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〈5〉泉堂海斗

ミカリは七尾さやかの恋を成就させればいい。その為に、あとは泉堂海斗がさやかを幸せに出来る男かどうか見極めればいいと安易に思っていた。そして、ミカリは人間からキューピッドに戻り、人間には見えない存在となって泉堂海斗にとりついて、泉堂海斗がどんな男が見届けてから金の矢を撃てばいいとミカリはそう思っていた。

〈これで、僕も無事に、初うちをすることが出来そうだ〉

ミカリは気分的にプレッシャーから解放され、少し安堵したせいか、徐々に余裕が出てくるのがわかった。


泉堂海斗は、大手広告代理店に勤めているも出世することを望んではいなかった。なぜなら、泉堂家は祖父の代から政治家として活躍していて、海斗の父も政治家であり、海斗もゆくゆくは父の地盤を受け継ぎ政治家になるのが運命のようなものだった。だから、海斗にとって広告代理店での勤務は単なる腰掛けに過ぎなかった。そのことは周知のことで、海斗の友人や会社の同僚は、海斗のことを政界のプリンスとか次期総理と囃したてていた。確かにそういわれるのもまんざらではない。それは家柄だけでなく、海斗はハンサムで女子にも人気があった。泉堂家期待のイケメンプリンス。それは海斗自身も自負していた。

〈今までもそうだったように、俺は何処にいっても自分の思い通りになる。そして、俺は将来、必ず日本の頂点に立つ〉

しかし、そんな海斗にも、一つだけ思うようにいかないことがあった。それは西村冴子のことだった。最近付き合い始めたのだが、どうも冴子が素っ気なさ過ぎて、時々付き合っているのかどうかわからなくなる時があるのだ。それは海斗にとって初めてのことで、今までは付き合った女の子は、皆、女の子の方から海斗に夢中になっていたのだが、冴子だけは違っていた。なら、いっそ冴子と別れてしまえばいいのかもしれないが、夢中になったのは海斗の方で、惚れた弱みというか、そんな冴子の素っ気ない振る舞いに、今度ばかりは強気に出ることが出来なかった。海斗は自分が冴子に強く惚れているから、冴子に振り回される、冴子の都合に合わせる、冴子に主導権を握られている、ということに強い苛立ちを感じていた。しかし、それはどうすることも出来ず、海斗は心の中に鬱積したものを抱きながらも、次の冴子とのデートの日を楽しみにしていた。



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