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キラーラビット

異世界に来て最初の夜が明けた。

昨日は早めに寝たにもかかわらず、時計を見ると午前9時10分。


「12時間も寝るとは………」


疲れなど感じていないと思っていたが、精神的にきていたらしい。


「お腹減った………」


腹の虫が催促する。

お腹をさすり着替えて1階に降りる。


「あっ!おはようお兄ちゃん!」


下に降りると宿のアイドルさゆりちゃんがさっそく挨拶をしてくれたので直斗も返す。


「おはよう。さゆりちゃん、お腹が空いたから用意をお願い」


それを聞いてさゆりちゃんが、タタタ!と奥に駆けて行くとお母さんと叫び直斗の朝食をお願いにいった。


小さい体でさゆりちゃんがゆっくりと直斗の朝食を運んでくる。


「お待たせお兄ちゃん!」


おぼんに乗せた朝食を直斗の座っている席に置いて、さゆりちゃんが直斗の正面の席に座る。


「………さゆりちゃん?」


「な~に?」


「なんで?座っているの?」


「いけない?」


キョトンとした表情で直斗を見つめるさゆりちゃん。


「………はぁ。いいよ」


これもこの宿の約束事なのかと諦めて直斗は朝食を頂く。


「美味しい。さゆりちゃんのお母さんは料理上手だね」


「うん!」


嬉しそうに頷くさゆりちゃん。


「氷依達はもう済ませたのかな?」


「お姉ちゃん達はまだだよ。お兄ちゃんは今日はどうするの?」

「僕かい、今日は色々と街の中を見て回るつもりだけど」


「ふ~ん。お兄ちゃん、蛇さんをやっつけてくれるんだよね?」


「?。ああ!よく知っているね」


「お母さんと配達屋さんの話しを聞いたの」


「へえ、そう。」


その配達屋とやらまで話しが広がっていることからガゼが相当、力をいれていることがわかる。


「お兄ちゃん、私は信じているから!」


さゆりちゃんはニッコリと笑いテーブルを離れていった。

直斗はさゆりちゃんの意図を理解して苦笑いを浮かべる。


(ちゃっかりしてるな、さゆりちゃん。さすが異世界だアレが子供でも大丈夫だとは………)


直斗は残りの朝食を平らげて街に散策に出る。

首都マズウェルでもゆっくりと見て回る暇がなかったので、ファヤの街で異世界を知るいい機会だった。


改めて見るとファヤの街の道は綺麗に舗装されている。

その道を踏みしめて直斗は街の中心部に向かって歩く。

宿は木造家屋だったが、街の中心地は石造りの建物が目立つ。


街行く人を観察すると人や獣人に蜥蜴人と多種多様な人たちを見ることができた。


(種族ごとの争いなんてないのか?しかし………そんな世界なんて無い………と思う。まだ表面だけしか見てないから………)


ふと思い立った直斗は裏通りへと足を向けた。

大通りの賑わいが嘘のように人通りが少ない、直斗は足の向くまま裏通りを進む。


(汚れやゴミが少し目立つぐらいでわりと綺麗な道だ)


それはこの辺りでは治安が良い事を意味している。


(貧民街か治安の悪い場所に行ってみようかな)


本当にそんな場所があるのかは不明だが、直斗は今日一日を気の向くままに歩んでみようと思った。


街の人に一番安い宿がある場所は何処かを尋ねてそこに向かう。

中心地から西の外れにその宿があるらしい、進むにつれて家の外壁が痛んでいる家屋が目立つ。


(これは当たりかな?)


薄暗い裏通りを直斗は気にせずに歩く。

直斗が密かに思っていることは、レベルを上げるのに魔物を狩るしかないのかということ。

昨日、ベッドに入りレベルについて考えてみた。


スマホに取り込んだ、初心者の歩き方には魔物はレベルが上がりやすいと書いてあるだけだった。

なら、経験値対象が人だったらどうだろう?人殺しは避けたいが罪人なら仕方がない。


それも凶悪な罪人ならいうことなし。初めての異世界で情報のない直斗にはこうして怪しい場所を探すしかなかった。


(まぁ、あくまで経験値を貰えたらいいなぐらいだから期待はしてないけど)


と考えていると、直斗の進む先で言い争うような声が聞こえてくる。

直斗は早足で声のする方へと向かった。


「おい!さっさとだせよ!」


「逃げられると思うなよ!ケン君よ!」


直斗は気配を消して、壁際から声のする通りを見る。

大人2人が子供を脅しているようだ。

一人はひょろ長い男、もう一人は豚みたいにデブっている男だった。


(あっ!本当に豚だ。この世界の他種族の法則がわからん。耳と尻尾だけだったりあの豚人のように7割方、獣の容姿だったりと本当にバラエティーにとんでるな)


「今日の上納金を払えやガキ!」


「いっ嫌だ。それに今月分は払っただろ!ムジカに」


「ああ!それとは別なんだよ!ヒハヒヒャ」


豚人が子供の逃げ道をふさぎ、ひょろ長い男が子供の顎を掴み視線が会うように顔を固定している。


「アッアッ、ひやだ!」


それでも男の子?だと思うけど抵抗の意志を持ち続けている。


(そろそろ出ようか)


男の子には怖がらせて悪いが絶好の機会に直斗が壁際から出でて注意してやろうかと進みでようとすると、聞き馴染みの声が聞こえてきた。


「やめなさいよバカァ!」


(え~!)


直斗は嘘であってくれと念じながら男達の方を見ると、そこに更に小さい影が増えていた。


(なんで、さゆりちゃんが?)


「いい大人が子供あいてにゆするなんて最低よ!」


「ああん!ガキが生意気いいやがって………女か」


「おい?なにを考えてやがる!」


「へへへへ。良いことだよアーハハハ。こいつ売りにだそうぜ!」



ひょろ長いの男がそう言ってさゆりちゃんを捕まえようと手を伸ばす。


(まずい!)


直斗はいつでも飛び出せるように準備をしていたが、豚人がひょろ長いを止めた。


「やめろよ、幼女だぞ。売るならくれよ!」


「ああ!金にならねぇ事をほざくなよ。ああ!」


豚人が止めに入った時は良心なんてあるのかと少し安心したのだが、口に出した言葉がグズだった。


さゆりちゃんは2人がいい争うのを怯えた目で見ていたが、庇った男の子を見て少し勇気がでたみたいで姿勢を低くして逃げようと静かに後ずさる。


「おい!逃げるぞガキが!」


ひょろ長い男がさゆりちゃん達に気付き、慌てて豚人がさゆりちゃん達の行く手を塞ぐ。

「せっかく来たんだからお兄ちゃんと遊ぼうな!お嬢ちゃん」


「そうそう、楽しいよきっと。グヘヘヘ。っとお前じゃまだ帰れケン」


そう言うと豚人がケン君の襟首を掴み放り投げる。

2~3メートルほど転がるケン君。


直斗は悔しそうなそれでいて怯えた表情のケン君がヨロヨロと立ち上がると、さゆりちゃんを見ずに逃げ出した。


(おい!少年。さっきまでの闘争心はどこにいった!)


逃げだしたケン君の背中を見つめながら直斗は心の中で叫んだ。

さゆりちゃんは逃げだしたケン君の行動に茫然とした表情から、自分をニヤニヤと見る男達の顔を見て泣きそうな顔をする。


「お嬢ちゃん、いい勉強になったな!」


「ゲヘヘ。まったくだ」


もはや動けないさゆりちゃんを捕まえようと豚人が手を伸ばす。


「イヤイヤ!だれか、たすけて………」


「くるわけねぇだろ、こんなところになあ!」


「ほほ、お嬢ちゃん。正義の味方なんていないだよ、大人しくしてれば痛い目にはあわないからなっな!」


(さゆりちゃんを泣かせてしまった………)


ここでプチンと直斗の中で何かが切れた。


「おら!来いよ」


「「お前が地獄へ行け!!」」


直斗が気配を消してひょろ長の男の背後をとり、その顔面へと拳を叩き込むと同時に豚人の頭上から人が降ってきた。


謎の人物の登場に直斗は驚いたが、敵ではないと判断してひょろ長の男をぶちのめす。背後から横にまわり顔面へのパンチ、隙だらけのひょろ長が吹き飛ぶ前に直斗はひょろ長の腕を掴み自分に引き寄せる。


意識が半分飛んでいるひょろ長。

直斗は無抵抗のひょろ長の喉に渾身のラリアットを喰らわせた。

ひょろ長の喉仏が潰れる感触、ひょろ長は空中で2回転ほど回転して地面に激突、そのまま動かなくなった。


(よし!豚人は?)


直斗はすぐさま豚人のいる方を見る。


「きみ、なかなかやるね!」


直斗はその目を疑った。

意識の無い豚人の上で全身ピンクのコーディネートで顔だけウサギの着ぐるみをかぶった女性らしき人が直斗に親指をあげ称賛している。


「………ハッ!さゆりちゃん。大丈夫?」


さゆりちゃんは怪しいピンクの人を見てから直斗を見る。


「お兄ちゃん?………」


涙に濡れた瞳が理解の色を示すとさゆりちゃんが直斗の胸に飛び込む。


「わ~ん!お兄ちゃん、お兄ちゃん。怖かったよ~!」


直斗はさゆりちゃんが落ち着くように髪を撫でながらピンクのウサギを見る。

ウンウンと頷いているウサギと目があった。


「この街の未来も明るいね!君のような若者がいるんだから。ん?私かい、私はこの街をあず………………正義の味方!キラーラビットだ!」


ウサギの顔の着ぐるみの中でドヤ顔をしいるのが伝わる。

本能的に直斗はこいつは氷依と同種の人間だと悟った。


(かかわり合いにならない方がいいな)


直斗をある意識を込めてさゆりちゃんを撫でる力を強める。

ピク!と反応して直斗を見上げるさゆりちゃん。


「「キラーラビットさん!助けてくれてありがとー!!」」


遠くまで届けとばかりに大声で言った直斗は、さゆりちゃんをお姫様抱っこをしてその場から逃げるようにキラーラビットに背を向けて走り去る。


「え?ちょっと?なに?」


戸惑う声をだすキラーラビットを無視する。

直斗は奥の方から駆け寄ってくる足音に気づいていた。

キラーラビットは着ぐるみが邪魔して聞こえていないだろう。


「え!なによ!あなた達は、触らないでよ!」


直斗はチラリと後ろを振り返るとキラーラビットが男2人の喉を圧迫して吊り上げている異常とも思える光景だった。


(あれなら問題ないよね?)


抱えているさゆりちゃんと目が合うと2人して頷きあった。

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