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焔VS水牙大蛇

直斗達が湖を一望できる広場まで来ると、ズラリと並んだ屋台。それに群がる人と、たいそうな賑わいを見せていた。


「なに?この人だかりは?」


「本当になんなんでしょね氷依さん?」


「お嬢様、あちらを」


目ざとく何かを見つけたらしい花さんの指差す方向に、ドーンと分かりやすい垂れ幕があった。


ー焔鳥対水牙大蛇ー


それを見て直斗達はだいたい理解した。


「この人だかりはみんな見物客か」


「そうみたいね」


「そんなに皆さん興味があるんですかね?」


「興味じゃないんだよ、お嬢ちゃん」


「え?」


いつの間にか魅砂の隣に頭にハチマキ、上半身裸でズボンをはいたおじさんが立っている。

ビクッ!と肩を震わすと魅砂はそそくさと直斗の隣に移動した。


直斗は思わず苦笑いをして魅砂を見る。

同じ男なんだから直斗の隣より女性の氷依か花さんの側に身を寄せた方がいいんではと思ったのだ。


「えっと、どなたですか?」


みんなを代表して直斗がおじさんに声をかける。


「ああ。驚かしたようだなすまん、お嬢ちゃん。俺はこの一帯を仕切っている、ガゼってもんだ」


お腹がややでているが体格がいいガゼ、なるほどこの広場で屋台を企画した本人なのだと直斗は感じた。


「それでガゼさん、これわなんですか?」


「うん?なんの集まりかってか、ただの見物客だよ。魔物同士の戦いなんぞ珍しくもないんだが、見たがる人が多いんで商売にはなる」


「珍しくはない?そうゆうのは多い事なんですか?」


「この湖に限っては多いぞ。他はあまり聞かんから知らないが」


「なんでここだけ多いのよ?」


「焔鳥の卵を狙って来るんだよ」


「!!!!」


「じゃあ、いま来ている水牙大蛇は卵を狙ってるんですね」


「ああ、もう1週間にならかな。そろそろ決着をつけてほしんだがな」


「そうなんですか?」


「ああ、さすがに24時間営業は疲れる。こちらに危険がないとはいえ、決着をつけてくれかなぁ」


声をかけられたときは気づかなかったが、よく見ると疲労感の漂う表情をしている。

はあ!とため息をついてチラチラと直斗達を見る。


「なにか?」


「うん。あんた達、狩人だろ?」


「なぜ?」


「俺も元は冒険者だ。狩人も見たことはある、焔鳥の卵が必要なんだろ?もう何年も同じような目的で狩人が来るから、何となく雰囲気でわかる」


「それで、私達に水牙大蛇を退治してほしいの?」


「ああ。さすがに今回は焔鳥が劣勢でな」


「劣勢?」


「そうだ。見てわかるとは思うが、焼き鳥の屋台が多いだろ?」


そう言われて直斗達は辺りを見渡すと、焼き鳥の臭いで広場が包まれている感じがするほど香ばしい。


「あれの材料は水牙大蛇に倒された焔鳥の肉を使った焼き鳥だ」


「え?」


「毎日、数百羽の焔鳥が湖に浮かび流されてくる。このまでは全滅もありうると俺は考えている」


「なら、ギルドに依頼をだせばいいのでは?」


「それも考えたが………わかるだろ」


「あまりお金にならない事ですか?」


「そうだ。それに………………お前たち水牙大蛇を見たこと無いよな?」


直斗達、全員が頷く。


「なら見てくるといい、話しはそれからでどうだ?」


「そうね。受ける受けないは直斗に任せるは、まずは実物を見ないと。行きましょ!」


氷依を先頭に広場の先の焔鳥の小島がよく見える場所まで直斗は移動した。


あれだけ屋台のある広場には人が大勢いたのに、柵が設けてある湖側にはまばらな人しかいない。


「?、なによ人が少ないじゃない」


「お嬢さま、皆様あきたのでは?」


「そうでしょうか?なんだか時を待ってるように感じます」


「人が少ないなら丁度いいじゃないか、じっくり見られて」


湖の涼しい風が直斗達を撫でる。

直斗は目を細めて焔鳥の小島を観察する。


小島は肉眼でもよく見える位置にあった。

木々が点々とあり、大きさも程よい感じの小島だ。


「あっ!見てください、小島の左端。あれですかね?」


魅砂の指を指す方へと視線をやると、透明で大きい蛇が体半分を湖に沈めた状態で小島に上がり数百羽の群れで隊列を作っている焔鳥と争っていた。


「なにあれ?蛇の胴体というか全体が透けていない?」


「ああ、確かに。ここからじゃよくわからないけど、頭の部分は白く濁ってる感じがする。あれは牙………うん、そうだ牙は透明ではないようだ。それと舌?と目も」


「よく見えるわね。私にはそこまで見えないけど、あの全体の透明な部分は水でできている感じがする」


「見てください!焔鳥が………」


魅砂が大声を上げた。

直斗は魅砂の見つめる先を注意深く見つめる。


「あれは………………」


「なるほど。相性が悪いのですね」


「ええ、花の言う通りね。焔鳥の炎の突撃は大蛇にダメージを与えていない?いいえ、ダメージは与えているけど大蛇の回復力が勝っている感じね」


氷依の言う通りだと直斗は思った。

焔鳥の炎を纏った突撃は大蛇の体に穴を開け水蒸気が発生しているが、直ぐに大蛇の体が修復されている。


「あの湖に沈んでいる体半分に秘密がありそうだ」


「はい、私もそんな気がします。下から湖の水を汲み上げているような………」


「焔鳥は………即死はしていないようね」


「ああ。たぶんだけど………何回か突撃して体力の尽きた焔鳥が死んでいるんだと思う」


直斗は顎の辺りに指を添えて、思ったことを口にした。


「でも………、いままでどうやって生き残ってきたのでしょう?毎回これなら全滅しているんじゃ?」


魅砂の疑問に答える人は居なく、直斗達はしばらく焔鳥と水牙大蛇の戦いを見ていた。


「お!どうだった?」


直斗達はまた広場の中央まで戻ってきた。

先程の魅砂の疑問の答えを彼なら知っているだろうと思って。


「ええ、見てきましたよ。ガゼさんに聞きたいことがあるんですが?」


「お?なんだね」


「はい。見てきて疑問がでてきたのですが、あの水牙大蛇が襲撃するとなると焔鳥に勝ち目がないじゃないですか?それでも焔鳥が水牙大蛇を退けてこられた訳をしりたいんですが?」


「なんだそんなことか」


直斗達の素朴な疑問にガゼは他に違う事を聞かれると想像していたらしく少し落胆した表情を見せたが、気を取り戻して直斗達に答えてくれた。


「簡単な事だ。あの大きさの水牙大蛇は滅多に現れない。だいたい、3メートルぐらいが普通なんだ。だが、今回は倍以上の8メートルはありやがる。しょうじき、よくもっている方だと思うぜ」


「そうなんだ」


「なるほど。そこで元冒険者の意見が聞きたい。アレを倒すのにどのくらいのレベルが必要か?」


「そうだな………」


「ねぇ、アレは食えるの?」


直斗の問にガゼが少し考える。

一言、間をとり答えようとすると氷依から考えてもいない問いかけがきた。


「はぁ?」


「はぁ?じゃないわよ。食べれるの?アレ」


「えっと………マジか!」


おもわず直斗を見るガゼ、驚いた表情をするガゼに直斗真剣な表情で頷く、彼女はマジですと。


「………食えん。体のほとんどが水。顔の部分にある目と牙。それと舌は存在するが、たぶんダメだなあれは。毒はないんだが異臭を放つから試したものはいない。お嬢ちゃんが試すのか?」


氷依を見てニヤニヤと笑みを浮かべる。


「お嬢様さま。私が!」


「う~ん、地元の人が食べないと言うのなら本当にダメなんでしょ。花が試すまでもないわ」


「はい、お嬢様さま」


ここでアッサリなと氷依は引いた。

地元の人間でも手をださない水牙大蛇に興味がなくなったのだろう。


「それで、レベルは?」


「おお!すまん。通常は2~3だな。だが今回の奴は8に届くと思っている。この辺りの魔物では強い方だとおもうがな」


「8か………」


直斗はそれを聞いて思い悩む。

直斗達は今回が初の狩りだ、当然レベル1。

そこに8倍近い差がある敵が邪魔をする。

焔鳥もそこそこのレベルだろうが依頼難度はCなので怪我はするが命には別状無いものと直斗は考えていた。


「………直斗、あなたが決めなさい」


「えぇ、直斗さんの判断に従います」


「私はお嬢様に付き従うだけです」


真剣な表情の氷依、ニッコリと笑顔で頷く魅砂。

いつもと同じ無表情の花さん。


直斗は外の世界へと出るということは自分の殻を破り、新たな何かを自身から破る事なのかと思わずにはいられなかった。


あの地獄から生きて戻った直斗は閉鎖的で外出することなく、最低ラインで生活できれば望むものなど無いと心底思っていた。


豊穣学園に入る2年前、氷依から解放され自分の部屋で引きこもり生活を貪った。

氷依が直斗に別れ際に言った言葉。


「私と一緒に豊穣学園に行きましょう。そこでパーティーを組みなさい。それ以上は望みません!」


この一言で直斗は渋々、学園に入学した。

成績はCクラス、それを直斗は意図的に実行した。

Aクラスでプライドの高い奴らと競うのは面倒くさい、また中盤以下では更に面倒くさいことになりそうと思った末に真ん中辺りが無難だと直斗は判断した。


そんな直斗が今、真剣に考えていた。

殺るか殺らないか。

しばらく考えていた直斗が顔を上げて氷依達に言った。


「依頼は達成させる」

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