〈25〉ミカリの虚しさ
ミカリは、新宿駅を出て、新宿通りを歩いていた。ミカリはマクシミリアンに言われた通り、現実派が結びつけたカップルを見つけては、次から次へと矢の効力を破壊し、カップルを破綻に追い込んでいった。そして、思惑通り破綻していくカップルの姿を見れば見るほどだんだん虚しさを感じ始めていた。
〈愛とは、こんなにも脆いものなのか?いくらキューピッドの矢で結びつけられた恋だからといって、こんなにいとも容易く壊れてしまうものなのか?キューピッドの矢は単なる恋のきっかけに過ぎないのではないのか?その後、愛は育まれないものなのか?では、人間の愛とは一体なんなんだ?キューピッドの矢というのは一体なんだったんだ?〉
ミカリは自分に問うた。しかし、納得するような答えは見つからなかった。ミカリの心は只々、虚無感に覆われるばかりだった。そして、ミカリは呟いた。
「こんな姿を見たら、ロビアン先生は一体なんていうだろう・・・」
すると、ミカリの目の前に現実派のキューピッドが結びつけた若いカップルが現れる。年の頃は七尾さやかと同じぐらいだ。とても幸せそうに町の中を歩いている。ミカリは女を見て、さやかのことを思った。
〈彼女は今頃どうしているだろうか?幸せでいるだろうか?僕が目をつけなければ、干渉さえしなければ、彼女は幸せだったんじゃないだろうか?いや、そもそも全て幸せな人生なんてものはないのではないか?僕は完璧な幸せを彼女に追い求めていたのか?〉
ミカリは、そう思いながら、反対の歩道に歩いている現実派が結びつけた若いカップルを見ていた。しかし、ミカリは破壊することもせず、そのままやり過ごした。そして、ミカリは呟いた。
「幸せそうだな」
ミカリは、そのまま、雑踏の中に消えていった。




