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第1回 作戦会議

湖を後にした直斗は夕暮れに染まる山にファヤの街を見て、綺麗だと思った。


それを台無しにしたのは氷依のこの一言。


「さあ!ラーメンを食べに行くわよ!」


こうして直斗達はあのラーメン屋の前に並んで順番を待っている。

ガゼとの話し合いに結構な時間がかかったためだ。

気づいたら時刻は午後5時前、ラーメン屋の客は回転が早いとはいえお風呂を予約している氷依達には厳しい時間となってきている。


「お風呂の時間までに宿に戻れるか?」


「う~ん、微妙かもです」


「平気よ、あと5人でしょ。10分もすれば中に入れるわ。最悪、花に先に帰ってもらえばいいわ。それで30分は稼げるし」


「お任せ下さい、お嬢様」さすがは氷依、花さんは当たり前の顔をしている。

本人が納得しているのなら良いかと思う。

直斗は窓から店内を覗く。

カウンター席に四人掛けのテーブルが二つ、広くない店内は和風な感じが漂う。


「あの子の姿はみえないね」


「チッ!逃げたか」


「お嬢様、行儀がわるいですよ」


忙しく動く店員さんの中にあの男の子が見えない。

直斗達の後ろは更に行列が長くなる。


「ん?魅砂さん?」


「………………」


ジーとある一点を見つめる魅砂の視線を追って直斗は店内を見ると、客席に座っているウサギ耳の少女と母親が美味しそうにラーメンを食べていた。


「魅砂さん、そんなにお腹が空いたのですか?」


「へ?………ちっ、違いますよ~。あの………」


「冗談です。すみません、あのウサ耳が気になるのですか?」


「………はい。とても可愛いくて、眼福です」


この世界に来てからの魅砂の積極性に直斗は目を見張る思いだ。

あの木の影に隠れていた魅砂がこうも積極的に動くなど想像していなかった。


やはり直斗と同じで異世界に来ると自身の何かを触発されるらしい。


「次のお客さま、カウンターで3名様どうぞ」


いつの間にか直斗達に次の番が回ってきていた。


「氷依に魅砂さんと花さん、お先にどうぞ」


「そう」


「はい。お先に行きますね」


「直斗様」


氷依はワクワク顔で、魅砂は笑顔で花さんは直斗に一礼してから店内に入っていった。


人気の店と言うだけあり、長い行列ができている。

他のラーメン屋はと見ると、やはりどこも同じだ。


「あの男の子の言葉じゃないけど、ラーメンの聖地だけはあるな」


程なくして直斗が店内に入る。

空いている席に座りメニューを見る。


「さて、なにがいいかな」


メニューには二種類しかなく、醤油か豚骨醤油だった。

直斗は醤油は知っているが豚骨醤油は初めてだったのでそれを頼む。

サブで餃子があったので一皿頼み出来上がりを楽しみ待つ。


直斗が出来上がったラーメンと餃子を堪能していると、氷依達が直斗に先にやどに戻っていると伝えてラーメン屋を出ていった。


しかし流石は日本人が造った国であると直斗は感じた。

手頃な値段でここまで美味しラーメンをこの異世界で実現するとは………………。

そんな日本人達に感謝の念を抱き直斗は会計を済ませたて店を後にした。

もちろん、あの男の子から貰った割引券を使った。


宿に戻り、さゆりちゃんに部屋のカギを貰いお風呂の時間になったら呼びに来てもらう約束をして別れる。


お風呂の時間まで後20分くらい。着替えなどの準備をして、時間になるまで横になることにした。


考える事はどう水牙大蛇を倒して焔鳥の卵500個をとるか。


(どこかでレベルをあげるか?)


直斗達はまだこの異世界で戦闘などしていない。

相手のレベルが高いならこちらも上げる必要がある。


(しかし時間がない………)


ここで言う時間とはブッチャケお金だ。

お金が必要なこの世界では無一文では死しかない。


無論、直斗のアイテムボックスには氷依から預かっている防具類があるがこれは本当に困った時の命綱だ。


(ガゼさんもいい提案をしてくれた)


湖の広場で邪魔な水牙大蛇を討伐して依頼を完遂すると宣言した直斗はガゼにある提案を持ちかけられた。


「よく決心をしてくれた!このガゼが人肌ぬごう。討伐報酬12万と焔鳥の卵集めを手伝おう!。変わりにお願いを聞いてほしい」


「お願い?」


「ああ」


直斗は思い出してもガゼのお願いに苦笑いを浮かべるしかない。


「お兄ちゃん、お風呂が空いたよ」


コンコンとノックが聞こえさゆりちゃんが呼びに来てくれた。

直斗は考え事を中断する。

呼びに来たさゆりちゃんに返事をして直斗は着替えを持ってお風呂に向かった。


「いいお湯だったわ」


「はい。アレ、水を沸かしたものじゃなく温泉ですよね?」


「そうです魅砂さま。この街全体に温泉が張り巡らされていると宿の主が言っていました」


「それは凄いわ。花、もしかして他の場所に大浴場みたいな施設もあるのかしら?」


「勿論ですお嬢様。この花に抜かりはありません」


「ふふふ。魅砂、明日は温泉巡りをしましょ」


「えっと………いいんですか?」


チラリと直斗を見る魅砂。

そこには居心地が悪そうな直斗がいた。

直斗がお風呂から上がると氷依から声がかかり、打ち合わせをしようとなったのだが………。


「なあ、下の空いてるスペースでも良かったんじゃないのか?」


直斗は氷依達にあてがわれた部屋にいた。

氷依に引きずられるように連れてこられ中に入れられた。

部屋の中は女性特有の香り、いい匂いに直斗は何故か焦りを覚えた。


「はあ!いいじゃないここで!文句ある!」


「いいえ、ないです」


「ふふ。じぁ、作戦会議を始めましょう。直斗さん」


そう、ここに集まったのは水牙大蛇をどう倒すかだ。

広場で依頼を達成させると宣言した直斗に氷依達は頷いた。

殺る事が決まれば後はどう倒すかだ。

それを話し合う為に直斗達は集まった。


「まず決まっているのは決戦は2日後。これはガゼとの約束でもあるし、焔鳥の限界が近いからだ」


「ええ。問題ないわ」


「はい。それと舟の手配もガゼさんがしてくれるそうです」


「はい。それと陽動役も買って出ると言ってました。お嬢様」


「そう、至れり尽くせりだけど命を張るのは僕たちだ」


「なによ、怖じ気づいたの?」


「僕は無謀な賭けには乗らない。臆病なほど良い」


「ふん!変わらないわねその性格」


「?、2人は昔からの知り合いですか?」


「2人じゃないわ、3人よ。花もいれてね。それよりどうするのよ?」


氷依の問いかけに直斗はまだ答えられない。

具体的な策がまだ考え付かないからだ。


「まだ考え中、明日の夜まで待ってほしい」


「そう、いいわ。なら明日は直斗を1人にさせてあげようかしら?」


ピクッ!と直斗の肩が震える。

それを目にして氷依が微笑む。


「ダメ!です。仲間外れはいけないです!」


直斗の隣に腰を下ろしていた魅砂が氷依の言葉に食って掛かる。

いつもの魅砂からは想像できないほど大きな声だった。


「あっ!魅砂さん、氷依は

僕のためと思って言ってくれたんだよ。だからその………涙目で氷依を睨まないで」


「エッ!………本当に?………………ご免なさい氷依さん」


直斗の言葉で慌てて魅砂は氷依に頭を下げる。

氷依は特に気にした様子もなく魅砂に笑顔を向けている。


「ふふふ、魅砂は優しいのね。良かったわね直斗」


それを聞いた魅砂の顔が赤く染まりうつむく。


「氷依も優しいよな、分かりにくいが………」


バフと音がして直斗の顔に柔らかい感触の枕がぶつけられた。


「はあ!どの口が言っているのかしら?、死にたいのね」


僅かに氷依の目が泳いでいるのを直斗は見逃さなかったが、命がほしいので突っ込まない。


「話を戻すけど、考える時間をもらえるのはありがたい。明日は自由行動としよう」


「いいんですか?私も何か手伝いますよ?」


「ダメよ魅砂。直斗は独りが好きな変態なのよ、その側にいたら………子供ができるわよ?」


直斗は喉が乾いたから水を飲もうと口に含んだ時に氷依のあり得ない声をきいて盛大に水を飛ばした。


「ゲッ!汚い直斗」


「ゲホ、ゲホっ、まって、待ってよ。何を言ってるの氷依」


「直斗様、汚らわしい」


氷依を庇うように前に出た花さんは蔑みの目を直斗に向ける。


「えっと魅砂さん………………」


直斗は隣の魅砂を見るとビグ!と体を強張らせる魅砂がササと直斗から離れる。


「………………と、冗談だよ氷依の………」


直斗は何故か泣けてくる。



「アーハハハハ!ごめん魅砂。冗談よ本気にしないでね」


「………もう酷いですよ氷依さん。直斗さんもご免なさい」


ふたたび直斗の隣に戻ってきた魅砂は氷依に抗議して直斗に頭を下げる。

それを見て直斗は氷依のせいだからと魅砂の頭を上げさせる。


「あー!面白かった。今日はこれでおしまいね。明日の夜にまた集まりましょ」


「はぁ、そうだね。皆も街中に行くなら、なにかアイディアがないか探してくれると嬉しい」


直斗は立ち上がり、皆を見渡して頼む。

氷依は当然とばかりに頷き、魅砂もコクコクと頷いた。


これで今夜の作戦会議が終了して直斗は自分の部屋に戻った。

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