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悪役令息に転生した俺は改心しない  作者: まゆな


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すでにやっていた

これからのことを考えたアレンは、ふと思った。


 自分はこれまで、どんな生活をしていたのだろう。


 前世の記憶を取り戻す前の自分については、今のところ断片的なことしか分からない。


 ならば、少しくらい試してみるか。


「……メイド長を呼んでくれ」


 しばらくすると、メイド長が部屋へやってきた。


「お呼びでしょうか、アレン様」


「今日の夜、メイドを一人俺の部屋に寄越してくれ」


「かしこまりました」


 あまりにもあっさりと返事をされた。


 アレンは少し拍子抜けする。


「……それだけか?」


「はい?」


「いや……何でもない」


 メイド長は一礼して部屋を出ようとする。


 そのとき、ふと振り返った。


「坊っちゃんもお好きですね」


「……何がだ?」


「いえ、いつものことですので」


「いつものこと?」


「はい。今までも何度か同じご命令をされています」


「…………」


 アレンは黙った。


 どうやら、記憶を取り戻す前の自分は、かなり自由にやっていたらしい。


「そうだったのか……」


「はい」


 メイド長は特に驚いた様子もなく答える。


 むしろ、今さら何を言っているのかという顔をしている。


 アレンは椅子に座り直した。


 自分では、前世の記憶を取り戻したことで人生が大きく変わったと思っていた。


 だが、記憶を取り戻す前の自分について調べてみると、案外変える必要のない部分もあるのかもしれない。


「……まずは、自分が今まで何をしていたのか調べるところからだな」


 アレンはそう呟いた。


その日の夕食。


 アレンは両親と三人で食卓を囲んでいた。


 いつもなら特に会話をすることもなく食事を終えるところだが、今日は聞きたいことがあった。


「父上」


「どうした?」


「領地の状況を知りたいのですが」


 父親は少し意外そうな顔をした。


「領地の状況?」


「はい。税収や人口、それから農業の状況などです」


 アレンは記憶を思い返す。


 自分は将来、この領地を継ぐことになる。


 そして未来では、領地運営の失敗によって王家から疑いを持たれていた。


 ならば、今のうちに領地について知っておいたほうがいい。


「急にどうしたの?」


 母親も不思議そうに尋ねる。


「少し気になっただけです」


 アレンが答えると、父親は少し考えてから口を開いた。


「そうだな……」


 そして、あっさりと言った。


「領地のことなら執事長に聞けばいい」


「……執事長ですか?」


「ああ。領地の管理はほとんど任せている」


「ほとんど?」


「税の徴収、農地の管理、村とのやり取り、商人との交渉、予算の管理などだな」


 アレンは箸を止めた。


「父上は?」


「私は王都での仕事や社交があるからな。領地の細かいことまで見てはいられん」


「……なるほど」


 どうやら侯爵本人が領地を直接管理しているわけではないらしい。


 アレンは少し安心した。


 少なくとも、今すぐ自分が領地運営をする必要はない。


「では、執事長に聞けば領地のことは全部分かるのですね?」


「そういうことになるな」


 父親は何でもないことのように答えた。


「明日にでも呼んでもらいます」


「分かった。執事長には伝えておこう」


 アレンは再び食事に戻った。


 前世では会社員だった。


 領地運営などできるはずがないと思っていた。


 だが、どうやら今の侯爵家には、すでに領地を管理している人間がいるらしい。


「……それなら、話は早いな」


 アレンは小さく呟いた。


 まずは現状を知る。


 それから考えればいい。


 未来を変えるにしても、何が問題なのか分からなければ始まらない。


 そして翌日、アレンは執事長から領地の現状を聞くことになる。

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