未来への方針
アレンは、自分が思い出した未来について考えていた。
領地は没落する。
婚約者には振られる。
そして最後には、領民に殺される。
前世の記憶にあった未来は、散々なものだった。
「……これが俺の未来なのか?」
アレンは自分の部屋を見回した。
今の自分は侯爵家の令息だ。
食事に困ることもない。
欲しいものがあれば、父親に頼めば大抵のものは手に入る。
そんな恵まれた立場にいるのに、未来では領地が没落し、婚約者にも見放され、最後には領民に殺される。
どう考えても納得できない。
「どうしたらいいんだ?」
アレンは椅子に座り、これからのことを考え始めた。
未来を変える。
そう言っても、何をすればいいのか分からない。
領地を発展させる方法だって、具体的に知っているわけではない。
前世の知識があるとはいえ、自分は政治家でも商人でも農家でもない。
いきなり領地経営を始めても、うまくいくとは思えなかった。
それなら、まず確実にできることから考えればいい。
アレンは未来の最後を思い出す。
領民に殺される。
「……領民に殺されるなら」
そこでアレンは少し考えた。
「俺自身が強ければ、とりあえず殺されることはないな」
単純な結論だった。
未来を全部変えられるかは分からない。
領地が没落するのを防げるかも分からない。
婚約者との関係をどうすればいいのかも、まだ分からない。
だが、自分自身を鍛えることならできる。
もし未来が変えられず、領地が本当に没落してしまったとしても、自分が強ければ逃げることくらいはできるだろう。
「よし。まずは鍛えるか」
死なないためだ。
そう考えると、少しだけ気が楽になった。
だが、考えているうちに別のことにも気づく。
せっかく侯爵令息に生まれ変わったのだ。
前世ではできなかったことも、今ならできる。
美味しい食事。
広い屋敷。
上等な服。
欲しいものを買うことだってできる。
「……そういえば、俺は侯爵令息なんだよな」
アレンは自分の立場を改めて考えた。
未来がどうなるかなんて、まだ分からない。
だったら今のうちに、この立場を楽しまない理由もない。
「侯爵令息に転生したんだから、贅沢を味わわせてもらうぞ」
まずは自分が楽しむ。
そして、死なないために鍛える。
領地のことは、その後に考えればいい。
アレンはそう決めた。
未来を変えるための最初の一歩は、意外にも単純なものだった。




