海へ
直斗は氷依が決めてきた依頼を眺める。
場所は前回と同じ火の国。
取る獲物はシルク海老を45㎏。
期間は3日。
あっちだと36日間までに帰ってこなければならないということなんだが。
直斗は頭の中でざっと計算して氷依に聞く。
「これを選んだ理由は?」
「簡単な事よ、海で泳ぎたいのよ!」
「………えっ?」
「だから!海で泳ぎたいの!依頼じたいDランクの以来だもの簡単よきっと」
直斗は再び依頼を見る。
そこには確かにDランクと書かれてある。
直斗は首を傾げながら氷依を見る。
「氷依がDランク?………なにか悪い物でも口にしたか?」
「はあ!なによ嫌なの!」
氷依の心理がわからなくて、混乱する直斗に花さんがボソッと口にだす。
「直斗様、お嬢様はお体を心配しているのです。ですから………」
「ちょっと!何を言うのよ花、そんなんじゃないんだから!バカンス、そうバカンスよ!遊びに行くついでに依頼をやるのよ」
椅子から立ち上がり氷依は花さんに詰め寄ると、最後まで花さんに言わせずに囃し立てまくる。
直斗はそんな2人を見て、魅沙に視線をやると彼女が頷く。
これがパーティーかと直斗は思った。
「わかった。この依頼を受けよう」
「うゎ。海ですか私、初めてですよ」
「私もよ魅沙。遠くから見たことがあるぐらいで初体験だわ」
「お嬢様。海ならば水着が必須です」
「みずぎ?」
「そうです。海で遊ぶための装備品です」
「そう、そんなのがあるのね。侮れないわ」
「本当ですね。水着かぁ、どんなのだろう?」
海へ期待と希望を夢見ている3人を尻目に直斗は一人、茅の外。
直斗はふと考える、あっちとこっちの時間の違いに。
(マスター、そんなに気にする事ないですよ)
(?、なんで)
(だって、向こうと此方の時間経過は同じですもの)
(えっ?だって………)
(フフ。たぶん学生だけに作用するように仕組まれた、時の精霊の仕業でしょう。この地には最高位の精霊や神竜、異世界の神格やらがゴロゴロと居ますから 流石は勇者卑弥呼です)
(卑弥呼が勇者?)
(おっと、しゃべりすぎました。マスター、今は気にせずにいましょう。そのうちです)
白夜の目がニンマリとしている。
わざと言いましたよ、といっているのがまるわかりだ。
直斗はハァ、とため息を吐いて考えるのを止めた。
白夜が言っているのが本当なら考えるのが馬鹿らしい。
卑弥呼陛下の思惑など知りたくもないし面倒くさい。
それに今考えると5エリアに存在する狩人の学校の生徒に会わなかったのも変だ。
(まさか多重構築世界………)
(マスター、そこまでです。それ以上はコアに気づかれます)
(?、………わかったよ)
先程と違い真剣な表情の白夜を見て、直斗は即座に今
考えていたことを放棄した。
直斗は相変わらず海の話で盛り上がってる氷依達を一旦制する。
「盛り上がっているところが悪いが、出発する日にちを決めよう」
「なら今から行きましょう!」
「今からですか?氷依さん」
「そうよ!話をしていたら海への渇望が止まらないわ!」
「お嬢様が望まれるならば私は賛成します」
「う~ん、私も大丈夫かな。直斗さんは?」
「僕もいいよ。暫くは学園に居たくないし」
「「「ああ~!!!」」」
3人がそうだろうね。という感じに頷く。
直斗は氷依達とギフトを繋ぐと依頼開始のボタンを押す。
「じゃあ、行くよ!」
直斗が皆に声をかけると同時に部屋の中から直斗達の姿が消えた。
再び訪れた異世界。
直斗達の目の前には前回と同じ、光景が広がっていた。
「相変わらず同じね、この景色」
氷依が見るのは最初と同じ、冒険者が受け付けに並ぶ姿にビルの中をおもわす景観。
「ここはどこの町のギルドなんですかね?」
魅沙がキョロキョロと辺りを見渡す。
今回は近くに案内人らしき職員がいないために自分達で知るしかない。
「ここは火の国の海辺の町ソルトですよ。魅沙さん」
直斗の横にいる白夜が魅沙を見上げながら教えてくれる。
「へぇ、白夜ちゃん詳しいね」
「はい。私はギフトとも繋がっていますので情報も素早く取り出せます」
「………便利ね。私も1人ほしいわ」
氷依の言葉にササッと直斗の影に隠れる白夜を直斗が頭を撫でて安心させる。
「今回は直接、依頼の場所に来たんだね。ならまずは宿からかな?」
「ええ、ギルドの人に聞いてみましょう」
氷依は辺りを見渡して、案内係ぽいギルド職員に話しかけにいった。
「海の見える宿があるんですって、そこに行きましょう!」
嬉しそうに氷依が職員さんから聞いてきた宿の事を直斗達に伝える。
今回は講習とかは必要ないので早速ギルドを出る。
海辺の町ソルト。
やはり近代的な建物で造られている家や道路など直斗達にも馴染み深い。
時おり吹く風の匂いに直斗は海の存在を感じた。
もう陽が落ち始めている。
赤い夕日が照らし始めているソルトの町を直斗達は教えられた宿まで歩く。
職員さんの話だと歩いて10分程で浜辺まで出る、そこから灯台の見える方へと道沿いに歩けば宿があるとのことだった。
ソルトの町自体は普通の大きさの町並みで、漁業と年中泳ぐ事ができる気候で人気の町だと白夜が説明してくれた。
冒険者ギルドの職員さんが言った通りに進んで行くと幾つもの宿やお店などが存在した。
その中で青色の壁の宿に到着。
直斗が代表で宿に入り宿泊できるかを主人に聞いた。
「すいません、泊まりたいのですが?」
「おう!少年1人か?」
「いえ。5人で、2人部屋と3人部屋をお願いしたいのてすが?」
直斗が宿に入り、ここの主人らしいおっちゃんが直斗に気づいて声をかけてきたので、予め決めていた部屋割りを伝えた。
「おう!大丈夫だ。ただ、食事はやっていねぇ。外で済ましてもらうが良いか?」
「ええ、問題ないです。………あっ!風呂もないですか?」
直斗は大事な事を聞くのを忘れていたので、慌てて聞いた。
これを忘れると氷依などは間違いなく機嫌が悪くなる。
「お?………あぁ、問題ない。うちは深夜まで風呂に入れるから好きに使ってくれ」
「深夜までなんて珍しいですね?」
「そうか?まあ、この町が初めてならそういもんらしいな。ここは海が近いからな、その時間まで遊んでいるお客もいるからサービスでやってんだ」
にこやかに言う宿のおっちゃんに直斗はお世話になりますと言って、氷依達を宿に入れる。
とりあえず3日分の宿の料金を払うと直斗白夜組、氷依魅力花さん組に別れて案内状された部屋に入る。
直斗は部屋に入り暫し寛ぐ。
この後は氷依達と夕食を食べに行くことが決まっている。
折角なので魚料理を食べようとなっているので楽しみだ。
本来なら白夜はギフトの中にいれて、直斗の一人部屋にとも思ったが出たり入ったりと隠すのが面倒くさいと直斗が思ったので、このまま白夜には人として直斗の側にいてもらう事にした。
白夜も喜んでくれたので、これで良いだろう。
窓から見る夕日に染まる海を直斗は心の底から美しいと感じた。
きっとこの景色を氷依達も同じ想いで見ているだろうなと直斗は思った。




