メイド服
アレンは、以前から屋敷のメイド服に少し不満を感じていた。
きっかけは、アリスだった。
アリスは現在、騎士団の訓練にも参加している。
護衛として働いてもらう以上、当然のことだった。
ある日、アレンは訓練場でアリスの動きを見ていた。
「……なんか、動きが悪いな」
剣を振る。
走る。
方向を変える。
そのたびに、アリスの長いスカートが足にまとわりついていた。
アレンはしばらく観察したあと、原因に気づいた。
「服か」
アリスが着ているのは屋敷のメイド服。
仕事をするには問題ない服だが、騎士団の訓練をするには明らかに向いていない。
「アリス」
「はい」
「その服、動きにくくない?」
「少しだけ……動きにくいです」
やはりそうだった。
「メイド長を呼んで」
しばらくすると、メイド長がやってきた。
「お呼びでしょうか、アレン様」
「メイド服のデザインを一新しようと思う」
「……メイド服を、ですか?」
「うん。今の服は動きにくい」
アレンはアリスを指差した。
「騎士団の訓練を見ただろ? 長いスカートが足の動きを邪魔している」
「確かに……」
メイド長もアリスの動きを確認する。
「ですが、どのように変更されるおつもりでしょうか?」
「スカートを短くする」
「どの程度でしょう?」
「膝上二十センチくらい」
メイド長は少し驚いた。
「かなり短くなりますね」
「動きやすければいい。メイドは屋敷の中を歩き回る仕事だし、アリスみたいに護衛を兼ねるなら、動きやすさは重要だろ」
「承知しました」
こうして、屋敷のメイド服は大幅にデザインを変更することになった。
完成した新しいメイド服を着たアリスが、訓練場で動いてみる。
走る。
止まる。
方向を変える。
剣を振る。
今までとは明らかに違った。
「おお」
アレンは満足そうに頷いた。
「やっぱり動きやすくなったな」
アリスも自分の足元を確認する。
「かなり動きやすいです」
「これなら訓練にも支障はなさそうだ」
アレンは満足した。
しかし、屋敷では別の問題が発生していた。
「かわいいと思います」
「私は少し、はしたないと思います」
「動きやすさを考えれば仕方ないでしょう」
「でも、今までのほうがメイドらしいのでは?」
メイドたちの意見は、真っ二つに割れていた。
かわいいという意見と、短すぎるという意見。
アレンはその話を聞いて首を傾げる。
「動きやすくなったんだから、それでいいだろ」
「アレン様はそうお考えなのですね……」
メイドたちは複雑そうな顔をしていた。
そんなある日、屋敷を訪れたマリンが新しいメイド服を見た。
そして、アリスの姿を見た瞬間、明らかに表情を曇らせた。
「……アレン様」
「ん?」
「メイドに、あのような服を着せているのですか?」
「うん。動きやすいから」
「膝を見せるなんて……」
マリンの視線が冷たくなる。
アレンには、その反応の意味が分からなかった。
「でも、前より動きやすくなったよ?」
「そういう問題ではありません」
マリンの評価は、また一段下がった。
アレンはその様子を見ながら、首を傾げる。
「……なんでだ?」
機能性を考えて服を変えただけなのに。
アレンには、どうしてマリンが以前より自分を軽蔑しているのか、さっぱり分からなかった。




