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〈3〉七尾さやか

七尾さやか。

ミカリが、初うちの相手に選んだ人間だ。

さやかは、テレサ女学院看護学科に通う女子大生で、さやかの見た目は、とても愛らしく、優しい笑顔が顔いっぱいに表れ、いつもほんわかした雰囲気を醸し出している穏やかな女性である。それはキューピッドの矢などなくとも幸せな人生が待っているであろうと容易に想像できる。だから、見る目をなくしたキューピッドなら迷うことなく、なんの不安もなさそうな、未来に幸せしか見えないさやかに安心して金の矢を射るだろう。しかし、ミカリは違っていた。ミカリがさやかに目をつけたのは、さやかの未来に明るい未来を見たのではなく、黒い闇が見えたからだ。さやかの明るくほんわかした雰囲気とは裏腹に、とても似つかわしくない黒い闇。そのギャップがさやかの存在を際立たせ、ミカリの目にとまり、気になったのだ。

ミカリは思った。

〈なぜ、こんな愛らしく優しい人に、闇が見える?なぜ、この人に矢が必要だと僕は思ったんだろう〉

底知れぬ可能性を秘めているミカリであっても、そこは、まだ、初うちも済ませてない、なんの経験もない新人キューピッド。闇の正体など到底知ることではなかった。それがミカリを悩ませていた。それでもミカリは、さやかに見える闇の正体を暴きたかった。そして、暴いて取り除きたかった。それこそが自分が初めて人に矢を射るとき、初うちのときと思っていた。

ミカリは思った。

〈ロビアン先生は、自分が納得するまでやってもいいと言ってくれた。時間なんて気にするなとも言ってくれた。初うちでここまでやる必要はないのかも知れない。けど、どうしてもあの人に見える闇の正体が知りたい。何が僕を迷わせるのか、それが知りたい。それには覆面調査しかない。初うちで覆面調査だなんて、やり過ぎかもしれないけど、いつかはやるときが来る。なら、初うち前の今やってもいいだろう。そうしよう。それで納得して矢を射ることが出来るのならそれに越したことはない〉

ミカリは、覆面調査をすることに決めた。



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