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側室誕生

アレンの屋敷で、ある日、大きな知らせがあった。


妾候補として仕えていたメイドの一人が、子を授かったのだ。


「おめでとうございます!」


「ついにですね!」


「次は私の番かもしれません!」


知らせを聞いたメイドたちは大騒ぎだった。


自分たちもアレンの妾になることを目指している。


その中から実際に子を授かった者が出たことで、屋敷全体がお祭り騒ぎになっていた。


当の本人は少し恥ずかしそうにしながらも、周囲から祝福されていた。


そこへセリナもやって来た。


「おめでとうございます!」


セリナは自分の子ができたかのように喜んでいる。


「ありがとうございます、セリナ様」


「これから大変でしょうけど、私もできる限り協力しますね」


「はい!」


セリナは本当に嬉しそうだった。


そんな中、アレンはふと気になったことを尋ねた。


「そういえば、彼女はどこの家の出身だった?」


執事長が答える。


「派閥に属する子爵家の三女でございます」


「子爵家か」


「はい。三女ということもあり、貴族当主との婚姻はかなり難しい立場でした」


貴族令嬢といっても、誰もが有力貴族へ嫁げるわけではない。


特に三女ともなれば、家同士の都合で良い縁談が回ってくる可能性は低い。


場合によっては平民と結婚し、貴族籍を抜けることになる可能性も高かった。


アレンは特に気にしていなかった。


「なら、妾になれるだけでも十分なのか?」


「本人にとっては、非常にありがたい話だったかと」


するとセリナが何かを思いついたように口を開いた。


「それなら、妾ではなく側室にしてはいかがでしょう?」


「側室に?」


「はい。すでにアレン様の子を授かっていますし、彼女が望むのであれば正式に側室として迎えてもよいのではないでしょうか」


アレンは少し考えた。


「まあ、本人がそれでいいなら構わない」


こうして、妾候補だったメイドは正式に側室として迎えられることになった。


本人はもちろん大喜びだった。


「私が……側室に?」


「おめでとうございます!」


「よかったですね!」


「本当におめでとうございます!」


メイドたちも一斉に祝福する。


そして、その日のうちに屋敷の空気が変わった。


「妾でもありがたいと思っていたのに……」


「側室になれる可能性があるの?」


「つまり、まだ私にも……」


メイドたちの目が変わった。


これまでもアレンに気に入られようと努力していた彼女たちだったが、側室という前例ができたことで、さらに積極的になった。


「アレン様、お茶をお持ちしました!」


「アレン様、本日の予定はこちらです!」


「アレン様、こちらのお菓子はいかがですか?」


屋敷の中で、アレンへのアプローチが明らかに増えていく。


「なんだか最近、みんな妙に張り切ってないか?」


アレンが不思議そうに呟く。


セリナはそんなメイドたちを見て苦笑した。


「仕方ありませんよ」


「何が?」


「側室になれる前例ができてしまいましたから」


「……なるほど」


アレンはようやく理解した。


妾候補だったメイドが側室になったことで、他のメイドたちにも新たな目標ができてしまったのだ。


屋敷では今日も、メイドたちによる熾烈なアピールが続いていた。


アレンだけが、その熱気についていけていなかった。

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