視線を感じる。
(なんだろう?この嫌な予感は?)
背筋がゾワゾワする。
直斗は部屋の前に来るとノックをして中に入る。
すでに直斗以外の全員が集まっていた。
「直斗さん、お帰りなさい。元気な姿が見れて良かったです」
「直斗様、改めてお礼を。あの時は助けてくれて有り難うございました」
魅沙と花さんがそれぞれに直斗を迎える。
氷依はいつもの机にいて、なにやらニヤニヤと直斗を見ている。
「な~お~と!可愛い子を連れてるじゃない、きちんと紹介しなさいよ」
「そうだね。白夜おいで」
直斗の後ろで魅沙と花さんに捕まって可愛がられていた白夜が、タタタと直斗にしがみつく。
「まっマスター!汚されました。2人がかりで………ウッウッウ………………」
直斗の腹の辺りで白夜が頭をグリグリとしてくる。
「はいはい。落ち着いてここに座ろうか?」
直斗はソファに腰かけて、白夜を膝の上に乗せる。
「へえ、随分となついたわね。あの直斗が」
「まぁな。あれだけ献身的に看病されれば情もわくよ」
「ふ~ん。そんなものかしらね。で、直斗。その子が直斗の精霊で間違いないのね?」
「ああ。ギフトの中にいた黒猫の精霊がこの白夜だ。人型になれたのは僕のせいらしい」
「直斗の?………まあいいわ。今日は次の依頼の話をしましょうか?」
「次?もう決めてあるのか?」
「ええ。でも今の面白い情況を話すのもいいわね」
女子3人の顔が直斗に集中してニヤニヤと笑う。
思わず引いてしまう直斗。
「なにが面白いのかな?」
「ねえ魅沙、教えてあげなさいよ」
「ヘッ!私ですか?……………えっと直斗さん。なんと言いましょうかその………学園中に小鹿の直斗と言うあだ名と言うか二つ名がついたといいますかその………はい」
「はぁ?小鹿の直斗ですか?」
「アッハハハハ!おっかしぃ~。直斗、あんた保健室から帰る所を見られていたんだって、プルプルと両足を振るえている姿から女子の間で人気らしいわよ」
「ちなみにその動画も裏で人気らしく直斗様の姿が………フッ!」
「………………………」
直斗は頭を抱える。
(なんだそれ、小鹿の直斗。クラスの女子やらの視線はそのせいか)
「マスター、それも一種の名声ですよ」
「いや、違うからそれ」
「あ~おかしぃ~。直斗も出世したじゃない。1年で二つ名なんてAクラスでも稀よ」
「………、まあいい。それで男子の方は?」
「はい?」
「なんの話し?」
魅沙と氷依が首を傾げる。
「クラスの男共が視線を反らすんだが」
「あ~、それはきっと直斗様のランクを見たのでしょう」
「ランク?」
「はい。これです」
花さんが自分のスマホを直斗に見せる。
そこには狩人ランキングと書いてある。
―1位トルネード-
と書いてあり、個人のポイントも載っていた。
「これ?」
「あぁ、それね。まだ始まったばかりなのに気にしている小心者が多いのよね」
「そうですね。私のクラスでも嫌な視線を感じます。まだそれだけですがこの先不安です」
「ふん!魅沙、もし何かあったら私に言いなさいよ。そんな馬鹿は地獄に落としてやるわ」
「はい、お嬢様。魅沙様に手をだしたらどうなるか………フフフ」
そう言う花さんの全身から黒いオーラが見える。
魅沙は少しホッとした表情をした。
「まあ、ランキングなんて直ぐに入れ替わるわ。いちいち気にしてもしょうがないのよ」
「?、氷依。他のパーティーはもっと高ランクの依頼を受けているのか?」
「ええ。Aクラスは依頼制限に縛られないもの。私達は直斗のせいでB級までだけどね」
「うっ。けど、いずれは制限が解除されるだろ?」
「ええ。ポイントで15万を越えれば解除されるわ」
「15万ですか?先は長いですね」
「そうね。だけど高ランクがそう簡単に終わるわけないのよね~」
「?」
「なに?わからないの。私のクラスの殆どが高ランクの依頼を受けて向こうに行ってるわ。でもね………達成するには結構な準備が必要よ、お金とかね」
「あっ!」
「そう。それにね………ウフフ。まだ殆どがのパーティーが帰って来てないのよね、うちのクラス」
「はぁ?だってもう2週間………」
「ほんと、馬鹿ばっかり。見栄や気位ばかり高い連中はそうとう苦労をしてるわよきっと」
氷依は心底、意地の悪い笑い方をして皆を見つめる。
「なら僕らの次の依頼は?」
直斗は先ほどの会話で氷依が次の依頼を決めた事を思い出して聞いてみた。
「はい!これよ!」




