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悪役令息に転生した俺は改心しない  作者: まゆな


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婚約者

領地視察から屋敷へ戻ったアレンは、明日の予定を確認していた。


「明日は月に一度の婚約者とのお茶会か」


婚約者の名前を思い出す。


「確か、伯爵令嬢のマリンだったな」


前世の記憶と一緒に蘇った未来では、マリンとの婚約は破棄されることになっていた。


アレンはそこで、ふと疑問に思った。


「……なんで僕が婚約破棄されるんだ?」


普通に考えれば、侯爵家の跡取りである自分と婚約しているのだ。


家格だけを見ても悪い話ではない。


「しかも、こっちが捨てられる側なのか?」


自分が婚約者を嫌って破棄するならまだ分かる。


だが、自分が振られる。


アレンにはどうにも納得できなかった。


「原因が分からないな」


未来の記憶を探ってみても、婚約破棄に至る詳しい経緯までは思い出せない。


「まあ、会えば分かるか」


アレンは考えるのをやめた。


そして翌日。


予定通り、マリンが屋敷を訪れた。


「お、お久しぶりです……アレン様」


「久しぶり」


マリンは大人しそうな少女だった。


姿勢も良く、身なりも整っている。


悪い印象はない。


二人は向かい合って席についた。


アレンから話しかける。


「最近はどうしていた?」


「えっ……あ、その……」


マリンはおどおどしながら答える。


「学校のほうは?」


「は、はい……その……普通に……」


「そうか」


会話が終わった。


アレンは別の話題を探す。


「何か面白いことはあった?」


「お、面白いこと……ですか?」


「うん」


「えっと……特には……」


また沈黙。


アレンは紅茶を飲んだ。


いくら話しかけても、会話が続かない。


「……」


「……」


さすがに少しイライラしてきた。


未来では自分が婚約破棄される。


その理由が分からなかったから、今日会えば何か分かると思っていた。


だが、実際に会ってみれば、マリンはおどおどしてまともに会話すらできない。


「……言葉では駄目か」


アレンは少し考えた。


ならば、もう少し距離を縮めてみればいい。


アレンは立ち上がると、マリンの向かいに置かれていた椅子を隣へ移した。


「えっ……」


マリンが驚く。


アレンはそのまま隣に座った。


「どうした?」


「い、いえ……」


マリンは明らかに落ち着かない様子だった。


アレンは婚約者なのだから、これくらい普通だと思っていた。


そこで、さらに親しく接しようとした。


だが、マリンは嫌そうに身を引いた。


「……そんなに嫌なのか?」


「す、すみません……」


また謝られた。


アレンは眉をひそめた。


「僕たち、婚約者だよね?」


「は、はい……」


「なら、これくらい普通じゃないのか?」


マリンは答えず、さらに距離を取った。


アレンは席に戻った。


そして、ますます納得できなくなった。


未来では自分が婚約破棄される。


だが、今のマリンを見る限り、自分を避けているのは明らかに向こうだ。


「なんで僕が婚約破棄されるんだよ……」


アレンは心の中でぼやいた。


自分から破棄したくなるくらい、今のところマリンとの相性は悪い。


それなのに未来では、自分が捨てられる側になっている。


「……やっぱり、こっちから婚約破棄したほうがいいんじゃないか?」


アレンは本気でそう思い始めていた。

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