〈31〉矢が止まる
もう、誰もミカリを止めることは出来ない。
それは一体何を意味するのか?その答えは形として現れた。キューピッドたちの矢が止まったのだ。キューピッドたちはミカリを恐れ、矢を撃つことが出来なくなってしまったのだ。自分たちが恋を結びつけたとしても、ジャックマンことミカリに破壊されては、一体何の意味があろうか?いや、意味がないどころの騒ぎではない。それはキューピッドの存在意義が否定され、キューピッドにとってはその精神的ダメージは計り知れないものになる。その為、キューピッドたちは弓が引けなくなり、矢を撃たなくなってしまったのだ。
もう、そこには現実派もロマン派もない。ただミカリを恐れ、矢を撃つことが出来なくなったキューピッドたちがいるだけだった。キュートピアはまさにパニックに陥っていた。グラシアーノが敗れ、そして、ミカリの師であるロビアンでさえ、命をかけてもミカリを昇天させることが出来なかった。現実派もロマン派も今はなく、ただ手も足も出ないキュートピアだけが存在していた。まさにキュートピアの存亡が冒されていたそのとき、五大老がみなの前に現れた。そして五大老のリーダー格のガブリエが言った。
「我々にもミカリを昇天させることは出来ないだろう。それほどミカリの力は増大している。しかし、ミカリを昇天させることが出来なくても、この老いぼれたちの命と引き替えに、ミカリから全ての特殊能力を奪うことは出来る。我々は決意した。我ら五大老の命と引き替えにミカリを無力化する」
すると、どこからともなく一人のキューピッドが言った。
「では、五大老なきあと、我々は一体どうすればいいのですか?」
五大老の一人、グレゴリオが答えた。
「例え、我らが死すとも、必要とあらば、また他のものがこのキュートピアを引っ張っていくだろう。そうやって天界も人間界も前に進んで行くものだ」
五大老の一人、ラフェドがそれに続いて言った。
「我々の罪は、このキュートピアを現実派とロマン派に二分したことを許したこと。それが今日の争いの火種となり、結果的にミカリを生み出す羽目となった。この責任はとらなければいけない」
そして、五大老の一人、サリエリが穏やかな表情でキュートピアのキューピッドたちに向かって言った。
「みなのもの。現実派もロマン派もない、新たに生まれ変わったキュートピアを作ってくれ」
五大老は、そう言い残すと一人ずつ神殿の中へと入っていた。それは自分たちの命と引き替えに、ミカリに審判を下すために。




