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騎士団への新しい武器

アレンは、たまに町へ出て買い物をしていた。


服を買い、家具を買い、食べたいものを買う。


自分では十分に贅沢な暮らしをしているつもりだった。


しかし、執事長から見ると少し違っていた。


「坊ちゃま、最近のお買い物についてですが……」


「何か問題でもあるの?」


「もう少し、お金をお使いになられてはいかがでしょうか」


「……え?」


アレンは首を傾げた。


自分ではかなり使っているつもりだ。


だが、前世の庶民的な金銭感覚が残っているせいか、以前の自分と比べると個人的な支出はかなり減っていた。


特に大きく減っていたのが、宝石や貴金属だった。


以前のアレンなら、見栄のためだけに高価な宝石を買うことも珍しくなかったらしい。


だが、今のアレンにはそこまでの価値を感じられなかった。


「僕としては、十分使っていると思うんだけどな」


「侯爵家の跡取りとして考えれば、以前の三分の一ほどしか個人的にお使いになっておりません」


「三分の一……」


数字にされると、確かに少ない。


アレンは考え込んだ。


せっかく金があるのだから、使う場所は選んだほうがいい。


自分の生活をさらに豪華にするのも悪くない。


しかし、すでに生活に必要なものは揃っている。


「……何に使おうかな」


そう考えながら屋敷を歩いていると、騎士団の訓練場が目に入った。


騎士たちは今日も訓練を続けている。


アレンはしばらくその様子を眺めていた。


そして、ふと気づく。


「……あれで僕を守れるのか?」


騎士たちが使っている武器は、何度も修繕されたものだった。


もちろん粗末というほどではない。


だが、新品の武器と比べれば明らかに劣る。


アレンは騎士団長を呼んだ。


「騎士団長」


「はっ!」


「騎士たちの武器って、あれで問題ないの?」


騎士団長は少し困ったような顔をした。


「使えないわけではありません。定期的に修繕しておりますので、通常の任務には問題ありません」


「新品にはできないの?」


「騎士団全員分となりますと、かなりの費用になります」


「そうなんだ」


アレンはもう一度、訓練している騎士たちを見る。


自分を守るための人間が、古い武器を使っている。


それは少し不安だった。


「新しい武器を用意しよう」


「よろしいのですか?」


「僕を守ってもらうんだから、ちゃんとした武器を使ってもらわないと困るだろ」


「……ありがとうございます!」


騎士団長が深々と頭を下げた。


アレンは続ける。


「騎士団全員分、新しい武器を用意して。今使っている武器も予備として使えるだろうし」


「承知しました!」


その話は、すぐに騎士たちへ伝えられた。


「アレン様が我々に新しい武器を用意してくださるそうだ!」


「本当か!?」


「これほどありがたいことはない!」


訓練場に歓声が上がる。


騎士たちは新しい武器を手にすると、何度も状態を確認していた。


「この武器に恥じない働きをしなければ」


「アレン様の期待に応えよう」


「これまで以上に訓練に励むぞ!」


アレンはその様子を少し離れた場所から眺めていた。


「……なんか、忠誠心が上がったような気がするな」


騎士団長が笑う。


「当然でしょう。自分たちを大切にしてくださる主君に、忠義を尽くしたいと思うのは当然のことです」


「そういうものなのか?」


「はい」


アレンは少し考えた。


「まあ、僕を守るためなんだから、ちゃんとした武器を使ってもらうのは当然だろ」


アレンとしては、自分の身を守るために必要な出費をしただけだった。


だが、騎士たちから見れば違う。


自分たちのために惜しみなく金を使ってくれる主君。


その評価は、確実に高まっていた。


アレンはそんなことには気づかず、満足そうに訓練場を後にした。


「これなら、少しは安心できそうだな」


そして、自分が使わずに残していた金の使い道としては、なかなか悪くないと思っていた。

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