↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令息に転生した俺は改心しない  作者: まゆな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
53/60

10000PV記念

アレンは、自分の派閥に取り込んだセリナの領地開発に乗り出していた。


 もちろん、資金は全てアレン持ちだ。


「まずは街道からだな」


 アレンは領地の地図を眺めながら言う。


「商人を呼び込むなら、道が悪いままでは話にならない」


 セリナは少し困ったような顔をする。


「ですが、これほどの費用を出していただいて、本当に大丈夫なのですか?」


「いいんだよ」


 アレンはあっさり答える。


「俺の派閥なんだからな」


 アレンは、自分が味方だと思った人間には優しい。


 それはセリナと結婚する前から変わらなかった。


 出産育児一時金を導入したときもそうだった。


 領民への支援だけを行えば、派閥に属する他家との間に不公平が生まれる。


 そこでアレンは、派閥の家々にも資金援助を行った。


 自分の政策によって、味方の家が損をしないようにしたのだ。


 飢饉が起きたときには、食料を無償で援助した。


 商人を誘致するときには、一定期間の通行料を免除した。


 商人が来やすくなるよう、街道も整備した。


 その費用も、もちろんアレンが負担した。


「アレン様、ここまでしていただいて……」


 セリナが何度礼を言っても、アレンは首を横に振る。


「別にいいだろ」


「ですが……」


「俺が勝手にやってるだけだ」


 アレンは恩を着せることがなかった。


 感謝を求めることもない。


 見返りを要求することもない。


 ただ一つだけ、理由を口にする。


「俺が移動するときに馬車が揺れるのが嫌なんだよ」


「……」


 セリナは黙った。


 街道を整備する理由が、それだけだった。


 だが、それを聞いた周囲の人間は、誰も本気にはしていなかった。


「また始まったぞ」


「何がです?」


「アレン様の悪役ムーブだ」


「……あれがですか?」


「ああ」


 家臣たちは知っている。


 アレンは、何かをしても決して自分の善意として語らない。


 領地を発展させても、


「俺が便利になるからだ」


 としか言わない。


 派閥の家を助けても、


「味方が潰れたら困るだろ」


 と言う。


 飢饉で食料を配っても、


「食料がなくなったら面倒だからな」


 と言う。


 街道を整備しても、


「馬車が揺れるのが嫌だからだ」


 と言う。


 最初の頃は、本当にそう思っているのだと思っていた。


 しかし――。


「アレン様は、自分が味方だと思った人間には本当にお優しいですよね」


 ある家臣がそう言った。


「優しい?」


「ええ」


「どこがだ?」


「……」


 本人には自覚がない。


 だからこそ、周囲は確信していた。


「悪役令息を演じているつもりなんでしょうね」


「完全にバレていますけどね」


 アレンは知らない。


 自分がどれだけ悪役らしく振る舞おうとしても、周囲にはその行動の結果が見えている。


 派閥の家は豊かになった。


 セリナの領地は発展している。


 商人が集まり、街道が整備され、人の流れも増えていく。


 領民の生活も少しずつ良くなっている。


 そして、誰一人としてアレンから恩を着せられていない。


「やっぱりアレン様は悪役令息ですね」


「そうだな」


「……本人だけは」


「本人だけはな」


 家臣たちは苦笑する。


 アレンは今日も、領地の地図を眺めていた。


「次はこの道を整備するか」


「またですか?」


「この道が悪いと馬車が揺れるだろ」


「はいはい」


 誰も止めない。


 むしろ、アレンがそう言うなら安心して任せられる。


 アレンは、自分が味方だと思った人間を裏切らない。


 そして、味方が困っていれば助ける。


 ただ本人だけが、それを悪役令息らしい行動だと思っている。


「俺は悪役令息だからな」


 アレンは満足そうに笑った。


 周囲は誰も訂正しなかった。


 もう、とっくにバレているのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。