レオン再来
その日、アレンの屋敷には悪友のレオンが遊びに来ていた。
「よう、アレン。久しぶりだな」
「何しに来たんだ?」
「遊びに来たって言ってるだろ」
レオンは当然のように答えた。
アレンの領地は侯爵領の一部であり、もともと町としてある程度発展していた。
商店もあれば宿屋もある。
飲食店もあり、住民が生活するために必要なものは一通り揃っていた。
ただ、アレンが領主になってから人口が増え、産業も増えた。
農業だけだった町に林業や製材業などが加わり、商人の往来も増えている。
そして生活に余裕ができたことで、以前よりも娯楽に金を使う人も増えていた。
「最近、町に娯楽施設が増えたんだって?」
「そうらしいな」
「だったら見に行こうぜ」
「俺は別に興味ないんだが」
「お前の領地だろ。自分の領地で遊ぶくらいいいじゃないか」
「まあ、それもそうか」
二人は屋敷を出て、町へ向かった。
最初に向かったのは、最近できた遊技場だった。
店内には町の住民だけでなく、商人や近隣の貴族の使用人らしき姿もある。
「結構人がいるな」
「仕事が終わった後に遊べる場所があるってのはいいな」
レオンは店内を見回した。
その中でも目についたのが、ダーツとビリヤードだった。
どちらもアレンがこの町に広めた遊びだった。
「お、ダーツがあるじゃないか!」
レオンが嬉しそうに声を上げる。
「ビリヤードもあるぞ」
「こっちからやろうぜ」
二人はさっそくダーツを始めた。
レオンが投げた矢は、狙いから大きく外れた。
「……今のは手が滑っただけだ」
「そうか」
「もう一回だ」
次はアレンが投げる。
矢は狙った場所にきれいに刺さった。
「お前、上手いな」
「広めた本人だからな」
「それは理由になってるのか?」
「知らん」
二人は笑いながらダーツを続けた。
その後はビリヤードへ移動した。
レオンは最初こそ苦戦していたが、何度か遊ぶうちに少しずつ上達していった。
「これ、面白いな」
「だろ?」
「お前が広めたって聞いたけど、こういう遊びを思いつくのは相変わらず変な奴だな」
「面白ければいいだろ」
二人はしばらく遊び続けた。
遊技場にはダーツやビリヤード以外にも、町の人間が考えた新しい遊びがいくつか置かれていた。
アレンが広めた遊びを参考にして、新しい遊びを考える者まで出てきている。
「俺が広めた遊びが、こんなに広がってるんだな」
「お前、こういうところだけは影響力あるよな」
「どういう意味だ?」
「いや、別に」
遊技場を出ると、今度は飲食店を探した。
「昼飯にしようぜ」
「さっき食べただろ」
「遊んだら腹が減るんだよ」
二人が入ったのは、以前から町にあった店だった。
ただし、メニューは昔よりかなり増えている。
「こんな料理あったか?」
「最近追加されたらしい」
料理が運ばれてくる。
アレンも一口食べてみた。
「……うまいな」
「だろ?」
以前からある店でも、食材の流通が良くなり、扱える食材が増えている。
さらに、アレンの領地で生産される農産物も増えた。
料理人たちは新しい食材を使って料理を考え、店同士で競い合うようになっていた。
「昔より明らかに料理がうまくなってるな」
「食材が増えたからだろ」
「お前が作ったわけでもないのに偉そうだな」
「俺の領地だからな」
「急に領主らしくなったな」
二人は笑いながら食事を続けた。
食事を終えると、また町を歩く。
新しくできた店を覗き、以前からある店にも立ち寄る。
町そのものが別物になったわけではない。
もともとあった町に、人と金が増えたことで、店の数や種類が少しずつ増えている。
そんな変化だった。
「こうして見ると、結構変わったな」
レオンが町を眺めながら言った。
「最初から店はそれなりにあったけど、今のほうが選択肢は多いな」
「娯楽まで増えるとはな」
「生活に余裕が出たんだろ」
アレンは町を眺めた。
以前なら仕事が終われば家に帰るだけだった住民も、今では店に立ち寄ったり、食事をしたり、娯楽を楽しんだりしている。
領地が豊かになるというのは、単純に税収が増えるだけではない。
住民が使える金と時間が増えれば、それだけ新しい商売も生まれる。
アレンはそんなことを考えていた。
「なあ、アレン」
「なんだ?」
「また今度来てもいいか?」
「別にいいぞ」
「じゃあ次は新しい店を探そうぜ」
「お前、自分の領地みたいに言うなよ」
「悪友の領地は俺の遊び場だろ」
「勝手なことを言うな」
二人はそんなやり取りをしながら、夕方まで町を歩き回った。
アレンにとっては何気ない一日だったが、レオンにとっては十分に楽しめる一日だった。
そして翌日、レオンはまた遊びに来るための予定を考えていた。
どうやら、アレンの領地には新しい娯楽が増えるたびに、悪友まで通ってくるようになりそうだった。




