妾競争
アレンには、妾候補として扱われているメイドが二十人いた。
それとは別に、奴隷の女性も二人いる。
これまで、誰一人として妊娠していなかった。
最初のうちはアレンも気にしていなかった。
しかし、侯爵家当主を継ぐことが決まってからは、少しずつ不安になっていた。
これだけの人数がいるのに、誰にも子供ができない。
もしかすると、自分には子供を作れないのではないか。
そんな心配をするようになっていた。
護衛についても、以前からアリスが担当していた。
ただ、アリス一人では何かあったときに不安だったため、アレンはリサも護衛につけていた。
二人いれば、片方が対応している間にもう片方がアレンを守れる。
そんな理由からだった。
ところが、ある日からリサの様子がおかしくなった。
「リサ、今日は少し顔色が悪くないか?」
「大丈夫です」
リサはそう答えたが、普段より明らかに元気がない。
それでも最初は、少し体調を崩しただけだと思われていた。
しかし、その状態が何日も続いた。
護衛中にも疲れた様子を見せるようになり、普段なら問題なくできていたことにも支障が出始める。
アレンもさすがに心配になった。
「無理をするな。今日は休め」
「でも、アリス一人では……」
「それでもだ。体調が悪いまま護衛を続けるほうが危ない」
リサは護衛を外れて休むことになった。
アレンの護衛はアリス一人に戻った。
もともと一人では不安だからとリサを増やしたのだから、アレンとしても少し心配だった。
だが、リサの体調を優先するしかない。
その後もリサの体調はなかなか戻らなかった。
そこで詳しく調べることになった。
そして、予想外の事実が判明した。
「リサは妊娠しています」
「……妊娠?」
アレンは思わず聞き返した。
リサ自身も驚いていた。
まさか自分が妊娠しているとは思っていなかったのだ。
しかし、調べた結果は間違いなかった。
アレンはしばらく黙ったあと、ほっと息を吐いた。
「そうか……」
これまで、メイド二十人と奴隷二人。
誰一人として妊娠していなかった。
そのため、アレンは自分に子供を作る能力がないのではないかと心配していた。
だが、リサが妊娠した。
少なくとも、自分に子供を作れないというわけではない。
「俺に子供ができないわけじゃなかったんだな」
アレンは一安心した。
もちろん、リサの子供を侯爵家の後継者にする予定はない。
奴隷の子供では、侯爵家を継がせるには都合が悪い。
そこでアレンは、リサを奴隷から解放することにした。
そして、正式に妾として迎える。
これでリサは妾候補ではなく、正式な妾となった。
その知らせを聞いた二十人のメイドたちは、複雑な表情を浮かべた。
「リサに先を越された……」
自分たちは二十人もいる。
しかも妾候補としてアレンのそばにいる。
それなのに、奴隷だったリサが先に妊娠し、正式な妾にまでなった。
「私たちはまだ候補なのに……」
メイドたちは悔しがった。
しかも、リサが妾になったことで、自分たちより立場が上になった。
それまで自分たちより下だった奴隷が、一気に自分たちを追い越したのだ。
「……負けられない」
メイドたちの間に、妙な競争心が生まれた。
それからというもの、アレンへのアピールも増えていった。
夜になってからアレンのもとを訪ねてくるメイドも増えた。
「今日は私が……」
「私も……」
メイドたちはリサに追いつこうと張り合っている。
「……競争しなくていいから」
アレンは呆れながらそう言った。
一方、リサは妾としての立場を得たことで、これまでとは違う扱いを受けるようになった。
そしてアレンは、妊娠したリサを護衛から外した。
これで護衛は再びアリス一人になる。
「やっぱり、もう一人必要かな……」
アレンはそう考えながら、今度は妊娠したリサの代わりになる護衛を探すことになった。




