〈4〉覆面調査
人間にはキューピッドの姿は見えない。だから、キューピッドは自分がついた人間に関して、ある程度のことは見て判断することが出来る。しかし、その人の心、本心まで見ることは出来ない。人の心、本心が知りたければキューピッドが人間になりすまして、人間に近づいて聞き出すしかない。覆面調査とは、まさにそれである。これはキューピッドの能力の一つで、調べたい人や、その人の周りにいる人たちと、自然に、何の違和感もなく知りあいや友人になりすまして、その人のことを調べることが出来る能力のことをいう。
ミカリは、さやかに見える闇を探るために、キューピッドから人間になりすまして、さやかに覆面調査をすることにした。そして、まず手始めとして、ミカリはさやかの友人である北村瑤子のメル友になりすまし、メールで瑤子とやり取りをした。
[こないだはどうも。合コン楽しかったね。また宜しく頼む。あと話しが変わるんだけど、本当のとこ、さやかちゃんって彼氏いないの?こないだは、いないっていっていたけど、ほんとかなぁ~と思って。そこんとこど~なの?]
[え、ナニ、もしかしてミカリ、さやかのことが好きなの?ほんとのとこ知りたい?]
[いや、僕じゃなくて、あそこにいた友達がさ、さやかちゃんのことが気になったみたいでさ、聞いてくれないかって言われちゃったもんで。で、どうなの?]
[友達って誰?もしかして成岡クン?成岡クンなら私、立候補します。なぁ~んてネ]
[おい、ちゃんと答えろよ]
[お!そんな強気に出るワケ・・・]
[ごめんなさい、瑤子さま。ほんとのところを、ぜひお願いします]
[まぁ、しょうがないな。ほんとのとこ、さやかには彼氏いないヨ。でも、さやかを好きになってもムダだヨ。こないだは、さやかは人数あわせで付き合ってくれただけだし、さやかにはずっと想っている人がいるから、その恋は実らないヨって、友達サンに教えて、優しく慰めてあげなさい]
[え、そんなにダメ?さやかちゃんがずっと想っている人って誰?俺の知ってる人?]
[お、聞くねぇ~兄さん。聞きたがりやだネ。怪しいなぁ~、友達だなんて言っちゃって、本当はミカリが好きなんじゃないの?どう、図星でしょ]
[まぁ、いいじゃん。さやかちゃんの想い人が誰かわかれば諦めもつくからさ。頼む]
[しょうがないな。冥途のみあげに教えてあげるか。泉堂海斗っていう会社員だヨ。ミカリは知らないでしょ?]
ミカリは、七尾さやかの想い人、泉堂海斗の名を聞き出した。そして思った。
〈よし、次は泉堂海斗という男を見届ければいい。そして、泉堂海斗が七尾さやかを幸せに出来る男ならその男に金の矢を放ち、七尾さやかに恋するように仕向ければいい。なんか簡単だな。じゃぁ、僕のみた闇というのは一体なんだったんだろう?初うちからくるプレッシャーが僕を不安にし、ネガティブになって、勝手に七尾さやかに闇があるとでも思いこんでしまったのか?只の取り越し苦労だったのか?・・・〉
ミカリは空を見上げてそっと呟いた。
「臆病だな、僕は・・・。こんなんじゃぁ、先が思いやられるな」
ミカリは苦笑いを浮かべた。




