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渋滞緩和

アレンはアリスとリサを引き連れて、領地の視察をしていた。


以前に比べると、明らかに移動に時間がかかる。


「……遅いな」


馬車の中から前方を見る。


道そのものが悪くなったわけではない。


むしろ以前より整備されている。


それなのに、なかなか進まない。


原因はすぐに分かった。


人が増えているのだ。


住民が増え、商人も増え、荷物を運ぶ馬車も増えている。


以前なら数台の馬車が通るだけだった道を、今では何台もの馬車が行き交っていた。


対向する馬車がいると速度を落とし、道の端を歩く人がいればさらに速度を落とす。


荷物を積んだ大きな馬車ともなれば、すれ違うだけでかなりの時間がかかった。


「前はもっと早く移動できたんだけどな」


アレンが呟く。


アリスは周囲を見ながら答えた。


「以前より人が増えていますからね」


リサも頷いた。


「港を利用する商人も増えていますし、荷馬車もかなり多くなりました」


「そういうことか」


アレンは納得した。


領地が発展して、人が増えた。


商売も増えた。


その結果、昔は十分だった道路が足りなくなった。


便利になったはずなのに、移動が不便になっている。


なんとも妙な話だった。


屋敷に戻ると、アレンはすぐに執事長を呼んだ。


「最近、移動が不便だ」


「はい」


「人も馬車も増えすぎている。どうにかしてくれ」


かなり大雑把な命令だった。


執事長は少し考えてから答えた。


「道路を拡幅するのがよろしいかと」


「それだけか?」


「現在の道路を広げれば、馬車同士がすれ違いやすくなります」


「うーん……」


アレンは考え込んだ。


確かに道路を広げれば多少は改善する。


だが、今後さらに人口が増えたらどうなる?


また道路が混雑するのではないか。


「もっと別の道を作れないか?」


「別の道ですか?」


「そうだ。今の道は住民も使う。商人の荷馬車も使う。だから混雑するんだろ」


アレンは前世の記憶を探った。


そこで思い出したのが、高速道路だった。


住民が歩く道とは別に、大量の車が速く移動するための道。


この世界には自動車はない。


それでも、考え方は使える。


「商人や荷馬車が遠くまで一気に移動できる道を作ろう」


「どのような道でしょうか?」


アレンは紙を取り出し、簡単な図を描いた。


街中を通る既存の道路とは別に、町の外側を通る新しい道。


できるだけ建物や人の多い場所を避け、幅を広くする。


途中で余計な道と交差しないようにして、商人が目的地まで進みやすくする。


「この道は、人が集まる場所をできるだけ避ける」


「なるほど」


「それから、荷馬車が止まらずに走れるようにする」


執事長は図を眺めながら考えた。


「物流専用の街道……ということでしょうか」


「そんな感じだ」


こうして、新しい街道の建設が始まった。


既存の道路を拡幅するだけではなく、町の外側を大きく迂回する新道を整備する。


道幅も十分に確保し、荷馬車同士がすれ違っても速度を落としにくいようにした。


完成すると、商人たちがすぐに使い始めた。


「これは走りやすい!」


「街中を通らなくていいのか!」


「荷物を積んだまま、これほど早く移動できるとは!」


商人たちからの評判は非常に良かった。


これまでなら町の中で人や馬車に何度も進行を邪魔されていた。


それが新道を使えば、町を大きく迂回して目的地へ向かえる。


移動時間も短くなった。


しかも町の中を大量の荷馬車が通らなくなったことで、住民たちにとっても暮らしやすくなった。


「商人にも住民にも好評です」


執事長から報告を受けたアレンは満足そうに頷いた。


「やっぱり道は分けたほうがいいな」


アレンにとっては、それだけの話だった。


だが、この新道によって商人の移動がさらに活発になり、港町と領地各地の物流は以前とは比べものにならないほど便利になっていった。

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