ファヤの街
直斗達は無事にファヤの駅に到着した。
汽車に降りたのは直斗達だけだ。
この事実に直斗はマズウェルの駅でこちらを見つめていた、あの視線の意味を知った。
「あんな山の上にマズウェルの都市があるのか………」
駅をでる前に駅員さんに聞いたところ、普通の汽車は安全第一にあの山を下るらしい。
では何故、特急が存在するのか。
それは万が一緊急の事態が下で発生した場合に備えての手段だということだった。
ちなみに山を上がる場合には特急券はなく、普通に上るとの事だった。
ファヤの駅を出て街をみる。
やはり整備された道に直斗達にも馴染み深い、近代的な建物が並ぶ。
「なんか異世界感がありませんね」
「そうね。でも魅砂にはご褒美みたいな所でしょ。色々な耳に出会えて」
「はい!最高です!」
「お嬢様、まずどちらへ?」
「花!行き先は直斗に聞きなさい。彼がリーダーなのよ」
「クッ!……………はぃ」
キッ!と鋭い視線を直斗に向ける花さん。
直斗は正直、勘弁してほしい。
パーティーリーダーと主では花さん的には主である氷依の言うことの方が重要なのだろうし、もう面倒くさいので氷依に花さんは丸投げしたい感が満載なのだが。
「まず、この街の冒険者ギルドに行こう。狩りの場所と泊まる場所の確保が重要だと書いてあった」
「そう。花、道行く人にギルドの場所を聞いてきなさい」
「ハッ!」
氷依の指示に嬉しそうに返事をして花さんが嬉々として道行く人にギルドの場所をきいている。
「直斗様、ギルドはあちらにあるそうです」
少しムスッとした花さんがそう直斗に告げる。
「あ、有難う花さん」
「……」
「じゃ、行こうか」
直斗は教えられた方向へと歩き始める。
駅の近くにギルドがあり、すぐに着いた。
「焔鳥の卵ですか………」
「?」
何故か浮かない顔のギルド職員さんに直斗は疑問の表情を浮かべる。
「ああ!済みません、今は時期が悪いと思いまして」
「???。時期ですか?」
「ええ。行けばわかりますが、焔鳥が住みかにしている小島に今、水牙大蛇が一匹出現しまして焔鳥と闘いをしているのですよ」
「水牙大蛇ですか?」
「はい」
「ギルドで討伐しないの?」
氷依が当たり前の疑問を職員さんに告げる。
「街に被害がでるなら討伐依頼をだすんですが、水牙大蛇は街には近づかないし、たいしたお金にはならないのですよ。ましてや焔鳥も同じでちょっかいをださなければ危険性はないですし金にならない。ですからギルドとしても対応が微妙でして………………」
そう渋い顔をする職員さんに直斗は取り敢えず焔鳥の小島の場所と安全で安価な宿がないかと職員さんに聞いた。
焔鳥の小島はファヤの街を出てすぐ目の前にある湖の中間にあると教えてもらい、あとはギルド割引がある宿の場所を教えてもらった。
街の中心部より外れのほうが手頃な宿が多く、直斗達は教えられた宿のうち湖に近い宿へと向かった。
「水牙大蛇ね、旨いのかしら?」
「いきなりだね」
「そう?でも私達には重要なことよ。もし美味しいのなら一匹まるごと持って帰ればさらに加点がつくかもね」
「でも職員さん、価値無しって言ってましたよ」
「それはこの世界の話しでしょ?もしかしたら魔物肉なんて食べないのかも」
「いや、それはないよ。だってハンバーガーの肉は魔物の………」
「なんで知ってるのよ?」
直斗は最後まで言えずに氷依の強い視線にさらされる。
「え。ああ、ハンバーガーの袋にあった店の名前で検索したら原材料の記載があったから」
「そう。なら皮とか牙とか素材狙いね」
氷依は直斗の答えを聞いてそう切り替えす。
「氷依さん、蛇とか平気なんですか?」
「魅砂様。お嬢様には好き嫌いはございません」
「え!………そうなんですか。流石です」
「いえ、嫌いな物ならあるわ」
「おっお嬢様!」
「あの汽車!絶対に許さないわ。3年後、見てなさい」
氷依が静かに闘志を燃やす中、直斗は白い壁に木造のギルドで紹介された宿の前に着いた。
「ここ?」
「ああ。職員さんに聞いた宿、かまくらだね」
「へ~、綺麗な宿ですね」
4人が宿の前で見上げていると、宿の中から女の子が顔を出す。
「?、お兄ちゃん達。お客様ですか?」
不安そうに問いかける女の子に直斗が頷く。
「いらっしゃいませ。お母さんお客様だって」
パーと顔を輝かせて女の子が直斗達に頭を下げると宿の奥に消える。
どうやら母親を呼びに行ったみたいだか、ここで待ってた方がいいのだろうかと直斗は悩む。
「ほら!直斗、入りなさいよ」
氷依に背中を押されて直斗は宿のドアを開けて中にはいる。
「いらっしゃい。4名様?全員一緒の部屋?」
宿に入ると、カウンターに宿の主人らしい女性と先程の女の子がいる。
「いえ。僕は一人部屋で彼女達は………………」
「?、一緒でいいわよ。ね、魅砂?」
「はい!よろしくお願いします」
「ということで、部屋は空いてますか?」
直斗は氷依達の答えを聞いて、宿の女主人に問う。
「ええ、空いてますよ。一人部屋と大部屋ね。一人部屋は一泊3千円。大部屋は4人部屋だけど一部屋五千円よ」
「随分と差があるのね?」
「はい。一人部屋を使う人はプライバシーに敏感ですから他の部屋より手を入れていますので」
「ふ~ん、そんなもんなのかしら?」
「わかりました。お願いします」
直斗は氷依がこれ以上なにかを言う前に宿を決めることにした。
「あっ!冒険者割引を受けられると聞いたのですが?」
「はい、大丈夫ですよ。確認の為にギルドの身分証を拝見させて下さいます?」
女主人に直斗達はギフトを見せる。
「はい結構です。宿代は半額にいたします。一人部屋1500円、大部屋が2500円です。朝食付きでお風呂は共同で時間を指定してくれれば、こちらで調整しますのでそれから使って下さい」
「!、そんなに安くして大丈夫なんですか?」
いきなりの半額請求に直斗は驚いて女主人にきいた。
「はい?………ああ、初心者さんなんですね。大丈夫ですよ割引分は冒険者ギルドが負担してくださいますから」
それをきいて直斗はホッとした。
氷依達と相談した結果、3日分の宿代を支払い女主人の子供の女の子、さゆりちゃんに部屋まで案内してもらった。
髪の毛色で予想はしていたが名前を聞いて納得した。日本人の血を引いている母子だ。
宿には他に2団体、宿泊しているらしく、お風呂など早めに予約してね。
と部屋に案内された後にさゆりちゃんに言われた。
貴重品とかは基本、部屋に置いとく事はせずに持ち歩くこと、後は部屋を出るときは鍵をすることを約束させられてさゆりちゃんは部屋を後にした。
久しぶりに一人となり、直斗はベッドに寝転がり背を伸ばす。
「はぁ、やっぱり一人はいいなぁ。落ち着く」
久しぶりの開放感に直斗はこのまま寝てしまおうかと目を閉じる。
コンコン!
ドアからノックする音がきこえる。
直斗はベッドからおりて、ドアを開ける。
「直斗!湖までいくわよ!」
氷依がいた。
勿論、魅砂達もその後ろにいたのだが、氷依の存在感にその影が薄かったのだ。
「了解だ」
「じゃ、行きましょ!」
氷依達の後ろをついて行く直斗。
スマホと時計を見ると午後3時すぎ、湖まで歩いて10分程なので遅く帰ることはないだろう。
宿でも宿泊に限り別費で食事を用意するとは言われているが、せっかくなのでファヤの街にくり出して夕食を食べることにした。
それ考えても6時ぐらいには宿に戻ってこれるだろう。
それでも念のため午後7時ぐらいにお風呂の予約をいれおく。
氷依達はもっと早い時間に予約をいれたのを見て、本当に湖を見るだけにするらしい。
宿での用を済ませて、湖のある街の外へと進む。
マズウェルは都市を城壁で囲んだ都市だったが、ここファヤの街は城壁などは存在せず整備された道を行くと街の外へと出る。
直斗は歩きながらファヤの街並みを見る、そこで目にしたのは異様なまでのラーメン屋ののぼりが多い事だった。
「なんでこんなにラーメン屋がひしめきあってるんだろ?」
「兄ちゃん、この街は初めてか?」
ふとした直斗の呟きに声をかけたのはラーメン屋の前で客引きをしていた子供だった。
「ああ、そうだよ」
「ならしょうがないね。火の国の三大料理、カレー、牛丼、そしてラーメンなのさ。そしてファヤはラーメングランプリ毎年1位をとるラーメンの聖地なんだぜ!」
ドヤ顔で直斗に教えてくれる少年の顔が輝いている。
「へえ、そうなんだ」
「凄いですね」
「お嬢様、これは挑戦しなけばなりますまい」
「え~、ラーメンってスープに麺が入っているだけでしょ?どうなのそれ」
「はあ!姉ちゃん、物を知らなすぎ。人生の半分を損してるね」
少年の予想外の直斗達の反応、そして氷依の言葉で少年のラーメン魂に火が着いたようだ。
「なっ!なによ。そんなに自信があるなら食ってやろうじゃない」
「へへ、食ってビックリするなよ!」
「ちょっと待って!氷依、湖が先だ!ラーメンは後で」
少年と氷依が直ぐに店の中に入りそうだったので、慌てて直斗が止めにはいる。
「なんだよ兄ちゃん、邪魔するなよ」
「あっ!そうだったわね。湖を見てから必ずくるわ、それまで勝負はお預けよ」
氷依は直斗の指摘に我にかえり少年にそう告げる。
少年はニヤリと笑い直斗達に割引券を渡す。
「兄ちゃん達が来るとき俺は居ないかもしれないだから、ソレを渡しておくから使ってよ。そしたら俺にもいいことがあるしさ」
直斗達はラーメン割引券を貰いその場を後にした。
さらに街の外に続く道を進む。
街の外へ出る場所に警備の詰所らしき建物があった。
「湖に行くのかい?」
「はい。よくわかりますね」
直斗が詰所に近づくと警備の犬の獣人さんが声をかけてきた。
「まあね。そんな軽装で、街の外へ出る人は湖に行く人だけだから」
「あぁ、そうなんですね。それで湖は………………」
と直斗は警備の人に訪ねようとしたが、詰所のすぐ前に湖が広がっている。
湖の反対側の道の向こうは砂漠のようになっているので、その違和感は直斗達の中で増すばかりだ。
「ははは、初めての人は皆、君達のような反応をするよ。僕はこの街の生まれだから普通の事だけど外からの人には異様に映るらしいね」
「はぁ、そうなんですか。なんか済みません」
「別に謝られる事でもないよ。そこを道なり行くと広場があるから行ってみるといい」
警備員さんの示す先に人だかりのような感じで集まっている人達がいるので、警備員さんに礼を言って直斗達は湖へと向かった。




