↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
32/60

競馬

町の娯楽施設をレオンと見て回った翌日。


 アレンは屋敷で一人、ぼんやりと考えていた。


「そういえば、前世では競馬が人気だったな」


 馬が走る。


 それを大勢の観客が見て楽しむ。


 単純だが、かなり面白い娯楽だった。


「競馬場を作ってみたいな」


 アレンはそう思った。


 しかし、ただの娯楽施設として競馬場を作るとなると、少し大げさだ。


 何か自然な理由が必要になる。


「優秀な馬の品評会として集めさせて、ついでにレースをすればいいか」


 この領地には騎士団がいる。


 軍馬の質は軍事力に直結する。


 優秀な馬を集めて品評会を開くという名目なら、広い会場を用意しても不自然ではない。


「これなら競馬場を作りたいなんて言わなくても実現できるな」


 アレンはさっそく騎士団長を呼んだ。


「軍備を増強したい」


「軍備増強、ですか?」


「ああ。騎士団で使う優秀な馬が欲しい」


 騎士団長の表情が引き締まった。


「確かに、軍馬の質は重要です」


「そこで、優秀な馬を各地から集めて品評会を開いてくれ」


「承知しました!」


 騎士団長は即答した。


 アレンの思惑通りだった。


「品評会では馬を走らせてみたい」


「なるほど。実戦を想定した走力の確認ですね!」


「……まあ、そんなところだ」


 アレンは適当に答えた。


 騎士団長は完全に軍事目的だと思い込んでいた。


 それから準備が始まった。


 騎士団は各地に知らせを出し、優秀な馬を持つ者を領地へ呼び寄せた。


 最初は軍馬を選ぶための品評会だったはずが、騎士団は思った以上に力を入れていた。


 せっかくの機会なのだからと、会場も立派なものが用意された。


 馬が走るための広いコースが整備され、観客が見られる場所まで作られていく。


「ずいぶん大きくなったな」


 完成した会場を見て、アレンは呟いた。


「騎士団にとって重要な軍馬選定の場ですからな!」


 騎士団長は胸を張っている。


「そうか……」


 アレンは特に否定しなかった。


 そして当日。


 会場には大勢の人が集まった。


 町の住民だけではない。


 商人や貴族まで見物に訪れている。


「始まるぞ!」


 歓声が上がる。


 集められた馬が次々とコースを走っていく。


 何頭もの馬が一斉に走り出し、速い馬が他の馬を追い抜いていく。


 観客から歓声が上がった。


「いいな」


 アレンは貴賓席から、その様子を眺めていた。


 ただ馬が走っているだけだ。


 それなのに、不思議と見ていて飽きない。


 アレンはすっかり夢中になっていた。


 一方、騎士団は真剣だった。


 走力だけではなく、体格や持久力、性格なども細かく確認している。


 騎士団にとっては、あくまで軍馬を選ぶための重要な行事なのだ。


 品評会が終わると、騎士団は優秀と判断した馬を次々と購入していった。


「いい馬が揃いましたな」


「ああ」


 騎士団長は満足そうだった。


 アレンも満足していた。


 優秀な馬は騎士団に購入された。


 領民は新しい娯楽を楽しんだ。


 そしてアレン自身も、念願だった馬のレースを見ることができた。


「また開催したいな」


 アレンが小さく呟く。


「もちろんです。軍馬の更新もありますからな!」


「……そうだな」


 騎士団長は、軍備増強のための定期的な品評会が必要だと思っている。


 アレンは、競馬を見るための口実ができたと思っている。


 二人の目的はまったく違っていた。


 こうして軍備増強を名目に開催された軍馬品評会は、大成功に終わった。


 騎士団は優秀な軍馬を手に入れ、領民は新しい娯楽を楽しんだ。


 そしてアレンは、競馬場を作るという目的を隠したまま、競馬を楽しむことに成功したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。