武闘大会
ある日、アレンは騎士団の訓練を眺めながら、ふと思った。
「もっと強い人間はいないのか?」
現在の騎士団には、以前より多くの人員がいる。
武器も新しくした。
訓練も以前より充実している。
それでも、アレンには一つ気になることがあった。
自分の身を守る人間は、強ければ強いほどいい。
「騎士団長」
「はい」
「領地で武闘大会を開こう」
騎士団長は少し驚いた。
「武闘大会ですか?」
「うん。領内から強い人間を集めて戦わせる」
「何か目的がおありで?」
「もちろん」
アレンは当然のように答えた。
「僕を守れる人間が欲しい」
騎士団長は一瞬黙った。
「……なるほど」
「騎士団だけじゃなくて、領民の中にも強い人間がいるかもしれないだろ?」
「確かに、その可能性はあります」
「だったら探せばいい」
アレンにとっては単純な話だった。
領内にどれだけ強い人間がいるのか、アレンは知らない。
ならば大会を開いて、一度に見つけてしまえばいい。
優勝者だけでなく、上位の人間も確認する。
実力があるなら、騎士団に誘ってもいい。
「優勝者には賞金を出そう。それから、騎士団への登用も考える」
「それは良い案かと」
こうして、領内に武闘大会の開催が告知された。
すると、予想以上の反響があった。
特に平民の間で話題になった。
「武闘大会だって?」
「優勝すれば賞金がもらえるらしいぞ」
「それだけじゃない。騎士団に雇ってもらえるかもしれないって話だ」
「本当か?」
これまで、平民が騎士として取り立てられる機会は少なかった。
どれだけ腕に覚えがあっても、身分が低ければその実力を見てもらう機会すらない。
だが、今回は違う。
領主自らが、
身分に関係なく、強い人間を探している。
それだけで、多くの者が参加を決めた。
町の鍛冶職人の息子。
農村で働く青年。
商人の護衛をしている男。
狩人として暮らしている者。
中には、普段は力仕事をしているだけの者までいた。
大会当日。
会場には多くの領民が集まった。
観客席から歓声が飛び交う。
「始まったぞ!」
「頑張れ!」
次々と試合が行われていく。
アレンは貴賓席から試合を眺めていた。
「……思ったよりいるな」
騎士団長も頷く。
「はい。これほどの人数が集まるとは思っておりませんでした」
「強い奴はいる?」
「何人か、騎士団でも十分通用しそうな者がいます」
アレンは満足そうに頷いた。
「じゃあ、終わったら声をかけておいて」
「承知しました」
試合が進むにつれ、会場の熱気はさらに高まっていく。
そして決勝戦。
農村出身の青年と、町で護衛をしている男が向かい合った。
両者ともに一歩も引かない。
最後は青年が僅かな隙を突いて勝利した。
会場から大歓声が上がる。
青年は信じられないような顔で立っていた。
「俺が……勝った?」
騎士団長が青年のもとへ歩み寄る。
「君、騎士団に入る気はあるか?」
青年は目を見開いた。
「俺が……騎士団に?」
「実力は十分だ。もちろん、正式な採用試験は受けてもらうがな」
青年は何度も頷いた。
その様子を見ていたアレンは満足していた。
「強い人間も見つかったし、やってよかったな」
アレンが大会を開いた理由は、ただ一つ。
自分を守る人材を探すためだった。
だが、平民たちにとって、この大会はそれだけではなかった。
身分に関係なく実力を見てもらえる。
努力すれば、騎士団に入れる可能性がある。
これまで埋もれていた才能を発揮する機会が生まれたのだ。
大会終了後も、
「次は俺が出る!」
「もっと鍛えておけばよかった!」
「来年も開催されるのか?」
そんな声が町のあちこちで聞かれるようになった。
アレンはその噂を聞きながら、満足そうに頷いた。
「来年もやるか」
強い人間を探す機会は、多いほうがいい。
何より、自分を守れる人材が増えるのは大歓迎だった。
しかし領民たちは、別の意味で喜んでいた。
この領地では、身分が低くても、実力さえあれば人生を変えるチャンスがある。
そんな評判が、少しずつ領内へ広がっていった。




