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〈27〉対決の気運

マクシミリアンたちの思惑通り、ジャックマンことミカリが、次の標的にサンタローザが先導師就任記念に結びつけた夫婦の破壊を狙っていることが伝わった。そして、サンタローザの耳にもそれは入った。そして、モーザックは怒りを露わにしていた。

「先導師が結びつけた夫婦を狙ってくるなど。ロマン派の奴らめ。調子に乗りやがって!」

サンタローザは、モーザックとは対照的ににこやかな表情をしながら言った。

「よいではないか」

「しかし」

「こちらとしては好都合だ。ジャックマンを探す手間がはぶけたのだからな」

そういってサンタローザは笑った。しかし、モーザックは笑えなかった。モーザックはいっそう警戒していたのだ。モーザックはうすうす感づいていた。この情報は、ロマン派による現実派への挑発だということを。ロマン派が現実派にさらなる仕掛けを用意したということをモーザックは察していたのだ。そして、モーザックは、笑っているサンタローザに釘を刺すかのように言った。

「しかし、相手は得体の知れない能力の持ち主です」

「モーザック。グラシアーノが負けるとでもいいたいのか?」

「いえ、そうは思いませんが」

「そちは、はじめから、ミカリとやらの能力を高くかっていたな」

「いえ、そのようなことは。ただ、万が一のことを考えて」

サンタローザは笑った。

「案ずることはない。グラシアーノには、まず、私が結びつけた夫婦が、どんなことがあっても決して離れることがないようにしろといってある。それで私のメンツが潰れることはない。そして、その後、ミカリを始末しろ、とな。それで全て終わりだ」

そういうとサンタローザはまた笑った。


グラシアーノは、キュートピアにある自分の住まいで鏃を選んでいた。それはまるで狩猟に行く前の準備でもするかのように、鏃を見ては不敵な笑みを浮かべていた。そして、グラシアーノが手にした鏃は、鏃の中でどす黒く、不気味な炎をあげていた。それはまるで生きているようで、鏃の中から不気味な炎が飛び出したがっているように見えた。グラシアーノはその鏃を見て、獲物をどうしとめるか想像していた。

「この矢をお前にぶち込んでやる!そして、もがき苦しむ姿を、じっくり、拝んでやる」

グラシアーノはニヤリと笑った。

グラシアーノはキューピッドが使う普通の金の矢、鉛の矢は使わず、自分で改造した特殊な鏃を使うのだった。

グラシアーノは手にした鏃を置いて、違う鏃を手に取った。その鏃は金の鏃がついた矢ではあるが、鏃がまるでドリルのように螺旋を描いていた。その鏃を眺めながらグラシアーノは呟いた。

「その前に、まずはこの矢を女にぶち込むか。そうすれば、夫が浮気しようが何をしようが、全てを許し、呪い狂ったように一生愛し続ける。誰も阻むことは出来ない。例えジャックマンでさえ、打ち破ることは出来ない呪いの矢だ。それにしてもあんなひよっ子に手を焼いているとは、先導師もヤキがまわったものだな」

グラシアーノは鼻で笑った。鏃は生きているかの如く、螺旋を描き続けていた。


マクシミリアンは人間になりすまして、ジャックマンことミカリとあっていた。そして、次の標的を告げた。「サンタローザが結びつけた夫婦を破壊しろ」と。しかし、ミカリは乗り気ではなかった。そんなミカリを見てマクシミリアンが言った。

「どうしたジャックマン。何を躊躇う?相手はキュートピアの先導師にして、現実派指導者のサンタローザだ!お前がもっとも破壊しなければならない相手だ。それが奴らに大打撃を与えることになる」

そういわれてもミカリは、どこか実が入らなかった。ミカリは伏し目がちのままだった。

「どうしたジャックマン?迷っているのか?」

ミカリは何も答えなかった。虚しさだけがミカリの心を占めていたのだ。そんなミカリに焦れたようにマクシミリアンが煽るように言った。

「何の為にキュートピアを捨てたんだ?何のために堕天したんだ?現実派に思い知らせる為だろ。お前の素質を証明する為だろ」

マクシミリアンはしきりにミカリを発奮させようとするが、ミカリは伏し目がちのままだった。マクシミリアンは、思わず、「ミカリ!」と叫びながらミカリの頬を叩いた。そして言った。

「第二第三のお前や、七尾さやかを作らない為にお前は堕天したんだ!七尾さやかを救うためにお前は堕天したんだ!ミカリ!自分の成すべき事をなせ!」

ミカリは顔を上げて、マクシミリアンを見た。そして躊躇い、また、少し考えてから、考えていたことをマクシミリアンにぶつけた。

「もし、サンタローザ先導師の結びつけた夫婦を破壊したら、そこに僕の求める答えはあるのでしょうか?」

「お前の答え?」

マクシミリアンはミカリの意図することがつかめなかった。しかし、それでもミカリを行動させなければいけないという思いにかられていた。そして、マクシミリアンは言った。

「あるさ。お前の欲している答えが。時期に分かるようになる。現実派が結びつけた恋がいかに実のないものか」

それはミカリが求めている答えではなかった。ミカリの探している答えは、人間にとってキューピッドの矢とはいったい何なのか?それはキューピッドの存在意義にもつながる。そして、人間の愛とは一体なんなのか?ミカリはそれが知りたかったのだ。マクシミリアンがいうようなものを探しているわけではなかった。しかし、ミカリはマクシミリアンに返事をした。

「わかりました。おっしゃる通りにします」

「それでいい。それでいいんだ」

マクシミリアンは安堵した。そして、ミカリに忠告をした。

「必ずグラシアーノが現れるはずだ。お前を陥れたやつだ。グラシアーノには気をつけろ」

ミカリは静かにそれを聞いた。



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